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進学先のアレでひと悶着あったあと、私は保健室に連れてかれた。勝己から攻撃を受け続けた左腕は今じゃ包帯でぐるぐる巻きだ。
—んな大袈裟な…。
だって実際こんなの慣れっ子だし。身体中もっと酷い傷が無数にあるってのに。
そう思いながら腕を巻かれていた時間はもうなんて無駄な時間だったか!! 保健室の先生の適当な慰めと担任の無責任な軽い謝罪が付いてくるんだから救えない…。 それも内容が内容なんだぜ??
「貴方も大変ねぇ?」
「止めてやれずごめんな? でもさぁ…分かってたならあえて敵に回るような事する必要ないんじゃあないの??」
「媒架は…。アレだ。もうちょっと考えて賢く生きなさい!!」だと。
—…テメェらとんだクソだぜ!! ははは!!
大変って一言で終わらせてもらっちゃ困るね。あぁ、そうだよ!! 大変だよ!! 大変なんだよ!! モブ共や爆豪の脳に巣を括り続けるのはね!!!
…先生はもうだめだぁ!! 救えねぇー!!
その後に病院の受診を勧められたけど断った。
え? 理由? そんなのないね、面倒くさいから?
「おい例! ほんとに大丈夫か? 腕、無理すんなよ!!」
「はいはーい、ありがとねー!!」
「例ちゃんの腕に傷がァァァ!! あんっの爆豪くんめ!!」
「早く治してね、お大事に!!」
「あはは笑 ありがと!」
やっと(つまらん)学校が終わり、続々と生徒が”私に声をかけてから”教室から出ていく。それを見て私は頬を緩ませる。
ねぇねぇ聞いてよ!! 私!! 嬉しいんだよ!! だって!!
私の席は決してドアの近い廊下側じゃないのに!! わざわざ私の近くまで来て、一言言ってから帰っていくモブちゃん共!!
—そんなの見せられちゃうとさァ……。私、ちゃんとこのクラスの奥深くまで根を張れてるだねェ…!! ってさ、嬉しくなっちゃう、ねェ♡
…でもさぁ? 所詮モブはモブなの。 悪くはないんだけど、美味しくはない。そうだな、スパイスがさ。足りないよね? 分かってくれるよね??
「ふぃーーー…」
っと固まった身体を伸ばして一息つく。
さ、これから何すっかな。
個性伸ばしに行くのもいいけど、伸ばしたところで使い道ねーし。勉強も間に合ってんだよな。
良い子の中学生の皆はさっさと家に帰ってお勉強しましょうね! 受験生なら尚更! とか思うだろうけど…。まあ私は悪い子ちゃんなので!! …まあ実際、家帰ってもろくな扱いされねーし、かと言って放課後クラスメイトと一緒に時間潰すのもめんどくせーんだよな。
…あー噂をすれば何とやらだな。のこのここっち来やがった……。
「ねーねー例ちゃん!! その…もし、さ? 怪我!! もう平気なら、一緒にカラオケ行かない??」
お前らさぁ……。今までに何回も誘い断ってるんだからそろそろ誘わないとかいう選択肢ない訳?? 随分と頭がお固いのね。
ああ、それとも私と遊んだっていう事実が欲しいんじゃんね?? たはー、人気者は困ったもんだね。大変大変。
行く気? 毛頭ないね!!
とはいえ、断るにしてもそれっぽい言い訳が欲しい。…この前歯医者は使っちゃったしなぁ。
行く気がありそうだけど、ちゃんと行けないっていう根拠のある言い訳……
なんかないかな……
んお、あーーーそういえば。腕!! あっはは、ちょうどいいのがあんじゃーん??
「うーん、ごめんね?? 今日さ、この後怪我を病院で見てもらうんだ、案外深く焼けちゃったみたいで笑」
はい嘘、嘘嘘!! 10割嘘!! だけど…流石に病院行くのを止めるほどの馬鹿はいないようだ。よかったよかった! お姉さん、ちょっとあんたらの知能レベル心配しちゃった!!
