これは、僕が小学生だった頃の話。
とても蒸し暑い時期だった。
僕には兄が2人いて、いつもは兄達と一緒に学校から帰っていた。
『あ、大森〜』
「はい、なんでしょーか、?」
『悪いんだけどさ、ここの提出物…あの教室に運んどいて欲しいんだけど、いい??』
「あ、、はい、わかりました、!」
が、その日は先生から雑用を頼まれてしまい、その事を伝えると兄達は先に帰ってしまった。
雑用を済ましているうちに日は沈み、家に帰る頃には夕方になっていた。
不満に思いながらも、僕はひとり、とぼとぼと家路についた。
辺りは暗く、ぬるい空気がじめっとまとわりついてきて気持ちが悪い。
夕暮れの住宅街は何故かやけに静かで、まだ日は沈み切っていないのに、僕はなんだか怖くなってきて、小走りで家に帰った。
10分ほど歩いて家に着くと、なぜか兄達はまだ帰ってきていなかった。
家じゅうの電気は消えたままで、不覚にも薄暗い家に1人きりになってしまった。
こうなると、何となく怖かった気持ちは膨れ上がり、全身の感覚がピリピリと周囲に気を張り出した。
「あの2人…寄り道でもしてるのかな、?」
「…誰でもいいから早く帰って来ないかな、」
そんなことを考えながら、急いで部屋の電気をつけようとした。
< プ ル ル ル ル ッ >
その時、何処かから電話の着信音が聞こえた。
「お母さん、かな…?」
「それとも…兄貴達が友達の家に寄って、それで掛けてきたのかな、??」
既に相当ビビっていた僕は、電話でも何でもいいから、誰かの声を聴いて安心しようとした。
だが、当時の僕にはそれが出来なかった。
聞こえている着信音は家の固定電話ではなく、ケータイ電話のようだった。
音のする方を探したが、全く見つからない。
< プ ル ル ル ル プ ル ル ル ル ッ ...>
それでも音は聞こえ続けている。
「なんで、、?」
「近くにあるはずなんだけどな、」
結局、ケータイは見つからず音が止まってしまった。
「なんの用だったんだろう、??」
電気をつけるのも忘れていた僕は居間に戻って兄達の帰りを待つことにした。
< プ る る ル る ッ ! >
恐怖心を和らげるためにベースを弾こうと思い ベースに手を掛けようとすると、急に聞こえる音が大きくなった。
「えっ!?」
と思って音のする方を見ると不可解なことが起きていた。
家の壁に、ちょうど子供の手が入るであろう大きさの、穴が空いていたのだ。
だれかが殴って開けたような、母が見れば、すぐに僕達が怒鳴られるような穴。
「…こんな穴あったっけ、?」
「何で今まで気づかなかったんだろ、」
音は…その穴の中から聞こえている。
壁の中をのぞくと、暗くてよく見えないが、壁や壁材の隙間にナニカが挟まっていた。
僕は勇気をだして手をつっこむと、音が鳴っているソレを取り出した。
それは、母が使っているものよりも古い、二つ折り型の携帯電話…いわゆるガラケーだった。
それが壁の中からずっと、着信を告げていたのである。
ガラケーの背に通話相手が表示されていたが、名前を見ても文字化けしていたのか、難しい感じだったのか…子供の僕には読めなかった。
僕は変に思いながらも、ガラケーを開き、耳に当てた。
「___。」
全身が硬直し、動転していた僕はハッとした。
《おい、何してんだお前。》
どれほど経ったのかようやく兄が帰ってきた。
安心感で僕は大号泣し、今起きたことを矢継ぎ早に説明した_
_が、兄達は、
「「そんなわけない」」
「「俺達はずっと家にいたし、暗くなってきたから家じゅうの電気もつけてたぞ。」」
ふと壁を見るとあの穴はなく、僕が落としたあのガラケーもなくなっていた。
その後も、証拠もない子供の戯言には、誰も取り合ってくれなかった。
結局、信じてくれる人は居らず、
”疲れて帰って玄関で寝てしまっていたのだ”
ということになった。
でもあれは、夢ではなかった。
ある一説によると、夕暮れ時は不思議なことが起きやすい時間帯であるそうだ。
今でも、夕方に1人で居ると思い出す。
いつも過ごしている部屋の壁にあれは、今も埋まっていて、今にで
< プ ル るる るッ ... >
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𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝ ♥50
コメント
6件
こわ 、 . . !! でも 、 好き ぃ ー !!