” 気づきたくもなかった、
自分の感情になんて “
わたしと遊征はいわゆる幼馴染だった。
家が特別近いわけではなかったけれど、親同士の繋がりでよく一緒に外出したり遊んだりもした。
だが、わたしは中学に上がって少し経った頃
ふと勘づいてしまったのだ。
脈動が体中にずっしりと響く
深紅の血液が血管の中を
どくどくと流れているのがわかる
「ああ、これが恋という感情なのか。」
と少女漫画好きのわたしは、すぐに理解することができた。
厄介なのはここからだ。
その感情が芽生えた相手方、すなわちわたしの初恋を奪った相手が「北見遊征」という人物だったことが大きな問題なのだ。
今までのわたしは遊征を異性として意識したことは微塵もなかった。
幼少期は着替えも同じ部屋だったし、ましてやお風呂にも一緒に入っていたのだから。
羞恥心とやらの感情はとうに衣服と一緒に脱ぎさったようなものだと思っていた。
否、
正確にいうとそう思っていたかっただけなのかもしれない。
そんなやつにまさか恋心を抱くとは…
思春期とは恐ろしいものだ。
名を呼ばれただけで頬が紅潮し、
見つめられただけで
脳ごと溶けてしまいそうになる。
桃色から発色のいい水色へと変化している彼の唯一無二で美麗すぎる瞳に、わたしが写されていることにすこし心が跳ねたりもした。
夜な夜な彼を思い耽って、
なかなか寝付けない夜もあった。
そしてその想いを告げぬまま高校に進学した。
北見「え!一緒の高校!
まじで嬉しい笑笑
俺高校不安だったからさ、まじ
ありがたいわ、ないす笑」
「んでしょ笑 天才すぎねわたし」
北見「うわだる笑 まあお互いがんばろうな!」
そしてにこっと微笑んで、
どこかへ走り去ってしまった。
高校生活が不安だと本音を吐露しながらも彼はすぐに友達を作るんだろう。
まあそれを見越して
遊征と同じ高校にしたんだけど。
ごめんね遊征、
わたし達の間はそんな純粋無垢な友情とやらで結べないかもしれないね。
おそらくつづく
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