激しい雨が降る夜だった。
俺は、道の脇で蹲りながら迎えが来るのを待っていた。
迎えなんて…来ないけど…
sho「…ゾ、ム…?」
雨の音であまり良くは聞こえなかったが、確かに今…俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
…前を向くと、そこには、赤いニット帽を被った黄色の服を着た男が立っていた。
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zm「俺…今回は200人やってくるわ!!✨️」
rbr「いやいや…無理やって…」
shp「そろそろマジで死にますよ…?」
1人の男が今日も戦場へと投入される。
zm「大丈夫やって!!前も行けたんやし!」
そう自信を持ったまま、談話室を去った。
zm「やっぱ多いなぁッ……、、」
1人で、100人を相手していた。
刃の音が平原に響き渡る。
zm「ッ…ぐぁ゙ッ…!!…」
背中を切られた。
苦しい悲鳴を上げながら戦い続けた。
そして、…
zm「ッ…はぁッ……」
倒したのだ。
100人…全員を…
体力的にも、出血量的にも、もうもたなかった
そのまま、俺は意識を手放した
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土砂降りの雨の中を駆け抜けてきたから、びしょ濡れだった。
zm「しゃお〜、おれ、みんなにあいたぁい!!」
sho「すぐ会えるからなッ!待ってろ!」
sho「で〜も!風呂!先入ってこい!」
zm「おふろ!いく!しゃお!!✨️」
俺は、シャオロンを引っ張って、風呂場へ向かった。
zm「…ぷはぁッ!✨️…しゃお〜!!」
sho「あーぁー…こら、拭けないで〜」
zm「…ん!…やってぇ…?」
水で濡れてる髪を慣れた手つきで拭いていく。
zm「しゃお、じょ〜ず!…んぅ」
sho「ほいッ!終わり!…みんなのとこ行くで〜!」
zm「しゃお〜!!…だっこぉ!」
zm「しゃお〜…!!✨️」
シャオロンが俺の方を振り向く。
sho「どうしたん?w」
zm「みんなどんな反応しゅるかな〜…♪」
鼻歌交じりで胸を弾ませた。
シャオロンも笑いながら楽しみやな!。と言った。
sho「たっだいま〜!!」
シャオロンが勢いよくドアを開けた。
shp「うるさいっす…シャオさん…」
耳を塞ぎながらそう言う。
zm「しょぴッ!!…」
ニカッっと笑う。
けど…期待した反応は返ってこなかった。
shp「え…誰すか?…シャオさん、子供は連れてきちゃダメっすよ?」
誰?と、忘れられてる様な態度を取られた。
その時、俺は…穴に落ちたような感覚になった。
kn「ガキは帰りぃや。」
しっしっという手振りで追い払うようにした。
zm「みんな…わすれたん…?なんでぇ…ポロポロ」
sho「ゾムッ?!…💦」
驚いたような表情で寄り添う。
大きな手が頭を撫でる。
zm「…おれ…おれぇ…、、ポロポロ」
小さい服で涙を拭う。
啜り声が部屋に響く。
zm「しゃお…へや…いく、、…」
ん…と腕を広げる。
sho「はいよ…!…ヒョイ」
顔を肩に埋めて、部屋を出た。
sho「ごめんなぁ…辛かったよな…」
zm「ん〜ん…。しゃおはわるない…」
首を横に振る。
カーテンが風でたなびく。
sho「ゾムって性格も幼くなったん?」
うーん…と首を傾ける。
zm「…わからん!!」
sho「絶対そうやろ!ww」
2人の笑い声が部屋に籠る。
zm「…コクンコクン…… 𓈒𓏸」
眠そうに首を落とす。
そして、シャオロンの膝の上で寝てしまった。
sho「…ほんま…夢みたいやわ…」
寂しそうで、嬉しそうな声で、ゾムの頭を撫でる。
sho「みんな…忘れてるんやろなぁ…俺も最初分からんかったし…」
ゾムは今、子供だ。
あの時の、元気で、好奇心旺盛の時とは違う。
それが、新鮮で…物足りなくて…複雑な表情で見つめる。
sho「俺が…思い出させたるからな…!」
ニコッと笑いかけて、心に誓った。
すると、ゾムが少し…笑ったような気がした。
パチッと目が覚める。
横にはシャオロンがいて、俺の事をギュッと抱き寄せていた。
zm「…しゃお~…おつかれぇ…」
シャオロンの頭を撫でる。
sho「…んッ……、」
シャオロンが、反応してゴロンと寝返りを打った。
zm「…しゃお~…こっちむぃて…」
寝返りで反対方向を向いてしまったシャオロンを揺らして起こす。
sho「ん…〜?ゾム?…おはよぉ…」
zm「…!!しゃお!✨️おはよぉ!」
嬉しそうに挨拶をする。
シャオロンは、可愛いな〜!…と言ってゾムを抱っこした。