「あ゛?! おいテメェ…… アレがそんなに深い傷な訳ねェだろ!! 大体テメェガキんときn……」
遠くから聞き耳を立ててたのか、勝己がこっちに向かって吠えた。
おぉん? 言葉の続きは「ガキんときにもっと凄えの喰らって平気な顔してただろ!!」だろうなぁ……。内申がかかってるんだから、流石に言えないかぁ♡
あぁでも!! ちゃあんと覚えてるんだ…?♡ 私に負わせた傷のこと!! 覚えてるんだぁ!!♡
私も覚えてるよ勝己!!♡♡ 記憶と共に傷も残ってるよ!!!♡♡♡
ねぇ嬉しい!!♡ とっっっても嬉しいよ!!♡♡ それでいてとっっても美味しいよ!!♡♡♡ 勝己!!!♡♡♡♡♡ これからもずっと、ずーーーっと!! アンタの脳裏に巣を括り続けるからね!!!♡♡♡♡♡
…ってなにこっち見てんだよアイツ。ズカズカこっち来たし。さっさとお家に帰ってせっせとおべんきょでもしてろ!! なんたって雄英高校ヒーロー科志望様なんだろーが。落ちたら精々嘲笑ってやるよ!!
「おい」
「なぁに? かっちゃん」
ぽん、と肩に手をおいてさっきの威勢がなかったかのようなぼそぼそした声で喋りかけられる。
「テメェちょっと残れや。」
「…なに、告白? やめてほしいなぁ、なんたって普通科でも一応、華の雄英高校志望者だからね!! 恋愛に割いてる時間なんてないのよ!!」
なんて、両手をひらひらさせながら言う。
あぁ?!! 俺ァそんなこと言ってねぇぞ!! …なんて怒号を背に、モブキャラちゃん達を相手にする。
「…ってことだから、またね?」
「…あ、うん! また今度行こうね!!」
「うん」
行かねぇよ馬鹿。
「…で、何よ。」
振り返って勝己に問う。
どうせろくでもないんだろうな、なんて頭の隅で思うけど… 相手にしてあげなきゃ可哀想だよね!! うんうん!!
「…チッ」
「んぁ? え、なに、なになになに!!??」
小さな舌打ち(舌打ちにしちゃデカい音だけどね)が聞こえたと思ったら、後ろに回られて、背中をドカドカ押されながら出久の元へと連れて行かれた。
うお、なんか爆破される以外で触られんのは久しいんじゃないんですかい?? え?
相変わらずヒーローニュースをまとめるだの何だの独り言を言ってる出久に近づく。なんか他人のこういう所見るとゾワゾワするわ、うん。
「あっ…」
横の勝己が出久のノートに手を伸ばして、奪う。プラプラと手首で一定のリズムを取る。
「話はまだ済んでねぇぞ、クソナード。…そんで、テメェもだ、くそ焦げカス。」
いつもの荒げた声じゃないトーンで言われた。
あんた…。うーん何だろ。いつもあの言葉遣いは如何かと思うんだけど…。ウン、その喋り方似合わないわ!! やめたほうがいい!! 早急に!! 一言で言うとさ…きもぉい!!!!!
そんな思いを自分の中で叫びつつ、現実の世界の意識をはっきりさせる。
すると取り巻きたちが寄ってきて、そのノートは何だと勝己に問いた。そして『将来のためのヒーロー分析』という文字を読み上げるなりして、出久を馬鹿にし始めた。
勝己はというと…
ボン!!
_それを爆破した。そして、捨てた。
あーあひっでぇ。ヒーロー科志望には思えないね。可哀想だなぁ。出久は。何ていうか、不公平だよな。高校入試に虐めをしてたかどうかなんて関係ないんだもんな。なんか損した気分だよな。
「ふんッ。一線級のトップヒーローは、大抵学生時代から逸話を残してる。」
あーーーーーーーー。成程ね。そういうことね、理解理解。納得はしないけど!!
プライドの高い勝己の事だから…
きっと—
「俺は」
「「—この平凡な私立中学から初めて…唯一の雄英進学者って泊を付けてぇ—」」
「—のさ…」「—のね?」
…わははは! 当ったりィーー!!
分かるわァーそういうトコ!! ほんっっと勝己の思考回路はわかりやすい! 直列なんだもん!! 手に取るようにわかるぜ!! なんか、ありがとう。感謝したくなっちゃうね!! これからも、分かりやすい脳みそで居てね?♡
「…あ゙ァ゙??」
低く唸った声が聞こえたあと、ぐるん!!っと緑谷に向けられていた顔が私の方を向いた。勝己の右手では小さな爆破が見えた。
おお、すげー急角度だな。首折れそー。
てか、右手かわいいね。威嚇のつもり??
「テんメェ………!!! 俺をナメてんのかァ゙?!!!!」
「舐めてないよ、不味そうだし。」
「そういう話じゃネェ゙よ゙!!!
大体!!! デクも焦げカスも、雄英受けんなよ!!
