いつも通りの生活を送っていた。
朝、顔を洗って家族におはようを言ってご飯を食べる。白米に目玉焼き、お味噌汁とお茶。
洗濯物をお兄ちゃんと手伝って、ちょうど七時半。学校に向かう。
16時半に帰ってきて洗濯物だけ取り込んで、学校で習ったことの復習をして少しお菓子を食べる。あとは夜ご飯を食べて、今日あった楽しかった事を話してお風呂に入って寝る。
そんな、理想の毎日を送っている自分を描いて今日も私は自分の部屋に引きこもっている。
引きこもりになった理由は覚えていない。ただ、学校に興味がなくなったことだけは確かだ。学校なんかに行ってなくても自分のしたい事をしていた方が人生楽しい。
それが私の生き方だ。
と言っても、親はうるさいし担任も頻繁に家に来るし、だったら私の理想の生活を送っていた方が静かなのだろうなとも思っている。
ピーンポーン
あぁ、またあの心配性でやけに熱血な担任がやってきた。
ただでさえ重い頭を動かして、どうやって追い出すかを考える。
今この家には私しかいない。だから出なければ帰って行くだろう。そんな期待をして窓から担任が帰っているかを確認する。
すると、あの短髪でいかにも男性というような人影が見えなかった。見えていたのは、若くて少し髪が長めの好青年だ。
近所の人だったとしたら出ないと後で親がうるさいから仕方なく鉛をつけたかのような体を運ぶ。ひんやりとした床を裸足で歩いているからより一層動きたくなくなる。
玄関につき、流石にもう帰ったかなと思ってドアを開けると、そこには窓から見た通りの髪型をしている好青年がいた。顔は、美人という部類に入るのだろう。造形はとても良かった。
「えっと…どちら様ですか?」
引きこもっていたからか、声帯の周りの筋肉が衰えて声がうまく出ない。聞き取りづらいはずの声をしっかり受け取ったのか、好青年は笑みを浮かべて一言。
「君を預かることになりました」
耳を疑った。私を預かる?何のために。というかそれは親には伝わっていることなのだろうか。誰がそんなものを頼んだ?というかこいつ誰だよ。
たくさんの疑問が小さい脳みそを駆け回る。
そんな私を見て好青年は笑みを絶えず、中に入る許可を申し出てきた。
少し図々しいと感じながらも私はとりあえず家の中に…
「いれるわけないでしょう⁉︎」
急に大声を出したせいで、好青年はびっくりして私は咳き込む。
家の中に入れていい男はお父さんだけだ。それ以外は気持ち悪い。
「大体、誰から私を預かれなんて…」
「君の両親だよ?」
「え…っ?」
平然とした顔で言う好青年。その顔はさっきと変わらず笑みを浮かべていた。
「君の両親から、君が君になった時まで預かっていて欲しいと依頼されたんだ」
聞きたいことはたくさんあった。でもそれよりも頭が追いつかなかった。
好青年の後ろから差す眩しい日光と、急にたくさん使った頭のせいで意識がもうろうとする。どうにか踏ん張ったが、私の体は言うことを聞かずそのまま倒れ込んでしまった。
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