✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。✻*˸ꕤ*˸*⋆。
irxsnmmn注意ペア VI×IV (黒×桃)
(赤との絡みあり)
IV「」
VI『』
Ⅰ 〚〛
身長・年齢変更 女体化の要素を含みます
IV→165cm→170cm 22歳→28歳
VI→174cm→180cm 18歳→24歳
苦手な方地雷な方は自衛お願いします
また「nmmn」という言葉を知らない方は1度物語を閉じて頂き調べてからの 閲覧をおすすめします。
(本人様の名前 グループの名前は出さないでください。お願いします)
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カフェラテ片手に、授業内容を作成する職員室には、決まって生徒が教師の仕事の邪魔をしに来ることが多い。
面倒くさがる教師、仲良さげに話す教師、昼食を取り上げられ肩を落とす教師が居たりと反応は様々だ。
その教師の中に勿論俺も含まれている。
まぁ、俺の場合は邪魔というよりは……
……呼ばれたみたいだからもう行くね。
「……ふぅ、ー午前の資料作りは終わりっと…」
騒がしい職員室で黙々と、資料作成をしていた俺は書き終えた文字列に、目を通してからエンターキーを押す。
長時間座り続け凝り固まっていた体をほぐす為に、その場で伸びをする。
「……今日も今日とて、職員室は騒がしいなぁ…」
入口付近で溜まって騒いでいる生徒達の中に
見知った女子生徒が居ることに気付く。
╴嗚呼、煩いと思ったらもうお昼か。
時計で時刻を確認し終え、散らばった書類類を片して途中、声をかけられる。
明るく澄んだ声に、机に向けていた視線を彼女に移す。
「獅子尾さん態々迎えに来なくてもいいのに…」
『ないこ先生が不摂生気味やから、うちが居らんとご飯食べとらへんやろ』
「……」
ぐうの音も出ない指摘。何か言い返そうと思ってもその通り過ぎて何も言い返せない。
黙ったままの俺を見て女生徒は呆れながら、口を開き、小言を続ける。
『食へんかったら身長ちっこいままやで。ないこ先生、生徒よりちびでええん、?』
「…獅子尾さんにとっては、チビでも俺はそこそこ高い方だもん」
『ないこ先生は…とか気にせんもんな』
ボソリと呟いた言葉を聞き取れなかったけれど、獅子尾さんが言いたいことは何となく分かる。ほんとーに何となくだけど…
獅子尾さんは女の子にしては、そこそこ背丈がある方。
(こう言うと差別だって言われるかもだけど…)
_獅子尾さんは容姿端麗で品行方正な生徒だけどなぁ。
鴉羽色から段階的に染めあげられている伽羅色の髪も、新雪の肌も、珊瑚色の唇を持つ彼女の雰囲気は柔らかい。
「職員室で話すのは終わりにして、今日は何処で食べよっか?」
『んーお昼頃は何処もいつも人多いから…中庭行こ、ないこ先生?? 』
ずいっと顔を近付けて嬉しそうに、話す獅子尾さんの顔から目を逸らし、持っていたバックに手を伸ばす。
「獅子尾さん…荷物持つよ。」
『、?ないこ先生自分で持てるよ。はよ行かな中庭も人多くなってくるからはよ行こっ〜』
「…うん、早く行こっか」
隣を歩く獅子尾さんの歩幅に合わせながら職員室から出て人通りの少ない中庭に向かう。
─本当…優しい子だよね。
『ないこ先生最近は食事しとる、?』
「………一応食べてたよ、?」
『…カフェラテは食事には入らへんよ』
そう言ってから俺が手に持っていたカフェラテを取った後、優しく頬を緩める。
「獅子尾さん俺の朝ごはん返してよ。先生のご飯取り上げる生徒は獅子尾さんくらいだよー?」
『うちだけでええの。 』
そう言い切る獅子尾さんの表情は何処か寂しげで、何も聞かないでと拒絶されているみたいだ。
「今日の中庭は涼しいねー近くのベンチに座って食べよう〜」
『ないこ先生、走ったら転ぶからゆっくり歩きぃや〜 』
衣服を掴まれそのまま獅子尾さん側に引っ張られる。引っ張られた後は獅子尾さんに怒られると思って身構えても獅子尾さんからのお説教が、中々来ない。
─怒られたいって訳じゃないけど…
「獅子尾さん首根っこ掴まれたままだと苦しい…」
『もう走らへん、?』
「走らないから離してください」
獅子尾さんに首根っこを引っ張られるといつも首が締まる。意図的にというよりかは、引っ張ったら首が締まっていたという方がいいのかな。
─単純に獅子尾さんの力が強いだけだけど。獅子尾さんとは 力の強さも、背の高さも、足の大きさも、歩幅も違う。
『ないこ先生そろそろお昼食べよう〜 今日はデザートも持って来たよ』
「…あ、獅子尾さん座る前に、ハンカチ敷くから少し待っててね〜」
ベンチの埃を払ってからズボンのポケットから取り出したハンカチを敷いてから、ベンチに座る。
─今日はブランケット持ってきて正解だったかな。
獅子尾さんが寒くならないようにブランケットを膝にかける。
背の高い獅子尾さんがスカートを履くと、裾が長いスカートも短くなってしまう。
─あ、髪解けてる。
気付いた時には口が勝手に開き、獅子尾さんの柔らかい髪に触れる。
「獅子尾さん、少し触るから動かないでね」
解けた紙の束を三つに分け三つ編みを作る。三つ編みにした束に毛先を足す。 繰り返し作った三つ編みを髪ゴムで結び、耳元にピンで留める。