焦げカスは普通科な分、幾らか頭が正常だったみてぇェだが… 」
「はァ…朝も言ったろ? 私達の好きだって。 」
「黙ってろ!!! 俺は完璧主義なんだ…
テメェら2人、雄英受けたらぶっ殺すからな… チッ」
勝己は取り巻きを引き連れて教室のドアの方へ歩を進めた。出久はプルプル震えてただ立っているだけだった。取り巻きがなんか言ってきたような気もするけど…
所詮モブだわ。聞く価値もないね!!がはは
うーん、それにしてもほんと、コイツ弱っちぃな。こんなんで震えてんのかよだっせ。
震える小さな背中と、自身に満ち溢れる特に大きくも見えない背中を交互に見る。うん、なんかどっちも駄目だな。ヒーローにはなれない。
そんなことを考えて、帰ろうと動き始めようとした所で
「…あ、そんなにヒーローに就きてぇんなら、効率いい方法あるぜ?」
勝己が足を止めて口を開いた。
「—来世は個性が宿ると信じて、屋上からのワンチャンダイブ!!!!」
おーおー。何を言い出すかと思えば結構えぐいな。今後、お前がヴィランになりましたって報告があったら「ああ、だろうな。」くらいで済んじまうぜ。
「…くッ、ぅヴ、!!」
緑谷は精一杯爆豪を睨んだ。
「なァ゙にィ゙???」
まあでも、それは傍から見れば蛇に向かって一生懸命ちゅんちゅん言ってる雛鳥にしか見えない。
はは、弱すぎて笑えてきちゃうぜ。
ガララっとドアが開く音がして、爆豪は教室を出ていった。
「出久、—」
駆け寄って声をかけてあげれば緊張が溶けたような顔をして私を見た。
「—大丈夫?」
言ってあげる。目の前の男の心の為に、記憶のために、私の目的の為に。
え??何でって…? 私の目的は何なのかって…??
うぅん、ほら、人の記憶には残りたいじゃん??♡
「じゃ、私病院行かなくちゃ。バイバイ!!」
教室を出た。
【緑谷side】
「エサじゃないよ。ばか。」
例ちゃんを追うようにして教室から出た。
さっきかっちゃんに爆破されて、窓から捨てられて、挙げ句の果てに鯉の水槽に落ちてしまったノートを拾い上げる。
「僕のノートだ。ばか。」
今日は二度も彼女に守られてしまった。
同じ無個性なはずなのに情けないと思う。
けれど同時に、守られたときの安心感が心地良いと感じる。幼い時から変わらない感覚。
ヒーローノート。
書き始めたきっかけは、忘れもしないさ。…彼女との出会いだったんだ。
彼女は誰よりも身近なヒーローで、まさにヒーローになるべき人間と呼ばれる類の人だった。
媒架 例。
「オールマイト以外で、尊敬している人は誰ですか?」
って聞かれたら、迷わず即答できるくらい。
唯一。オールマイトに並ぶ程に僕が尊敬している人。
ヒーローノートの1ページ目に書き留めた人。
「おいおい、とげ頭!! 緑んのが泣いてんのが見えへんのか?? 目ェついとんのか?!!」
守ってくれた後ろ姿は僕と同じくらいか、それ以下だったのにとても大きく感じて。頼もしくて。心強くて。
「おいお前もお前やぞ緑!! めそめそしてへんで、笑って前向けや!!」
されるがままな僕をびしっと言ってくれて、僕に光を、道を、希望を、方向を、教えてくれた。
7歳の時に関西から越してきて、初めて会ったにも関わらず、かっちゃんに虐められてるところを助けてくれた子だった。
銀色で、腰辺りまである長い髪と、水色に輝く目と、何よりもヒーローらしい姿が印象的な子だった。
だから、そんな彼女と小学校が同じで、クラスも一緒で、出席番号も近くて、ご近所さんだって知ったときは驚いた。
さらに、僕と一緒でヒーローを夢見てて、それでも無個性なんだって聞いたときは本当にびっくりした。
まるで僕を映したようだった。でも、彼女との違いは大きかった。
「かっちゃん!! 緑谷泣いてるやん、そんなんじゃヒーローにはなれへんぞ!!」
「出久、大丈夫か? かっちゃんになんか負けへんの!!」
「オールマイトは倒れんで、笑顔でいるんだよ!! せめて何か、一言でも言い返してやれ!!」
「無個性だからって馬鹿にされていいわけじゃない。ヒーローを目指すなら、無個性なんか理由にしてられない!!」
