▷ main:紫 / 青
▶ sab∶他4人( ほとんど出てきません )
▷ ちょい軍パロ
BL/薔薇の表現を含みます。
苦手な方は見ないことを推奨します。
ヒマワリと共に歩む2人のお話。
コンコン、と少し控えめのノック音。
「 スマイルー?きんときだよ、入っていい? 」
「 ん…いいぞ、どうした? 」
ここ最近ずっと籠ってパソコンをカタカタと打って複数の画面と睨めっこしていたからきんときが来る予感はしていた。
どうせ医務室に連行されるんだろうな……
「 全く…顔色悪いのわかってる?隈も酷いし、ほとんど食べてもないでしょ? 」
「 あぁそうだな 」
「 そんな軽い返事で済むことじゃないんだよなぁ…… 」
「 とりあえず!医務室行くよ!! 」
「 はいはい…… 」
ほらね。
「 はいそこのベッドで寝て!夕飯の時間になったら起こしに来るから 」
「 はーい…… 」
なんかもう、むしろ眠くないまである。
ここはやっぱり少し薬品の匂いがするな…
白くふかふかのベッドに横になる。柔軟剤のいい匂いだ。窓から光が差し込んでいるから暖かい。
窓を見ると、ふと黄色いものが目線に映る。
「 ………“ヒマワリ”、? 」
窓際に飾られた1本のヒマワリ。それは、眩しい光に照らされて、輝いて見える。
アイツ…ヒマワリ好きだったんだな。
そう考えているうちにだんだんまぶたが重くなっていく。今日はよく眠れそうだ………。
「 ……ル……マイ…ス、イル 」
「 スマイル、起きて 」
「 ん……ふぅぁ、おはよ…… 」
「 うん、おはよう。よく眠れたみたいだね 」
「 あぁ。もう夕飯の時間か? 」
「 うん、一緒に行こっか 」
揺さぶられて起きる。落ち着いた声が脳に響く。もう夕飯の時間か、なぜか早く感じる。
食堂までの長い廊下を2人で歩く。
「 あ、ねぇきんとき 」
「 ん?どうしたの 」
「 医務室の窓際に置いてあったヒマワリが気になって…お前ヒマワリ好きだったのか? 」
「 あー…… 」
少し考える素振りを見せるきんとき。なにか深い意味があるのだろう。
「 ほら、ヒマワリって黄色のインパクトが強くて輝いているように見えるでしょ?それが綺麗でさ、ずっと見つめちゃうんだ。 」
「 へぇ〜 」
「聞いていたくせに返事素っ気なさ過ぎない?ww」
「 えぇ?? 」
「 えぇ??じゃないのよwww 」
「 まぁあと…… 」
「 笑っているときの笑顔みたいに眩しいから、かな 」
そう言ったきんときの顔は頬をほんのり赤く染め、微笑んでいた。
食堂の扉が開くと、とてもいい匂いがする。今日の夕飯はなんだろうか。
「 あ!2人とも遅い〜〜!!! 」
「 ごめんごめんw 」
「 スマイル!!今日はちゃんと食えよ( 圧 」
「 うん 」
「 きりやん安心して。無理やりでも腹に入れてやるから 」
「 うわぁ、怖すぎ 」
「 ん?(*^^*) 」
「 スミマセン 」
「 おい、みんな揃ったんだから早く食おうぜ。冷めちゃうよ 」
「 そうだな。それじゃあ手を合わせて、 」
「「「「「「 いただきます 」」」」」」
今日くらいはちゃんと食べなきゃ、そろそろ俺は限界だろうし、元から食が細い方だから。
やっぱりきりやんの飯は美味いな……
「 おっ、ちゃんと食ってんじゃん 」
「 スマイルくんえらいねぇ〜 」
「 バカにしてんのか 」
「 もうずっと全然食べないからみんな心配してたんだよ? 」
「 そうそう!少食なのにさらに少少少食くらいになってたんだからね 」
「 それはすまんな 」
「 ま、ちゃんと今日食ってて良かったわ 」
「 それをこれからも続けてねスマイル 」
「 わかったよ 」
こんなにも心配されていただなんて、よっぽどなんだろう。まぁ、徹夜続きだったし監視室にずっと籠ってるしなんだからか、そりゃそうだな。
「 ごちそうさまでした 」
「 やっぱ少食すぎない? 」
「 そうか、?もう満腹だぞ? 」
「 それはそれで心配だわ 」
「 もう全部心配だよ 」
「 えぇ……とりあえず、俺は風呂入ってくるからな 」
「 行ってらっしゃい 」
「 あ、ちょっと待って、スマイル 」
「 ん?なんだ 」
「 もし、自室であまり寝れなかったら医務室来てね。今のスマイルが寝れるか危ういから 」
「 あぁ、わかった 」
やっぱり風呂は最高だな。いい休憩になる。
そういえば、ヒマワリのことを話していたきんときが気になって仕方ない。
『 笑っているときの笑顔みたいに眩しいから、かな 』
まるで誰かのことを言っているかのような…、
その時のきんときの顔だって、好きな子を思い出して語っているみたいな顔してたし……。
アイツもしかして恋してる?熱い話だな。
いろいろ考えながら廊下を歩いていたら、いつの間にか自室の扉の前まで来ていた。
自室なんて、本当に久しぶりだな。
懐かしい扉を開ける。相変わらず散らかっていて何が何だか分からない。
だが、一つだけ、この部屋の中には全く似合わない、目立つものがあった。
「 なんで、 ヒマワリ が…… 」
唯一少し片付いている机の端っこに置かれた、紫と青の模様が入ったガラスの花瓶とそこに入れられた3本のヒマワリ。
アイツ、人の部屋にまで入って置いたのか…?
