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ー???年前ー
「じゃあ,行ってくる。…一人で今日も留守番できるか?」
「うん。私もう16だよ?腕無くったって私なんでもできるから!」
俺たち兄妹は人一倍仲が良かった。多分,だれにも負けない。けど,俺たちは幸運であり不幸であった。産まれた時から片目が見えない俺と,産まれた時から両腕がなかった妹。そのせいで両親からは見捨てられ,孤児院で育った。そこでも愛情は貰えず,16になってすぐ出て行った。そんな運命に見舞われても,妹だけは守ってやろうと思った。
「それじゃ,今日は誕生日祝いでケーキ買ってきてやるから。」
「わーい!」
元気な妹に見送られて俺はバイト先のコンビニに向かった。
行く道中でふと太陽を眺めてみた。あの太陽は妹の笑顔そっくりだ。その笑顔で誰かを照らしている。そう思うとバイトでの嫌なことだって忘れられた。
「…おはようございます。」
「今日は品出し行ってくれるかな。」
「はい。」
この前まで俺はレジ打ちだったのだが,俺が怖いという苦情が殺到して品出しに回ってしまった。どんな苦情だよ,と思ったがまぁ,子供も大人もこれは怖いだろうな。白い目に不愛想な声と顔。レジ打ちにいてはいけない人材。
「いらっしゃいませ…」
ここのコンビニは客が全然いない。一人いれば凄い…ぐらいで本当にがらんとしている。
「あ,そうだw」
店長がまたいつもの嫌味モードで俺に話しかけてきた。
「君そういえば今日来なくていいんだった。明日も,明後日も,もう毎日来なくていいよ。」
今日はいつもと違った。クビになった。このバイトが無くなれば俺はどうやって仕事していけばいいだろう。雇ってくれる場所なんてないのに。
「品出し終わったら帰ってね。」
颯爽と消えていく店長と絶望して手が動かない俺。妹にこのこと言ったらなんていうかな。あいつ,結構強気だから店長襲いに行くかもしれないな。それはそれで嬉しいけどそんなことしたらあいつが務所行きになっちまう。
「はは。俺,だっせぇな。」
こんなことで絶望したら明日が無くなっちまう。前向きに,生きようって約束したのに。そうだ,ほかにもあるかもしれない。だからこんなとこ早く出ちまおう。
「じゃ,さようなら。」
ケーキを取り,カウンターに金を置いてすぐにコンビニから出て行った。退職祝いと誕生日祝いで結構いいケーキを買ってきた。家に帰ったらなんて言おうかな。
「ただいま。」
浮かれながら帰ってきて,すぐに妹を呼んだが返事はなかった。
「寝てるのか?」
リビングに行くと妹が寝ていた。こんな床で寝ていたら風邪をひいてしまう。抱き上げようと体を持ち上げると赤い液体が流れ出てきた。周りを見るとやけに荒れている。もしかして泥棒でも入ってきた?口封じに妹を〇した?どうして?なんで,なんで死ななきゃいけなかったんだ?
「優。なぁ,起きてくれ。今日,誕生日だろ?なぁ,起きてくれ。」
指が少し動いた。
「__ちゃん。__がと。__ね?」
よく聞こえない。何かを言っているのはわかる。返事をしようとするが,どうしても声が震えてはっきり話せない。
「ちょっと,___いかな。」
「痛いどころじゃないだろ…。」
「__す_きだよ。に_ちゃん。来世でも,妹が,良いなぁ。」
どんどん妹の体が冷たくなっていく。
「__し,頑張ったんだよ。」
「…ごめん,ごめんな。」
俺は謝ることしかできなかった。もし,俺がバイトなんて行ってなかったらこんなことにならなかったかもしれない。もし,自分がこうなれば妹は生きたかもしれない。
そして,妹の体が完全に氷のようになろうとしていた時だった。
「!」
頭に物凄い衝撃がやってきた。視界が反転している。あぁ,俺も,やられたんだ。死ぬんだ。頭がすごく痛い。それでも妹の手は絶対に離さなかった。
『次のニュースです。昨夜,___の住宅に強盗が入り込み,新島結城さん20歳とその妹の優さん16歳が頭を殴られて死亡しました。また容疑者の___』
来世でも兄妹でいられますように,そう願った末,20で俺はこの世から姿を消した。