成長に伴って徐々に関西弁が取れ、標準語になっていった例は、変わらず僕を守ってくれた。
強くて、芯があって、真っ直ぐ光を、前を 見ていて、いつしか僕もあんな風になりたいと思った。
諦めた方がいい、と。無個性だとお医者さんから告げられた僕がヒーローを追い続けられる、ヒーローになるという夢を見続けられる唯一の理由が彼女だった。
彼女のおかげで光を逃さないでいられた。
なぜなら、彼女なら本当に『無個性ヒーロー』としてデビューを実現させるかもしれないと思ったから。
中学2年生の冬、「3年生の0学期」なんて言われる時期に、僕は例ちゃんに聞いた。
「高校はどこにするの?」
例ちゃんは迷わず「雄英!!」と短く笑って答えた。まだその目に光が宿っていることに、僅かな安心を覚えた。
…彼女がもし、「やっぱり無個性ってデカいわ」なんて失望を口にしたもんなら、僕まで気が滅入ってしまいそうだったから。
2年生終盤の途中から例ちゃんは学校に来なかった。何故だが先生は説明してくれなかったけど、僕とかっちゃんは知っていた。
春休みが明けて、進級して。皆が少しだけ背丈を伸ばしたみたいに見えた教室に、例ちゃんは何もなかったみたいな顔をして現れた。
元々人気者だった彼女は、長い髪をボブ辺りまで切ったことにクラスの皆が驚き、囲まれていた。
その日の放課後、僕にこう言ったんだ。 「やっぱり、無個性には限度はあるよね。」
って。彼女は笑っていたけれど、僕は分かった。
…あの目に、あったはずの光がなくなっていたこと。 あんなに真っ直ぐで、光を宿していた目はどこか遠くを見て、濁っていた。
その目は無個性だと診断された幼少期の僕を彷彿とさせた。
光の代わりに残ったのは右頬、左目の上の傷、そして口の端が裂けた痕。それらが僕の目に焼き付いて離れなかった。
否、離せなかった。
「それでも—」
今度は僕が例ちゃんに教えてあげたい。
僕が教わった光を、道を、希望を、方向を。
まだその目が濁りきっていないなら、僕はそれを払えるように頑張るから。
「そうさ、今度は例ちゃんを守るんだ!!」
「ハーッハッハッハ!! ハーッハッハッハ!!!」
…
「…ハ?」
「ヴィラン!!!」
【例side】
うーん、今日も良い天気だ。なんかいい気分だ。そしてガチで暇だ。
私は今、なけなしのお小遣いで買ったハー◯ンダッツの抹茶味を食べながら時間を潰す。え? 高い? 贅沢? お黙り!!
これが私の楽しみで、数少ない生き甲斐の1つなんだ。これがないとやってられねぇってんだ。 邪魔しないでもらいたいね!! がはは
うん? あぁ、そうね。食べることは好きになったよ? 最近。モブじゃない奴らが一番いい味してるがな!! だはは
ところで、私が何処に居るかって??
田等院商店街のとある屋上だあよ。呑気な人間共の観察はまあ… うん、つまんねえ人間と話してるよかよっぽどマシだから、時間潰しに最適だった訳。
「んーーーーうまかった!!」
たった数分の楽しみを満喫して、空のカップを置く。
うーむ、美味しいは美味しいんだけど… 最近ハー◯ンダッツの抹茶じゃ満足できなくなってきたな。やれやれ、初めて食べたときは革命なのかとも思ったのに。舌が肥えちゃったかな。
ああそうだ、この辺に抹茶専門店とかないかな。いい時間つぶしになりそうだし普通に食べたい。うぅん。
「よっ… と。」
下を歩き回る人間を見ようと身を乗り出す。 あぁ。ついでに今日の夕飯の分考えようか。
あ、コロッケ屋さん今日安い。いいなぁ。そうだなぁ。アレ出して、昨日の残り物でもいいかな?
作るの好きだけど毎日ってなるとめんどいし、その後片付けが待ってるから嫌なんだよね。
戸締まりして、洗濯して、風呂掃除して…。 私がいつテメェらのお手伝いさんになったんだよ……。
「はあああああああああああ_」
特デカため息である。
見上げると私の目に太陽が眩しく映った。
くっそ。前言撤回!! こぉんな天気なのがウザくなってくるぜ。私はこんなにドカ鬱なのに!!!