キャッキャッと体の中にすっぽりハマったゾムはフードに隠れながらも、笑顔を見せるのだった。
食堂では、元々いた時の雰囲気が漂っていた。
懐かしい…と同時に、寂しさが感じられた。
zm「みんな…たのしそうだなぁ…」
唇をグッと噛み締めて、笑顔を作る。
sho「…、、」
zm「…わッ……、」
sho「無理しすぎやで?考えこんじゃアカンよ?」
気を使ってくれたのだろう。
それが、懐かしくて、心地よくて、少し…傷ついた。
kn「お〜!!シャオロン!!」
元気良く駆け寄ってくる先輩。
kn「遅かったなぁ〜…どうしたん?」
kn「あ〜…そのガキか?ガキならあっちで食い?」
そう言って、1人席を指差す。
sho「ちょッ…シッマッ…」
ut「せやで〜…。ガキはお荷物や。」
shp「トントンさ〜ん…コイツの飯、作ってやってください。」
トントンッ!…ゾムは少し、期待した。
トントンとは、同級生だったから。
分かってくれると…信じていた。
でも、それはほんのちょっとの期待と、裏切りだった。
tn「はぁ?…なんで俺がガキに作らなアカンねん。それに、好みも知らんし…」
ci「聞けばええやん。」
tn「めんどい…、、」
あぁ…、トントンもそう…思ってたんやな…、
zm「…ッ…」
話を聞き終わる前に、食堂から出ていってしまった。
sho「ぁッ…ゾムッ!!」
シャオロンが俺を呼ぶ声を聞きたくなくて…走って、俺の部屋に向かった。
部屋に着いた…はずなのに…。
そこには、俺の名前が無かった。
部屋を決める時に必ず、分からなくならないように、部屋のドアに自分の名前を飾るのがここの決まり。
俺のは派手だったから、分かりやすかったんに…。
確かに…もう…俺は、
いない存在やもんな…。
声に出す度…泣きたくなる。
子供になったからか、涙脆くなっているのは、気の所為だろう。
なんで、戻って来たい…なんて思ったんやろ…。
zm「きたい…してたからかなぁ…。」
一滴の水が、部屋の前の床に落ちる。
そこから、何滴も…何滴も…溢れ出す程…泣いた。
os「あれ?ここに、子供なんていためぅ?」
聞き慣れた口癖。
振り向くと、赤いコップ型の帽子を被った男と、バツの印を付けた男が立っていた。
…もう期待しない…
そう決めた。ゾムに”期待”なんて言葉は嘘にしかならないのだ。
os「子供はここにいちゃダメめぅ〜」…ヒョイ
zm「…ぁッ……。」
俺は首の襟袖を掴まれた途端、悟った。
捨てられる。と
俺は慌てて、
zm「いやだッ!!…捨てないで…ポロポロ」
振り絞って出た言葉がオスマン達に聞こえたかは、分からない。
でも、捨てないで欲しい。
忘れられてるとしても、離れなくないのだ。
この、思い出の場所から。
ht「…捨てる…なんてことはしない」
俺は、パッとひとらんを見た。
ht「ただ、邪魔だけは、するなよ」
ひとらんと、オスマンだけはシャオロンを除く、みんなとは違った。
でも、思い出してくれた訳じゃない。
それが、俺のフックが外れる、壁となった。
【shp side】
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心に空いた黒い穴。
埋まることの無い、真っ黒の穴。
これが埋まることなんてない。
何をしてもダメだったから。
出来てから、何年経つだろう。
5〜6年だろうか。あれ、その時、誰か、大事な人が…。
ズキッ…
あぁ…まただ…思い出そうとすると、痛くなる。
やめよう…。考えるのを…
先日、シャオさんが、小さい子供を抱えて、帰ってきた。
正直、邪魔だ。
子供なんて、自由に歩き回って、騒いで、。
ほんっと…羨ましい…。
すると、子供が俺の名前を呼んだ。
zm「しょぴ…!!✨️…」
俺、教えたことないんだけど…。
俺は、誰か分からず、誰っすか?と言った。
その途端、子供が、絶望したような顔で、唇をグッと噛み締めていた。
その後、コネシマさんや、大先生に冷たい態度をとられたあと、泣きながら、談話室を出ていってしまった。
その時の、子供の背中に、少し、懐かしさを感じた。
それから数日後、やけに心が軽い。
気がつくと、穴は無くなっていた。
突然のことに、俺自身もビックリしていた。
でも、なんで急に…。
そういえば、あの子供と会った日からだ。
あの子供が、自分を助けてくれたんだ。
空いていた穴は、緑色のペンキで塗られている。
…緑…ッ?…
なんで、急に緑なんて…。
その瞬間…俺の中に、全ての記憶が入ってきた”様な気がした”。
あの、ギザギザした歯、フードで見えない目元、緑色のパーカー、あれは…。
shp「…ゾム…さんッ…ポロポロ」
なんで、忘れてたんやッ!!
