みんとのストコン
『一次創作部門』提出作品です
9月、まだ続く暑さの中
いつも通る道を汗を垂らしながらひたすら自転車で漕いで行く。
高2の夏休みも、特に何もせず過ぎ去っていった。
進路決定を急かされ、勉強しろと言われる日々。そんな日々をただぼーっと時の流れを待ちながら過ごしていた。
いつもの集合場所。 いつもの時間。いつもの人。
毎週水曜日の約束を今日も忘れず、秘密の場所へ、海水浴場の外れへ来ていた。
私たちしか知らないこの場所。いや、私たちだけが知っていていい場所。
「 あっつい、 」
今日は9月4日、水曜日。晴れ。最高気温は35℃。猛暑日というやつだ。
真面目な私、約束はちゃんと守るけど、こんな日ぐらい帰っていいんじゃないかと思う。
『 おい 』
後ろから頬にピタリとラムネを押さえつけられ、そう声をかけられた。
「 びっくりした、やめてよほんと。 」
『 ごめんごめん笑 』
ぽんっとラムネを開けて飲む。
最高に美味い。やっぱりラムネは美味すぎる。
『 そういや、夏華。テストどう? 』
「 上手くいったと思ってる 」
『 それ本当は点数悪いやつね笑笑 』
「 うるさ。 」
二人でいる時は淡々と面白みもない会話をしている。
話題無くなるんじゃないかって思うけど、意外と無くならない。
『 やっぱお前と話すのが1番気楽。 』
ふんと鼻を鳴らし自慢げに彼を見つめる。
『 照れてやーんの 』
「 照れるわけないでしょ、 」
そうだよ、その通りだよ。
照れてんの。やめて欲しいの。私はこの関係が崩れるのが嫌なの。
私は成績が普通で、貴方は成績優秀。
私は顔が普通で、貴方は顔が良い。
私は運動は平凡で、貴方は運動能力抜群。
私は、私は全てが普通で、貴方は全てが頭一つ抜けている。
釣り合わないし、女として見てくれないし、言葉にはできないし、行動でも表せないし、恋愛なんてこれが初めてだし、オシャレも、女の子っぽいこともなにも出来ないの。
だからお願い。これ以上好きにさせないでよ
私も貴方と話すのが気楽なの。
貴方と話すのが好きなの。貴方と水曜日集まるのが好きなの。貴方とラムネを飲んで、海で遊んで、楽しんで。貴方と一緒にいるのが大好きなの。
恋人までは望まないからせめて、友達のまま傍に居させて。
これ以上好きになっちゃったら、もうどうしようも無くなっちゃうでしょ、
『 お前って口下手だよな。 』
「 悪口? 」
『 んー、褒め言葉? 』
「 どこがよ、 」
『 でも、顔には出る 』
「 出てない 」
『 出てるぞー、だいぶな。 』
『 俺の事好きって、顔に出てる 』
「 貴方がそうなって欲しいって願ってるだけでしょ。 」
ふんと鼻を鳴らし自慢げに私を見てくる。
「 あれ、図星かな?? 」
『 ちげーわ 』
暫く無言が続いた。嫌だ。嫌だ。
もう今日で水曜日の約束は無くなっちゃのかな
「 口下手でごめん 」
『 はい? 』
「 思ったこと素直に言えなくてごめん 」
『 別いいけど 』
「 本当は湊に言いたいこといっぱいいっぱいあるのに、上手く言葉にできなくて、でも言いたくて、自分でもそーゆーとこ嫌いで 」
『 なにー、バッド入った? 』
『 俺は好きだよそーゆーとこも。 』
好き。好きだって。慰めかもしれない。お世辞かもしれない。だけどとても嬉しかった。
「 そーゆー、誰にでも好きって言っちゃうとこ直した方がいいよ。 」
また、思ってもないことを綴ってしまった。
自分でさっき反省したばっかりなのに、嫌だって思ったばっかりなのに。
『 お前にしか言わねぇから安心しろ。 』
もう、ほんとに。やめてよ。
「 やめて、好きにさせないで。私は湊とずっと居たいの。この空間が好きで。湊と話すのが好きで、水曜日の約束が好きで。この日の為なら何でも頑張れて、守りたいのに。好きになっちゃったらもう、守れなくなっちゃうじゃん 」
『 なんでよ笑笑 』
『 意味わかんない 』
『 ただ両思いだって分かるだけなのに 』
『 付き合えるだけなのに 』
『 何も変わんないよ。だって俺お前のこと好きだし 』
『 俺からお前と離れようとするなんてこと絶対無いよ。 』
暑い暑い9月。
蝉の鳴き声はとても煩くて、私の心臓も煩かった。
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