_と心の中で叫ぶと、2つのヒト型の影が通ったあと、空から何かが私の居る建物の脇に降ってきた。
「_ぁぁぁあああああ???? 」
何だありゃペットボトル? コ◯ララベルだったけど… にしては中身腐ってなかったか??
てか、着目点はそんなとこじゃねぇな?? ヒト型だったぞ? 多分浮遊系個性のヒーローじゃんね? それか、超パワー。
…空から物落としてんじゃねぇよ!! 人に当たったら大怪我だぞ!!!
「、だァァァァーーーー…」
四肢を広げて大の字に寝る。
うん。なんか嫌な予感がするよ。
【爆豪side】
媒架例。
小1ん時。 アイツは越してきたばかりで俺らの名前も知らねぇ、事情も知らねぇ… ただ通りかかっただけのはずなのに、雑魚で出来損ないのデクを助けに入ったヤツだ。
クソが……
クソがクソがクソがクソがクソがァ!!!!
何なんだよ!! 何様なんだよ!!
デクみたいな出来損ないの雑魚なんかを?
俺らのこと何1つ知らないくせに?
何当たり前みたいな面して助けてんだよ!!! 何正義面して俺の前に立ってんだよ!!!
アイツは…。
アイツは、デクと同じ『無個性』のくせに、強かったんだ…! オレのことを怖がりもせず、憧れもせず、媚びもせず、真正面から否定しやがったァ!!
「かっちゃん!! 緑谷泣いてるやん、そんなんじゃヒーローにはなれへんぞ!!」
ある日言われたこの言葉だけは、どれだけ時間が経っても耳から離れねェ。それどころか、年々言葉に重みが増していった。
オレは最強なんだ、誰よりも上なんだって信じて疑わなかった小さい俺にとって、アイツの存在は“異物”だったんだ…!!
自信に満ちた俺の価値観を何もかもぶっ壊す存在だった…
何度ぶっ叩いても… 何度転ばせても……
何回爆破しても…! 何回罵倒しても…!!
もうボロボロになって、使い古しの雑巾みたいなひでぇ怪我でも、血を滴らせても… 生涯残り続ける火傷の痕を増やしても……
重ねちまったんだ!! 俺はァ…。
何度でも立ち上がるアイツは… まさに応援されるヒーローで。 そのヒーローに似た光を目に宿していた!!
それなのに… その奥で静かに、どこか俺を俯瞰している目が嫌いだった。 俺の“必死”を見透かしているようで嫌いだ!!
理由なんか知らねぇ!! そこに答えなんていらないんだ。
ただただ無性に、何度でも光を失わず、まさにヒーローのそれを彷彿とさせる姿で立ち上がる例に腹が立った。
—今日もそうだった。
「勝己よォ、緑谷と媒架とは幼馴染なんじゃねぇの??」
「流石に今日のはやりすぎ、例ちゃん腕焼けちゃったらしいじゃん?? 傷残ってたら俺がキレるかも笑」
「はァ゙?!! 知るかよ、んなこたァ!! 俺の道に居たのが悪ぃんだ」
そうだ。俺は悪くない。今日の例のも、俺がやったわけじゃない。アイツは—
—避けなかったんだ。
このまま行けば確実に爆破されると分かってて。確実に俺の動きを、手のひらを目で追っていた。全てが予想通りかとも言うように動かれた。
そして、全てを左腕に集中させた。
全て同じ位置にだ。
理由は知らない。理解ができねぇ。
一つ言えるのは、俺は悪くねェってことだ!!
—そうだ、そうだよ。
俺は悪くないんだ。 俺が一番なんだ。
今までも。 これからも!!
俺の先を行くな。 俺より強くなる。 これ以上強さを求めるな。
その思いが膨れ上がって、ムカついて、ムカついて、どうしようもなくなった。例の全てを否定したくて、潰したくて。
…だから!! 俺は、アイツを潰したんだ。 叩いたんだ… 蹴ったんだ…!
ひたすら「俺のほうが上なんだ」って叫んだ。
例を捻じ曲げることで、例のヒーロー像を否定し、己を肯定する。
…俺は悪くない。 俺は負けてない。
—「あ? …おいおい!!」
「いい個性の隠れみのォ!!!」
遅れてすみません、中間テストの終わりました大拍手!!
なかなかまだオリキャラの信念だとか、過去だとかが解明されてないので分かりにくいですね……。変なとこで切ってしまってすみません、書ききれなかった!!
ので、続きとか過去編諸々合わせて次の話に盛り込みます。
次までお待ちくださーい……