夢を見ていた。
気づいたら人形展にいる夢。私の周りには赤い薔薇が巻き付かれてあった。
ひとりの少女が来た。 指を指した。
「綺麗なお人形さんだね!あたしもこんなふうになりたいなぁ!」
ピンと両腕に巻き付かれてあった糸が張った。腕がちぎれちゃいそうなくらい強い威力だった。
どうして人形展にいるの
どうして、他人に見られているの
プツン
糸が1本切れた。右腕が少し楽になった。救ってくれると真剣な眼差しで誓ってくれたあなたが切ってくれた。あなたはいつも25時に温かい曲を奏でてくれる。いつ救われるかも分からない、救われずに消えてしまうのではないかと思ってもいる。でも貴方はいつだって私のために曲を作るの。その曲はいつも不思議な気持ちになるの。もう、ひとりじゃないんだね。
プツン
糸が1本切れた。右腕が楽になった。雨の日に私の腕を引っ張ってくれた。濡れていた肩も貴方が傘をさしてくれたおかげでこれ以上濡れることは無かった。あなたはいつも25時に絵を描いている。時に、色や構図を指摘をするとすぐに感情的になる。でも誰かに認められるまで描き続けることができる最後までやり抜く力がある。いつか、あなたの絵でも救われるのかな。
プツン
糸が1本切れた。左腕が少しだけ楽になった。あなたが逃げていいって言ってくれた時胸が軽かった。でもどうやって逃げればいいのか分からなかった。あなたはいつも25時に暖かくて可愛い映像を作ってくれる。絵名のイラストと相性抜群で、コメントでもよく評価されている。あなたはいつも私に希望をくれる。でも時に見せてくる苦しい顔は、私でも救えるのかな。
私は自分で糸が切れるのかな
ピン
糸が張った。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。母親を苦しませてしまった。泣かせてしまった。怒らせてしまった。逃げたい、逃げたいけど、私は“いい子”だからお母さんの言うことに従わなきゃ。いけない。
せっかく切ってくれた糸もいつの間にかまた巻き付かれそうになっていた。開放された右腕に持っている金属製のハサミはなんのために持っているのか。自分は自分を守るために糸を切らなきゃいけない。そのために持っているハサミなのに、なのに。
プツン
糸を切った。左腕も楽になった。逃げた。
暗い夜に逃げ出した。土砂降りで髪も、服も全部びしょ濡れだった。寒かった。冷たかった。気づいたらただただ光をめざして走っていた。あの光はいつだってどんな時も私のそばに居てくれた。あの光は冷たい私を包んでくれた。あたたかい朝日を浴びているようだった。
奏
私、頑張ったよ。糸を自分で切ったんだよ。
なのに、どうして上手くいかないのかな。
両腕に絡まっていた糸を切った。けれど胸に、心に複雑に絡まっている糸は解けない、切れない。わからない。
夢を見ていた。
気づいたら人形展にいるお人形を見ていたの。幸せそうだった。もう、気持ち悪いなんて感じなかった。
そう、そう感じる日が来るよね。
コメント
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まふゆ一推しにとってこれはさすがに神作品すぎる…。 はぁ…、まふゆちゃん頑張ったね…! 久しぶりにゾクゾクくる作品でした。ありがとうござました!