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続きまってます!
泣けてきた
最高です👍❤︎
hrt視点
「若井さん、大森さん、お入りください」
楽屋の外の廊下でうろうろしていたら、呼ばれた。
元貴とほとんど競い合うように楽屋に入る。
ソファーには眠っている涼ちゃんが居た。
「どういうことですか!」
思わず声がうわずる。
「過去の記憶を話して欲しいと言ったところ、2度目の過呼吸を起こしてしまい…。もう少し時間をかけるべきでした。疲労で眠ってしまったのでしょう」
涼ちゃんの額に触れると、まぶたが震える。辛そうな顔。
夢の中なのにね…。
「おかけになってください」
いつの間にか先生が椅子を用意してくれていた。
腰をかけると、先生と顔を合わせる形になった。
深刻そうな顔に緊張する。
「病名はPTSDで間違いありません。過去のトラウマがふとした時やなにかきっかけがあった時に蘇り、発作を起こしてしまう病気です。しかし、日常生活の中で過呼吸を起こしてしまうようでしたらパニック障害や不安障害の併発も考えられます」
涼ちゃんの呼吸を見つめる。
涼ちゃんの学生時代の話を、全然知らないな、と気付く。
「治療法は主に精神療法です。私たち医師やセラピストと会話を重ねることによってトラウマと向き合うというものです。調子の良くない時はお薬も併用していく形になります」
元貴を見ると、元貴も僕を見ている。
不安そうな目をしている。
「今後の音楽活動の方ですが… 少し療養期間を持つことは可能ですか」
元貴がほとんど被さるように言う。
「もちろんです! 涼ちゃんが必要ならいくらでも!」
先生が微笑む。
「理解のある協力的な周囲の環境って、精神疾患の治療に1番大切なものなんです」
元貴が照れたように笑う。
そうだよね、俺たちが不安がってちゃダメだよね。
涼ちゃんを安心させてあげなきゃね。
「今日は1度撮影を中断してご帰宅された方が良いでしょう。そしてどなたか藤澤さんに付き添われてくださると…」
「今日は3人で過ごします」
今日は久しぶりに、3人で過ごそう。
僕は涼ちゃんを抱き上げた。
「んっ…」
涼ちゃんが起きそうな声を漏らす。
3人でゆっくり車へ向かった。