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研磨「明日から合宿だねー…」
黒尾「そんなに合宿が楽しみか?」
研磨「まあ、それなりにはね」
黒尾「珍しいな、どうかしたのか?」
研磨「べつに…」
翔陽に会えるから、なんてことは言わない。口が裂けても言えない、おれの秘密。
生物学的性は男。性表現・性自認も男。だけど、性的志向は男。つまり、同性愛者。
クロにもそのことは話してない。クロは絶対おれを馬鹿にする。「同性愛者だったのか」って言いながら、おれから離れていく。現におれが同性愛者だってカミングアウトして、よかったなって思った経験がない。
カミングアウトしたとき、何かの拍子で同性愛者だってことがバレてしまったとき、向けられるのは、
『自分とは違うっていう線引きをする、真っ直ぐに嫌悪を向ける目』
『男のくせに気持ち悪い。…明日から話しかけてこないでくんね?誰にもバラさないから』
『頭ではわかってるんだけど心がついていかないのよねぇ…やっぱり気持ち悪いなって思っちゃう生徒の気持ちに寄り添うのが教師の務めだけど…こればっかしは無理w』
クロ以外に仲良くなった同級生も、信頼していた教師も、その気持ちを、おれを踏み躙っていく。みんな、ひいた目をしてる。
みんな、わかってはいるんだ。わかってはいる。だから、LGBTQっていう言葉と、レインボーフラッグがある。でも、世の中の大半の人がLGBTQを心の中で嫌悪している。その隠した気持ちは隠しているように見えて隠せていない。ふとした瞬間に、しっかり目に現れる。
だからおれは『あの目』が怖い。
同性愛者。その四文字は『根性』よりも世間に煙たがられる。異性か同性か、違いはあまりないはずなのに、ただ同性が好きだからっていう理由で、みんなおれを馬鹿にする。
同性愛者を認めるレインボーフラッグでさえ、おれたちを『私たちとは違う』と無言で言っている気がして、あんまり好きじゃなかった。
“落ちた強豪・飛べない烏”そんな異名を背負って練習試合に来たのは宮城県にある烏野高校排球部だった。監督同士が仲良くて、前は練習試合が活発だったらしいけど、最近は練習試合をしていない。両方の監督が一時期監督を引退したからだった。それから、烏野も音駒も衰えていった。
猫又監督が復帰してから音駒は強さを取り戻した。しかし、烏養監督が復帰したという噂も聞かない。県が違うから仕方ないかもしれないけど。
今の烏野はあまり目立った成績を収めていないかった。インターハイ予選では青葉城西にフルセット負け。インターハイ予選でも特に注目はされなかった、“落ちた強豪”。
でも今の烏野はおれが思っている以上に面白くて強かった。翔陽とセッターの変幻自在な超速攻を軸にした攻撃。超攻撃型チーム。守りを徹底するおれたちとは明らかに戦い方が違う。だからこそ、翔陽たち、烏野と戦うのは面白かった。
その中で、一番よく飛ぶ、楽しそうに。そんな選手に、おれは恋をした。
好きだよ、翔陽。