「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつもの時間通りに家を出て行ってきますと言って少し歩くと
「ん、おはよ!」
親友で幼馴染の律と集合。
「おはよ」
今日は特に何の用事もない日だが律は少しいつもより楽しみにしているような表情だった。
気になったから聞く。
「今日なんかあるの」
「ん?特に何もないよ、ていうか逆にないから嬉しいんだよ」
多分歯医者の予定があったけど何かしらの問題でなくなったってことだと解釈して納得。
「よかったじゃん」
「まあね」
こんな短い会話なのにもう学校に着いた。
教室に着くと僕とは違って人気者の律はすぐクラスメイトに声をかけられる。まるで律が1人で登校して来たみたいじゃないか。
だけど律は優しい。普通ならその輪っかに入るけど律は僕を気にかけてくれてるのか僕の机まできてくれる。
正直勿体無いと思う。こんな陰にいる僕なんかよりももっと仲良くするべき人がいると思う。
「なんでわざわざ僕の机に来るの」
「理由いる?」
「いらないかも」
「はっなんだよ」
軽く律が笑う。律は顔が整ってて笑うとき眉が下がる。僕はこの時の律の顔が大好き。
さりげない話をして朝の会が始まる前にみんな席に座る。
今日は特に用事がないと先生が報告して教室を出た。先生がいなくなるとすぐ賑やかになる教室も嫌いじゃない。
次は移動教室だから持つものを持って準備をしてたら律が一緒に行こうと誘って来た。
断る理由もないので一緒に行くことにした。
律が僕の隣にくるの前より増えたな。
「ねーねー今日功が前新しく買ってた漫画見せて」
「どの漫画?」
「えーとバトル系のやつ?」
「あーあれか、いいよ」
「ありがと!!」
この会話が終わりそうなとき僕たちは今3年生の階にいた。授業する教室がここにあるからだが、僕たちはこの3年生の階が好きじゃない。
「だる」
「?」
律が急にだると言い出す。僕は焦って周りを見渡したら3階が嫌いな理由のあいつらがいた。
あいつらとは僕たちが入学してすぐの時なんでかはわからないがからかって来たりしてくる。年上なのに酷いことをしてくるから僕たち2人はここを避けてるんだけどやっぱり会っちゃう。
「せいぜい功くんのお世話がんばってね?w」
あってすぐにちょっと変な日本語を喋った。 この時律が僕の表情をうかがっていた、僕の出す顔を見て安心していた。
「言われなくても喜んで世話するから」
落ち着いて煽りを帰す律。昔もいつもこうやって僕を守って口論してたな。
「はっおもんな。んで律くんは調子どうよ?wwwやっぱ今日もね」
「調子?今日もって?」
意地悪な先輩が言う単語が本当に少し引っ掛かった。
「別に」
律はすぐそう言って僕の手を引きながら教室に急足で行った。
本当に日常会話で聞くような単語が今の僕にとってはなぜか重要に思えた。
「さっきの調子がどうとかってどういうこと?今日もねとか」
「別になんもないけど、ただの嫌がらせだよ」
嘘をつく時の律は絶対に目を合わせようとしない。わかりやすい人間だと思う。
律の答えにこれ以上質問を重ねると機嫌が悪くなりそうなので一旦質問攻めはやめた。
目的の場所について大人しく授業が始まる合図の鐘を待つ。
授業が終わって教室に戻る。ここまではいつも通りだった。
教室にもどって他の授業を受けてあっという間に放課後になった。今日は律と漫画を見るから多分このまま僕の家に寄ると思う。
「りつ、行こ」
「ごめん、急用できた。今日行けない。 」
「え?」
律が約束を破るのは少し珍しいことだから正直驚いた。
「ごめん」
「なんで?今日の朝律から誘って来てたじゃん。僕より後から約束した人との方が大事なの?」
僕もこう言う時落ち着きがなくなって少しメンヘラ化してしまう。律はわかってるはず。
「功との約束の方が大事だけど、でも今日は、その、」
「じゃあわかったよまた今度ね」
もちろん納得してない。僕より大事な人がいることを教えてくれないなら自分で確かめるまでだ。律もいつもなら僕は最後まで粘るけど今日はあっさりと話を切ったからびっくりしていた。
その後僕はすぐ教室を出て正門の方で不審者のように顔を出して律が出てくるのを待った。
少ししたら律が出てきた。どこに行くかと思ってこっそりついて行くともう使われてない倉庫に入った。あそこはヤンキーとか問題児たちがたまってて意外と綺麗な場所になっているところだ。
律はもしかして不良などの仲間なのかと思って僕は少しヒヤヒヤした。その倉庫を見るための窓は全部で4個あってそのうちの一箇所は外からは多分誰にもバレない位置にある。僕はそこから本当に少し覗くことにした。
「よいしょっ、と」
見てみたら律はあの意地悪な先輩の人たちと話をしていた。驚いたけどそれよりも何を話してるかが気になって心臓の鼓膜を撫でた。
意地悪な先輩の1人がチラチラ周りを見ていて僕が覗いてる窓を見て目が合うと思ったから本能ってやつで頭を下に下げた。
「くそ、あとちょっとなのに」
そこからは見つかるのが怖くて覗くのをやめた。明日律のことを聞いてみようと思う。今ここで冷静にならないといけないけど1人で帰るのは少し久しぶりでさっきのこともあったしなんか怖かった。
家に帰って明日律に聞いてみようと変に決心して寝た。