でも、なんで置いた?きんときが好きなものなら俺の部屋に飾らなくてもいいだろう。
まぁ…心配、なのかな……?
疑問だらけの頭でベッドに沈む。そして瞳を閉じる……。
寝れない。予想はしていた。
……医務室行くか。
「 失礼しまーす…… 」
静かにドアを開けると、ベッドの横の椅子に座って寝ているきんときがいた。そこのベッドに寝とけってことなんだろうな。
起こさないようにベッドに入り、窓を見る。
あれ、ヒマワリが7本になってる……。
いつの間にか増えたヒマワリ。一体どこからそのヒマワリを入手しているのだろうか。小さいやつだから、たぶん街の花屋で買っているのだろう。
ヒマワリを見つめるのをやめ、眠気に耐えられず瞳を閉じた。
真っ暗だった視界が徐々に明るくなる。窓から差し込む眩しい太陽の光が少し目に痛む。でもそれはすぐ治る。
「 …あ、スマイル、おはよう 」
「 うん…おはよ、 」
「 ここにいるから自室じゃ寝れなかったんだね 」
「 なんか、あまり落ち着けなかったからな 」
「 つまり医務室は落ち着けるんだw 」
「 ……さぁな 」
なんだかここは落ち着く。でも、なぜ落ち着くのかは分からない。
でも、ここにいると心が暖かい。
昨日のように、また2人で廊下を歩く。
「 きんとき、 」
「 ん、なぁに? 」
「 窓のヒマワリ、増えてたな 」
「 んふ…そうだね 」
「 お前どこからヒマワリ持ってきてんだよ 」
「 あ〜、スマイル知ってる?ここから南側に行ったところにヒマワリ畑があるの 」
「 そうなんだ…そこから採ってきてるってこと? 」
「 そーゆーこと。今日スマイル何もないでしょ? 」
「 あぁ、そうだな 」
「 じゃあ一緒にそこへ行こうか 」
「 あと、スマイルは、ヒマワリの花言葉って知ってる? 」
「 花言葉とか全く知らないな… 」
「 ヒマワリには、“ 私はあなただけを見つめる ”と“ 憧れ ”っていう2つの花言葉がある 」
「 しかも、大輪か小輪かとか色にもそれぞれある 」
「 ……そうなんだな 」
「 花言葉って本数によっても変わるんだよ。だからヒマワリだってそう 」
「 つまり、今まで飾ってあるヒマワリの本数が違うのはそのそれぞれの花言葉を意味している、と 」
「 大当たりだね 」
「 ………ねぇ、そのヒマワリがどんな意味をしているか知っているかい? 」
そう言ってこちらに顔を向けるきんときの顔は、
少し寂しそうな、ソワソワしているような気がした。
「 ……ぇ、? 」
どういうこと?、と発言しようとしたが、食堂に着いてしまい話が途切れてしまった。
朝食を終え、この後きんときが言うヒマワリ畑に行くため、準備をしている。あんまないけど。
そうしているうちにドアからノック音がする。
「 スマイルー準備終わった? 」
「 うん 」
「 おっけ、じゃ行こっか 」
この基地の南側にある裏口から出て向かう。
基地の南側には緑いっぱいの森がある。その奥にあったらしい。全然気づかなかった、今度からスマイヌとの散歩で行ってみようかな。
軍の話やみんなの話、いろんなことを話しながら歩いていると、
「 ここだけ道があるから、真っ直ぐ進んでいくとあるよ 」
野原に一直線にある細い道。ここまで行ったことがなかったため、ワクワクしている自分がいる。
「 ふふっ…そんなに楽しみなの? 」
「 ぇ、あ… 」
「 表情と雰囲気に出過ぎでしょww 」
「 まじかぁ……はず 」
「 照れスマ、レアだwwww 」
「 うるせだまれ 」
この歳でヒマワリ畑にワクワクしてる俺、恥ずかしすぎるでしょ……。
