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入学式から一ヶ月ほど、毎日一人で帰ろうとする遥に、俺が声をかけて一緒に帰ることが多くなった。
帰る際に、彼女に聞きたいことを聞いてみた。
誕生日、住所、前の中学や友達、などなど。
いつも彼女と帰れることが楽しかったし、学校に来る理由が、いつの間にか遥と一緒に帰ることになっていた。
しかし5月に入ると、遥の席に遥の姿はなかった。
体調でも崩したのかな、と簡単に最初は思っていた。
でもおかしいことに、遥は1週間、2週間たっても、学校に来ることはなかった。
そんななか、今日は5月20日、遥の誕生日。俺は、遥になにかをしてあげたいと思っている。
何かをしてあげたいと言っても、お菓子をあげるなどの、簡単なプレゼントだけど。
今日の授業は、遥の誕生日プレゼントをずっと考えて、1日の授業が終わった。
俺は放課後、一緒に帰ろうと言ってきた早河君の誘いを断って、家の近くの花屋へ寄った。
中に入ると、色とりどりな花が俺の視界に入ってきた。
俺はその色とりどりな花に見惚れていると、俺が店に入ったことに気がついたのか、40代ほどのおばさんが此方を見てきた。
「初めての方よね?どんなお花が欲しいの?」
優しい声をしたおばさんは、俺にそう問いかけてきた。
確かに俺は初めてだし、花の選び方も知らない。
「ええと…友達に誕生日プレゼントで渡したいんですけど…」
俺は初めてで戸惑っていると、誕生日プレゼント、という言葉に反応したのか、その子女の子かしら?、とまた聞いてきた。
「まあ、女子ですけど…」
そう答えると、おばさんはふふっと笑って、ガーベラの花を六本差し出してきた。
「なら、この花を買いなさい、きっと喜ぶわよ」
花を買う経験がないため、おばさんに全て任せた。
一体、ガーベラの花六本にどのような意味があるのだろう、と少し気になった。
そんなことを思っていると、おばさんがテキパキと会計を済まして花を渡してきた。
俺は、ガーベラ六本の花言葉を考えながら、遥の家へ行った。
遥の家へ着くと、車がないので、おそらく彼女達は留守にしている。
でも一応、インターホンを鳴らす。
返事はなし。帰ろうと背を向けると、「中村君?」と言う女性の声がした。
俺が振り返ると、遥の姉だろうか、そんな感じの女性が扉を開けて立っていた。
「ええと…今日って遥の誕生日ですよね…?」
「……ええ、そうだけど…」
誕生日かの確認をすると、女性は少し言いづらそうな顔をした。
「……聞いて驚かないでね?2週間くらい前から、遥が学校に来ていないことは、知っているよね?」
2週間くらい前から学校に来ていない。その言葉を聞いた瞬間、なんだか嫌な予感がした。
そしてそれと同時に、原因をききたくないとも思った。
でも、その願望は叶わなかった。
俺は、手元にある六本のガーベラを、ぎゅっと抱きしめた。
そのガーベラを、遥だと思って___
「その……学校に来なくなった原因なんだけど……それが……」