いつからだろうか
仲間たちの声が枯れ始めたのは
人間とロボット
一緒に歳をとる事が出来ないことは理解しているつもりだったはずなのに
毎日銃を持って走り回ったことがつい先日のように思えてしまう
気づけば一人、また一人と別れを告げた
ロボットに感情など湧かないと思っていたのに
仲間と別れを告げるたび
言い表せない感覚に陥った
目の前にいる最後の仲間の手を握る
「、、ケイン」
「どうしましたか?」
この声が貴方に届いているかも分からない
無機質な病室に沢山繋がれたチューブ
そこに眠る一人の老人
まさか最後に看取るのが店長だと思いませんでした
医者曰く
店長の耳や目はもうほとんど機能していないそうで
流動食を消化できる力もないため、点滴のみで生きている状態です
たまにうわ言のように私の名前を呟きます
酸素マスクごしに聞える曇った声
年十年も呼ばれた私にはどんなに小さくても聞き取る自信があります
こうして呼ばれたのは1週間ぶりでしょうか
今日が医者に通告された最後の日です
私は悪いロボットです
医者に選択を迫られた時
貴方を楽にしてあげることも出来たのに、延命する道を選びました
店長の身体は機能が停止している臓器がほとんどで
死んでいないことが奇跡だそうです
これ以上は手の施しようがない
そう言われました
なのに私は無理やり伸ばし続けてきました
今日が医者に提示された最後の日です
今から店長に施された延命治療の装置が外されます
「店長、最後にもう一度だけ名前を呼んでくれませんか」
貴方に改造されて始まった私の物語は
貴方の手で終わらせて欲しいのです
店長の細い腕を持ち節くれだった指を首に当てる
皆さんを看取った後に決めていたことです
首元にある活動停止ボタン押せば
活動停止まで後24時間と警告が聞こえる
警告で揺らぐ視界の中
微かに聞こえた
「ケイン」
本当に店長が言ったのか
私の思い込みなのかは分かりません
貴方に会って
868になって
感情に触れて
思い出を作って
私はこの世界で一番恵まれたロボットです
店長を皆さんの元へと埋葬した後
私もすぐにそちらに行きます
また逢う日までおやすみなさい
コメント
1件
ガチ泣きしました…。 確かにロボットと人間ってこういうことですよね…。 辛い😭😭😭