ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピ……
「うぅぅ…」
眠い。まだ寝かせてくれ。
近くに置いてあるスマホの時計を見ると朝の6時を示していた。
(でも起きないと遅刻する…)
寝起きの目を擦って脳に起きるように言い聞かせる。
ピコンっ。
「ん…」
誰だ朝からメッセージ送ってくんのは。
『おはよう、みほり。今日は電車に乗り遅れるなよ!』
むっ。
随分とからかってくれるじゃないか、と思いつつも昨日寝坊して電車に乗り遅れたのは事実なのでとりあえず布団から出ようと思う。
1階には母さんが居た。これから仕事に行くらしい。
「おはよう、母さん仕事行くからね」
「うん…行ってらっしゃい」
顔を洗って朝ご飯を食べる。起きてから学校行くまでの時間が流れるように進んでいく。これは僕の準備がノロイっていうのもある。
そして家を出て40分後。
学校に着いた。
今日はなんだかいつもより教室棟が騒がしい。
転校生が来るんだって。
えっ、どこの子?
女?男?
さあ、それはわかんねぇよ。
そんな声が聞こえた。
「転校生だって、みほり。何か知ってる?」
「知らないよ。賢太も知らないんだ」
「うん。担任になんも言われてないし」
「ふーん」
「興味無さそうだね」
「もし僕のクラスに転校生が来たとしても、関われるわけないだろうし」
「そんなこと言わずにさあ…。あ、じゃあ教室こっちだから、またお昼にね!」
「うん、また」
キーンコーンカーンコーン
朝のHRが始まる。
まず一番に担任が一言告げた。
「今日からこのクラスに入る転校生がいる、入ってきなさい」
僕のクラスだった。
「軽く自己紹介してくれ」
「はじめまして。藤原うとです。慣れない環境で不安も多いけど皆さんと馴染めるように頑張ります。これからよろしくお願いします」
彼はニコッと笑った。
第一印象。イケメン。凄くかっこいい。
背が高くて、スラッとしてて、顔立ちも整ってる。この人、モテるんだろうなと思った。それと同時に僕が関われるような人ではないことを悟った。
「で、お前の席なんだが…」
「深山の隣な。あの白髪の男子のところだ。」
え、少女漫画かなにか?
転校生が隣に来るとか、そんなことある?というか、僕が隣で大丈夫?
しかし、藤原うと、と名乗った彼は僕がそんな事を考えてるとは知らず、席に着いて挨拶してくれた。
「よろしくね、深山くん」
「はひっ、よろしくお願いします…」
大変なことになりました。
お昼休み。
僕らは教室に集まっていつも通りお弁当を食べていた。他愛もない話をして盛り上がっていたとき、明が聞いてきた。
「そういえば、みほりのクラス、転校生が来たって聞いたけど本当?」
「あー…うん、そうだよ」
「どんな人だった?」
続けて賢太も聞く。
「イケメンだったよ、ものすごく」
「「へぇ〜」」
「隣の席になっちゃった」
「それ大丈夫?」
「みほり人見知りだもんな」
「ちょっとやばい。しかも初日から周りに人が集まってるからちょっと席外すとすぐに座れなくなる」
「どんまい」
「陽キャ怖い」
お昼ご飯も食べ終わり自分の教室に戻った。
やはり、藤原さんの近くには人が集まっていて、自分の席には戻れそうになかった。
アイツらのとこ戻って暇でも潰そうかと考えていると、僕に声を掛けてくれる人がいた。
「先輩!今1人ですか?」
「相田さん」
後輩が話しかけてくれた。
この人は委員会の後輩、相田美香さん。
1学年のマドンナで周りの人気も高いのに、こんな僕にもたくさん話しかけてくれる優しい後輩。
「ちょっと、自分の席に座りづらくて…」
「あー、なるほど…」
「暇でも潰そうか考えてたとこ」
「じゃあ私とお話しましょ!」
「僕でよければ…」
それから、またとりとめない話とか世間話とかで時間がどんどん経っていった。
いつの間にか5限が始まる時間に近づいていたので、話をきりあげた。
教室に戻ると藤原くんが話しかけてくれた。
「ごめんね、深山くん、人が集まりすぎて席座れなかったよね」
「あ、全然大丈夫、気にしてないよ」
どうやら気にしてくれていたらしい。
このイケメンの彼は、気も遣えるらしい。
そしてまったく関係ないが、僕はこの日常はしばらく続くのだろうと悟っていた。
転校生が来て2週間が経った。
彼はあっという間にクラスに馴染み、いわゆる一軍という立場を確立していた。
僕はというと教室では席が占領されているので廊下に出ることが多くなった。
ある日の出来事だった。
昼休みの移動教室で一緒に行く相手がいないので1人寂しく歩いていた。下を向く癖がある僕は前から来る人の気配に気づけず正面から思い切りぶつかってしまった。僕はあまりにも貧弱なので尻もちを着いてしまった。
「深山くん?」
「あっ」
顔を上げると、藤原さんが立っていた。
「ごめん、前見てなくて…」
「大丈夫、こっちこそごめんね」
そういうと彼は手を差し伸べてくれた。
あ、手結構ガッチリしてる。カッコ悪く痩せた僕の手とは大違いだなと感じたと同時にちょっとへこんだ。
「ありがとう」
僕なりに愛想のある笑顔を作りお礼を行ってそのまま教室に向かった。
「かわいい…」
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