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終わってる三十路お姉さんの仕事記録

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終わってる三十路お姉さんの仕事記録

5 - 私のゴミみたいな人生が終わった日

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2025年03月07日

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「はぁ…眠い……」

今何時だろう、どうでもいいや。

多分6時間くらい前からずっと書類に追われてずっと仕事してた。

なんで生きてるんだろう?こんな粗大ゴミなんて死んだ方がいいのに。とか思いながら、組織のボス__レズアの部屋に向かってるところ。どうせ資料なんか渡しても全部燃やされるんだろうなぁ…、それならやらなきゃよかった。



「失礼します……」

いつも通り部屋の鍵は空いていた。不用心にもほどがある。

レズアは不在だったので、机の上に資料を置く。その机にいくつかの錠剤が散らばっているのが見えた。

「…ちょっとだけならバレないかな……」

どんな薬かなんて知らないけど、流石にヤバいやつじゃないでしょ…。睡眠薬とかその辺じゃない?多分……。

何粒か手に取れば、それを飲む。そして何も知らないフリをして私は部屋を出た。



少し歩いたところでノディとゼイルを見かけた。ふたりとも何かの資料を見て笑みを浮かべている。

何を見てるんだろう?と気になって話しかけてみる。

「こんな時間に何してるの?ノディ、ゼイル」

「……はぁ、僕に近づかないでくれ、この粗大ゴミが」

「ホントだよな〜!この三十路クソババアがよ!」

「っ、え」

ゼイルはともかく、ノディってこんなこと言う人だったっけ?でも、私が粗大ゴミなのは事実なわけだし…。三十路も事実だけど…クソババアも事実かもしれないけど…。

「の、ノディ、ゼイル?何言って、」

「とても目障りなんだけど?早く消えてくれ…」

「せっかくいいとこだったのに台無しだよな〜!!」

そうかそうだそうだった!!

私は所詮ただの粗大ゴミだ!今まで身の程をわきまえなかった私はなんて愚かなんだろう?


あぁ、死にたい。


ここまで死にたいと思ったのは久しぶりかもしれない。


「あはっ!、ごめんなさい、すぐ、消えるから」

私はその場から逃げ出すように走った。



「こんな時間に何してるの?ノディ、ゼイル」

「……はぁ、それはこっちのセリフだよ。そっちこそこんな時間に何してるんだ?」

「ホントだよな〜!お前がこの時間まで起きてるなんて珍しいな」

「っ、え」

なぜそんなに心外そうな顔して心外そうな声を出すんだ?と僕、ノディと彼、ゼイルは困惑している。

今の時刻は3時28分。 僕もこんな時間まで起きていることはそんなにない。ゼイルは知らないけど。莉乃がこんな時間まで起きているなんて相当なことがなければないはずだけど…?

「の、ノディ、ゼイル?何言って、」

「君には僕が他人の心配などしないタイプに見えているのかい?心外だね…」

「せっかく俺たちがお前の心配してやってんのにな〜!!」

なんでそんなに傷ついたような顔をするんだ?全く意味がわからない。

そして莉乃はなにかに気づいたような顔をすると、すぐに笑顔を作って、

「あはっ!、ごめんなさい、すぐ、消えるから」

と言って走って逃げていった。

…はぁ?何がどうなっているんだ??

僕とゼイルはしばらく間抜けな顔をして見合っていた。が、

「あいつ明らかにおかしかったよな??まったくどうしちまったんだよ」

「はぁ…面倒なことになりそうだ」

僕たちは慌てて莉乃を追いかけた。



やっぱりなんかおかしい気がする。…私がおかしいのかな、きっと。

我ながら体力が無さすぎるにもほどがある。ちょっと走っただけで息が上がってしまう。そんな自分をまた嫌になりながら歩いていると、何やら話し声が聞こえる。とても楽しそうな声。…これはレズアとミレア?あのふたりが?

珍しいなぁ、なんて思いながらふたりの話に耳を傾けた。



「アハ、あんたもそう思ってたんだ〜? 」

「はァ、だって全人類共通で思ってることだろ?」

「う〜ん、それもそうだよね〜♪あ、莉乃ちゃん!」

相変わらず人懐っこい笑顔をしているミレアは、私を見つけるとそう言って手を振る。私も手を振り返して、

「ミレアにレズア、なんの話ししてるの?」

「うん、あんたがとっっても役立たずなクソ野郎って話してたよ〜♪ね、レズア! 」

「あァ”、今までで1番盛りあがったな!」

、この人たちも?

今まで私に優しくしてくれてただけで、本当はみんな心の中で私を嫌って、た?

そうに決まってる、ゴミに優しくする人なんて存在しない。

「ねぇ、今まで自分がゴミクズと同等の存在だって気づいてなかったの?かわいそ〜な子!」

くすくすと笑うミレアとレズアの声が聞こえる。

うるさい、うるさいうるさいうるさい!!!

なんでみんなこうなの?私がいなければよかったのかな?みんなと出会わなければよかった?最初から存在してなければよかった?消えてればよかった?もっと早く死んだらよかった?


