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入学式は8時45分からで現在は8時10分前後。入学式まではまだ時間があるな。そう思った俺は自身の鞄から本を取り出した。最近ハマっている有名な著者のミステリー小説だ。
俺は本を読む時間が好きだ。外界からの情報をシャットアウトし、本の虫になる瞬間が好きだ。本だけに集中し、読んでいる間だけは俺もその本の世界の住人になる。そんな感覚が好きでたくさんの本を読んでいる。
栞のあるページを開き、続きから文章を読み始める。そんな時、教室のドアからバンッ--と大きな音が鳴った。外界から情報をシャットアウトしている、とは言っても全てを完全にという訳ではない。大きすぎる音を聞けば嫌でも現実世界に引き戻される。そして、現実世界に引き戻された俺は何事かとその音の鳴った方へと注目すると、綺麗な銀色の髪に角度ごとによって違う色に変化する美しい瞳の男が居た。
「ケセセッ、俺様参上ッ!」
…クラスの皆がぽかん、とした顔でその男を見ていた。そりゃあそうだ。みんな思い思いに近くの席の者や同じ中学だった者と話している中爆音がしたと思えば恐らく同じクラスの男であろう者が意味のわからない登場の仕方をしている。俺たちが呆気に取られている中、アントーニョとフランシスがソイツに話し掛けた。
「お、ギルちゃん!おはよぉ」
「おー!トーニョにフランじゃねぇか!俺様の華麗な登場見てたか!?」
「華麗な登場言うたってなぁ、悪目立ちしとんで?」
「ケセセッ、俺様は何時でも目立つから関係ないんだぜー!!」
「「うわぁ…」」
軽蔑の眼差しを送る幼馴染2人を見ながらそういえばギルちゃんも同じ、と言っていたなと玄関口での会話を思い出す。2人は仲良さげに話しているが俺は顔を見たことがないし名前も聞き覚えがない。つまり、中学で仲良くなった奴か、と一人で納得した。まぁアイツらの友人ならあれくらい可笑しくてもまぁ不思議ではない。類は友を呼ぶとやらだ。
そう1人で簡潔させると俺はまた自身のミステリー小説へと視線を落とした。少しの間クラスの皆は唖然としていたが次第に興味を失って言ったのか、また思い思いにしたいことをしているらしい。それから少しの間本に集中していたが今何時かと気になり、ふと顔を上げたところ先程の銀色の髪の男--ギルベルト・バイルシュミットが俺の席の前で俺を凝視していた。
「…? え、えっと、?」
「なあなあー、それ何読んでんだー?」
その視線に少しいたたまれなくなり、吃りながらも話しかけるとそう聞かれた。お前に関係ないだろ、と言いたくなったが入学初日に同じクラスの人、しかも3年間同じなのだからそう邪険な態度を取るのはやめた方が良い。それに俺は紳士だからな!と思い話そうとしたところ
「てか眉毛すっげーな!極太!剃らねぇの?」
バコンッ--と良い音がなると同時に目の前の男は床へと倒れた。ああ、やっちまったなんて思いながら周囲の視線が俺をチクチクと突き刺す。だが仕方ないだろう。コイツが悪い。そして言うのが遅くなったが 前言撤回だ。コイツ殺す。ついでにあそこで2人して腹抱えて笑ってるクソ髭とクソトマト、アイツらは後で殺す。まあ少しイライラしたがその男を殴ったことで多少スッキリしたのか、自分でも驚く程落ち着いて席に座ることができ、また本を読み始めた。
「くっそぉ、めちゃくちゃ痛いんだぜー!!」
「シネ。礼儀がなってねぇんだよ。紳士としてまずは己の名を名乗れ。」
よく初対面の相手に殴られて尚話し掛けれるな、なんて殴った俺が思うことではないだろうが、そう思いながらも返事はしてやる。
「俺様はギルベルト・バイルシュミット!お前は?」
「カークランド。」
「ファーストネームは?」
「お前に教えてやる義理がない。」
そう冷たく言い放つとバイルシュミットは「ちぇっちぇっちぇー」なんて言いながら拗ねた振りをしていた。それを見ていたアントーニョとフランシスが俺のファーストネームを勝手に教えていた。バイルシュミットが「アーサー!覚えたぜー!」なんて言っていた。とりあえずフランシスとアントーニョは一発ずつ殴っておいた。
はぁ、入学初日から本当に疲れることだらけだ。朝からフランシスとアントーニョに会って挙句の果てに意味のわからない男に絡まれる。そして最悪なことにコイツらと3年間同じクラス…神は存在しないのだろうか?本当に先が思いやられるな…なんて思っているとスピーカーから教師と思われる声が流れた。
『阿〜、聞こえるあるかー?新入生の皆は順番に体育館に移動するよろし。案内の教師は廊下に居るあるからわからなかったら聞くと良いあるよー』
…何故エセ中国語みたいな喋り方なのだろうか?本当に個性豊かな高校だな、と思いながらも体育館へと移動しようとしたら例の3人から
「アーサーアーサー!俺様たちと一緒に行こーぜー!」
「お前らで勝手に行け。 」
本当に、何故こうも俺に絡んで来るのだろう。友人を2、3人作って静かに高校生活を満喫する予定だったのにコイツらのせいで台無しじゃねぇか、絶対殺す。なんて思っていたらフランシスが
「そんな悲しいこと言わないで〜。ほら、早く行くよ坊ちゃん!」
と言って引っ張って無理矢理連れて行かれた。ああ、もう本当に。コイツだけは100回殺す。