昼の街で見かけた、一人の男の子。
まだ中1とか、それくらいの。
未発達な細い身体。サラサラな黒髪。顔のパーツが全部大きくて、白い肌にそばかすがあった。後から見ても、まるで天使に輝いている。
母親のあとをついていくその子の姿に、一目惚れした。
ただ、尊いと思った。
いてもたってもいられなくて、その子が入っていく店に吸い寄せられるように足を運ぶ。
大人から子供までのサイズを取り扱っている服屋。
少年は可愛らしい容姿に反して、黒いTシャツに小洒落たデザインがプリントかれた服を眺めていた。それもオーバーサイズの。
最近はこういうのが流行りなのだろうか。そんな服を着たところで天使が可愛い服を着ているという評論にしかならないが、思春期の思考というのはよくわからない。
でも、母親に交渉しなくたって、俺ならそんなのいくらでも買え与えてあげるのに。ハンガーごと服を取り、母親の元へ駆け寄っていく天使を眺める。
途端に天使のいるべき場所がここではいけないと思い、心がぐつぐつと茹っていく。
いや、最初から思っていたのだ。
あの天使は自身のものへ来るべきだと。守りたいのに、守りたい人を守る人が自身じゃない不満を。
こんな想いとは幼い頃から味わってきたと言っても過言ではないが、一生離さないと確信したのは今日この瞬間、この天使だけだった。
俺は持っていた携帯電話を取り出して、車の手配を要求する。
「ねぇ、そこの君。ごめんけどさ、この近くにあるケーキ屋しらない?」
自身の命が、この天使に握られる感覚がする。