「 あとちょっとで着くよ 」
「 ここを曲がれば……ほら! 」
「 、すごい……!! 」
草ばかりだった道がどんどん黄色に染められていく。奥には海が広がっていて、太陽の光を反射してキラキラしている。その手前にはこの時期にぴったりな太陽の下で真っ直ぐ伸びているたくさんのヒマワリ。
「 ね、綺麗でしょ 」
「 うん…すごく、きれい…… 」
目をぱっちりと開き、ヒマワリのそばに行き、自分の目線と同じくらいのヒマワリを見つめる。今まで知らなかったのが勿体ないくらい、言葉に表せないくらい、ここはとても綺麗だった。
暖かい、この感じ……とても似ている、あの場所に。
いつか、君と一緒に来たかったこの場所。
今、やっと叶えることができた。
目の前には青く澄んだ広くキラキラしている海を背景に、真っ直ぐ伸びて太陽の下で黄色い花びらを輝かせ眩しいヒマワリ。
そして、
青色にも黄色にも似合う、アメジストのような綺麗で純粋な紫色を持つ、たくさんのヒマワリと同じくらい輝いて目が離せないくらいの姿の君。
夢に見たこの光景が俺の全てを包み込む。
「 ねぇ、スマイル。 」
もしも、この感情が溢れてしまったら、いったい君はどう思う?
「 ん、なぁに…? 」
あぁ。
もう……隠し事はやめにしよう。
「 食堂までの話でさ、本数によっても意味があるって言ったでしょ? 」
「 まだ言えてなかったから、ね 」
「 そうだな、結局なんなんだ? 」
「 ……まず、一番最初に見たのは医務室の窓の1本のヒマワリ。花言葉は“ 一目惚れ ”。 」
「 一目惚れ、か… 」
「 その次はスマイルの部屋の机に置いてあった3本のヒマワリ。花言葉は“ 愛の告白 ”。 」
「 ッは……… 」
「 次はまた医務室の窓にある、増えていた7本のヒマワリ。花言葉は“ 密かな愛 ”。 」
手に持っている11本のヒマワリ。
「 次は俺の手に持っている11本のヒマワリ。花言葉は“ 最愛 ”。 」
「 最後はこのヒマワリ畑の99本。花言葉は“ 永遠の愛 ”、“ ずっと一緒にいよう ”。 」
99本のヒマワリに囲まれている君の前に、この11本のヒマワリを差し出す。
「 ねぇ、スマイル…今までのヒマワリが意味していることが分かるかい? 」
「 ぁ……、ぅ… 」
君の今の顔は、夏の暑さで顔が赤くなっているくらいだ。いや、それ以上かもしれない。
「 スマイル、僕は君が好きだ。ずっとずっと、ここに連れていきたかった。
君に一目惚れをして、頑張り屋さんで実はみんなのことをよく見ている君に憧れて、笑っているときの笑顔がヒマワリのように眩しくて、太陽の光で輝く黄色いヒマワリくらい輝く紫色の君がとても綺麗で、いつも輝く君を見つめていたんだ。 」
「 スマイル 」
「 ッッは、はぃ…… 」
照れている顔が俺の方を向く。その顔も僕は好き。
「 ずっとあなたの事が好きでした。 」
「 僕とお付き合いしてください。 」
言ってしまった。
一生の後悔になるな、そう思った俺は一瞬でいなくなった。
「 ……はぃ、よろしく…お願い、します…ッ…… 」
…………え?
バッッッと顔を上げると、今にでも倒れてしまいそうなくらい真っ赤な顔で、細く白い君の手はヒマワリだけじゃなく、俺の手ごと包み込む。
8月31日、夏の終わり。
夏を代表する黄色い花、ヒマワリ。
広い青色の手前の一面の黄色に、今、ただ一つの紫色が咲く。
僕の告白を受け取ってくれた君。
これからを歩んでいく、ヒマワリに囲まれた君と共に。
僕はいつまでも、
輝くあなたを見つめる──。