気づけば私はその場から逃げるように走り出していた。



「アハ、あんたもそう思ってたんだ〜? 」

「はァ、だって全人類共通で思ってることだろ?」

アタシ、ミレアとコイツ、レズアはとっっっても珍しく楽しいお話をしている。ま、アタシがレズアに合わせてあげてるからだけど〜♪さっすがミレアちゃん!偉すぎる〜!!

そんなストレス溜まってばっかのくっそつまんない会話をしてたら、莉乃ちゃんを見つけた。アタシが笑顔で手を振ると、莉乃ちゃんも笑顔で手を振り返してくれた!

「ミレアにレズア、なんの話ししてるの?」

「うん、レズアが好きなことに関して話してたよ〜♪ね、レズア!」

「あァ”、今までで1番盛りあがったな!」

…あれ、なんでそんな悲しそうな顔するの?アタシたちそんなこと何も言ってないよね!?と、レズアを見る。レズアも同じことを考えてるみたい。コイツと同じこと考えてるとか最悪なんだけど〜!!…とか言ってる場合じゃない!

ホントにどうしちゃったんだろう?アタシは莉乃ちゃんの顔を覗き込むように見る。

「ねぇ、どうしたの?体調悪い?あ、もしかしてコイツがここにいることが嫌だったりする!?」

レズアにすっごい睨みつけられてる気がするけど今はどうでもいい。実際莉乃ちゃんの顔色は悪いし、見てるだけですっごい心配になってくる。

すると、莉乃ちゃんは更に顔色を悪くして、呼吸が浅くなっている。

「ねえ、莉乃ちゃん___」

と、アタシが話しかけると同時に莉乃ちゃんはどこかへ走り去ってしまった。

アタシはしばらく呆然としていた。



「おい、ミレアにレズア!」

向こうからノディとゼイルが走ってくるのが見えた。

「あァ”?ったくさっきからなんなんだよ」

「あいつの様子、おかしいって思わなかったのかよ!?」

「まァ、話が噛み合ってない気はしてたが…“」

「さっき僕たちが会った時もあんな感じだったんだけど、何か知らないかい?」

全く心当たりがないんだけど…全くどうなってるのかなぁ??

「とりあえず追いかけねーと何しでかすかわかんないぞ?」

「それもそうか…早く行くぞ」

「なんでオレまで行くことになってんだよ……」

「そりゃあんたも原因かもしれないからでしょ〜?」

「オマエ…後でぶっ飛ばすからな!?」

なんて軽口を叩きながらアタシ達は莉乃ちゃんを追いかけた。



もう何も聞きたくない。何も見たくない。その一心でどこへ向かっているのかも分からず私は走っている。



世界が輝いて見える。私なんかのゴミには残酷なくらいに眩しい。



いつの間にか屋上まで来ていた。風が吹いている。まるで私に飛び降りろとでも言っているかのようだ。

…ああ、そうだ。飛び降りるって手段があったんだ!なんで今まで思いつかなかったんだろう?

これでやっとこのゴミみたいな人生を終わらせられる!…そう思っていたら、

「___何をしている?まさか、ここから飛び降りるつもりか?」

ノディに手を掴まれていた。

「…なんで来たの?離してよ、」

あんたには関係ないでしょ、って言って笑ってみる。ちゃんと笑えてるかな、私。

「さっきからお前の行動がおかしいから、何かやらかさないか見張ってたんだよ!」

と、いつの間にか現れたゼイルがそう言ってため息をつく。レズアもミレアもいる。はぁ…。

「おい莉乃、冗談にも程が」

「私のこと散々粗大ゴミ呼ばわりして、今更そんなこと言うの?」

「はぁ?何言って__」

ノディを突き飛ばして隠し持っていたナイフを取り出す。今更謝るって言ったってもう遅い。ま、粗大ゴミに謝る人なんて存在しないと思うけど。



「うるさいッ、はやくどこか行ってよ!」

「頼むから落ち着いてくれ…」

全く一体全体どうなっているんだ?未だに話が通じる気配がしない。

そもそも僕が莉乃を粗大ゴミなんて言った記憶は全くない。

なんだ、彼女には何が聞こえているんだ…?

君の耳は酷く使い物にならないようだね、と言いかけたが辞めた。今彼女を刺激したらどうなるか分からない。まず対話を試みるべきか?いや、今はまともに話が出来る状態ではない気がする。それに…、


そんなことを考えていたら、僕の胸部にナイフが深々と突き刺さっていた。

「……は、ぁ…?」

ワンテンポ遅れて鈍い痛みが僕を襲う。

足に力が入らなくなって、崩れ落ちるようにその場に倒れる。

僕の名前を呼ぶ声が遠くに聞こえる。

僕は意識を手放した。



ああ、そうだ。これでいいんだ!

ノディにナイフを投げたのは悪いとは思っている___まさかあんな所に刺さるとは思ってなかったけど。どうか死んでませんように。

みんなノディの方に駆け寄っている。やっぱ私なんてどうでもいいんだね!

もう私を引き止めるものはなくなった。

空が明るい。夜明けってこんな感じだったんだ。

ピクニックにでも行くかのように、楽しげにスキップするように歩く。

数歩歩けばもうその先には地面はない。

足元の感覚が無くなる。

私は重力に従って落ちていく。


「さようなら、このゴミみたいな人生!」


次があるなら、もっとマシな人間になってますように。

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