ゾムさんは5年前の戦争で死んだ。
そっからだッ…俺の中に穴が出来たのはっッ…
shp「なんでもっとッ…早く気が付かなかったんやッ…グッ」
こんな自分に嫌気が差す。
遊ぶのが大好きで、ヤンチャで、仲間思いで、尊敬できる…大好きな先輩をッ…。
俺は…ッ…。
ッ……行かなきゃッ…。
shp「行って、謝らな…気がすまんッ!」
涙を拭って、俺はシャオさんの部屋に向かった。
shp「…はぁはぁ…おった…。」
そこには、ナイフをくるくる回して遊んでいるゾムさんと、それを止めるシャオさんの姿があった。
shp「…ッシャオさんッ!!」
俺は思いっきり、シャオさんの名前を呼んだ。
すると、
sho「うぉッ?!…ショッピくん?!どうしたん?…ゾムに何か用か…?」
zm「…ヒクッ……サッ…」
俺を見たゾムさんは、すぐにシャオさんの後ろに隠れてしまった。
そんなゾムさんに、歩み寄る。
そして、その小さな頭を撫でた。
shp「…すんませんでしたッ…ゾムさんッ…」
俺が、謝ると、ゾムさんは、心配そうな目で俺を見た。
zm「…しょぴ〜?いたいの〜?」…ペタペタ
怪我をしたのかと勘違いされたのか、頬を触ってきた。
shp「…ぁの…いや、ちゃうくてッ…」
sho「…ゾ〜ム!」
zm「んぅ?…どうしたん?しゃお〜!」
シャオさんは俺を見た。
力強い目だった。
sho「ショッピは思い出したんちゃうかな?」
その時、チラッとシャオさんが俺の方を見た。
『ほら、言え』
とでも言っているようだった。
shp「ッ…ゾムさんッ!!俺…思い出しましたッ!!…ごめんなさい…ポロポロ」
zm「…💦しょ、しょぴ〜?💦」…ナデナデ
何故か、俺が撫でられている。
でも、今はそれよりも…
shp「…ギュッ……、、」
zm「んわッ!!しょぴ〜?くははッw」
ゾムさんの笑い声…久しぶりに聞いた。
shp「…ギュッ…ギュー」
zm「んぇッ?!しょぴ〜いたい〜w」
shp「あッ…すみません…」…パッ
俺は、すぐにパッと手を離した。
すると、手をバッと広げた。
zm「ムー…だめとは、いってない!!」
辞めないで、とばかりにアピールしてくる。
それが、とても、先輩とは思えなくて…愛らしかった。
shp「…分かりました!…ギュー」
zm「んへへッ〜…♪」
ギュギュっと、体を寄せる。
こんなこと、前はしてなかったってことは、全体的に幼くなっとるんか!
shp「可愛いっすね〜♪ゾムさん…!」
俺が、そう言うと、振り返って、こう言った。
zm「やろッ!✨️おれはかわいいんや!」
手をパーっと広げて、いかにも、子供らしい。
可愛い。
sho「ほら〜w行くで〜!」
保護者目線で、見てたシャオさんが、ようやく喋った。
shp「ゾムさん!!怖くなったら、俺のところにきてください!!✨️」
zm「…うんッ!!…」
sho「でも!一番信用されとるのは俺だし〜!!」
zm「しゃお、いちばん!!」
shp「なッ!!俺だって、今から仲良くなって、一番になりますから!!」
zm「おれのいちばんは、みんなぁ!!✨️」
shp「…ッ…はぁッ…可愛すぎません?」
zm「んへぇッ!✨️…」
俺の中の欠けていた記憶が、今、しっかりと、元に戻った。
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ごめんなさい🙏
なんか、読み漁ってたら、ノベルのこういう系に感動して、泣いちゃって。
これも、連載していきたいです!
連載中のやつ、多すぎますよね汗
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