結ぶ時に触れた耳の柔らかさも金木犀の甘い香り、獅子尾さんだから魅力的に感じる。
「はい、終わりっ〜!!遅くなってごめんね。お昼食べよっか… 」
ただてさえ時間の少ない昼休みを髪の結び直しで、奪ってしまった罪悪感が、心に重くのしかかる。
『急がんでもまだ時間あるよ。ないこ先生いつもの仕事癖出とるよ』
「……」
『うちと居る時くらいは、ゆっくりしようよ』
膝をぽんぽんと叩いて『少し寝転がろってから食べよう』と口にする。
促されるように手を引かれ獅子尾さんの膝に頭を乗せ、ベンチに寝転がる。
「…ん、っ…っ、っ…獅子尾さん暖かい〜 擽ったくない、大丈夫?」
『うちは大丈夫。そのまま寝てええよ…時間なったら起こすよ 』
目元の隈を指の腹でなぞるように触れて、 心配そうに眉を下げる。
寝不足気味で、無理している所を、獅子尾さんには簡単に見抜かれてしまう。
暖かい体温、柔らかい太腿、獅子尾さんの柔らかく甘い香りがする髪に瞼が下がる。
『…おやすみ、ないこ先生』
頭を撫でる手が心地良くて、眠っているにも関わらず頬がふにゃりと緩む。
『っふふ…可愛い』
「…」
─今何時だ。
あまりの心地良さに意識を失ってからどれくらい寝ていたのだろうか。
体を起こそうと視線を上に向ける。
『ないこ先生おはよう』
「獅子尾さんおはよう。膝借りてごめんね…お陰様でよく寝れました…」
『先生が寝れたなら良かった。起きたことやし、顔洗ってくる?』
付近にある手洗い場を指差して提案する獅子尾さんの言葉に、慌てて体を起こす。
「涎垂らしてないよね…獅子尾さんの太腿汚れてない?」
『汚れてへんよ。それよりないこ先生喉乾いてへん?』
「…少しだけ」
『入れるから待っててね』
ベンチから立ち上がってテーブルに並べているペットボトルを手に取ってグラスに注ぐ。
小走りで戻ってくる危なっかしさに視線が逸らせない。
─転ばないかなぁ…
『…?先生お茶置いとくよ…』
「うん、ありがとう。俺のせいで遅いお昼になってごめんね」
『三十分だけ寝とっただけでうちはもっと遅い時間に食べるから謝らんでええよ。』
「……でも時間は有限だから獅子尾さんも午後の授業ある…のに…迷惑かけてごめん。」
弱音を吐くのも、誰かに寄りかかるのも、人前で涙をこぼすことも、獅子尾さんの前でしか出来ない。
自虐的な発言をすると否定はしないけれど自分のことを悪くいうのはやめて欲しいと強く伝えられることが多い。
『ええよ。授業よりないこ先生の方が大切やし、…うちは全然気にしてへんよ。でも単位が足りひんかったら困るから授業にはきちんと出るからね。 』
優しく頭を撫でる温かさに、ほっとして溜め込んでいた息を吐く。
「ごめん…」
自責の念に気圧されて自然と涙が流れる。
謝られても反応に困ってしまうなと思い、服の裾で涙を拭う。
『謝らなんでええって…。先生早く 泣き止んで笑った顔見せて』
「………う、ん…」
触れる指が、息遣いが、柔らかい肌が、心地いい。 泣き止むまで頭を撫でる獅子尾さんの肩に寄りかかる。
『…っ、…ん…ないこ先生くすぐったい〜』
「…………ごめん…少しだけ肩貸して…」
『 …少しだけですからね』
お弁当箱を取り出す獅子尾さんに視線を向ける。しなやかなな指でテーブルクロスを敷き、昼食の準備を終えると俺の髪を優しく撫でる。
『…ないこ先生サンドイッチとおにぎりあるから食べたい方言ってね。』
手の込んだおかずに、彩りがいいサンドイッチやおにぎりに、小さく形成されたケーキ、クッキー等の焼き菓子が、段を分けてお弁当箱に詰められていた。
その中から一際小さいサンドイッチに手を伸ばし、口に運ぶ。
「美味しい……サンドイッチ久しぶりに食べた気がする」
『…食べられそうなら食べぇね。何個かは手伝ってもらったけどサンドイッチはうちが作ったんよ。ないこ先生が食べられるん分からんかったから色々作ってみた 』
にこやかに話す獅子尾さんの話を聞いてふと気になったことを口にする。
「こんなに作ったのはいいけど… 獅子尾さんって一人暮らしで朝はバタバタしてるって言ってなかった、?」
『…最初の頃は髪の毛結ぶのに時間かかっただけで今はバタバタしてへんよ』
食事をさせようと 工夫して作られた料理には 人を気遣う思いやりがある。
市販品に頼るのも、手だと思うけれど栄養面を気にして全て手作りする気力も凄いものだ。
─…もうすぐ卒業か。
散り行く桜を眺めながら食事を口に運ぶ。
彼女と過ごす時間も、こうして昼食を食べるのも残り少しだと思うと寂しいな。
『ないこ先生沢山食べとったけど…体調大丈夫かなぁ。』
残さず食べてもらえたことは嬉しい。
だけど普段食べていない人が食べる量には限りがある。
─吐いてへんといいけど
昼食を食べ終え教室に戻ると、体操着に着替え デザートを頬張る友人の姿が見えた。
下ろした朱色の髪がデザートに付かないように耳に掛ける仕草は、自分にはない可愛らしさがある。
〚悠ちゃんおかえり〜!!遅かったから心配してたけど…ま〜たないくん先生の所行ってたの?〛
『またって…うちは、ないこ先生に食事させとるだけやって。ほっといたらカフェラテしか飲まへんからうちが世話見とるだけ。』
そう。自分がしたいからしてるだけであって
先生から頼まれて食事を作っているわけじゃない。
ただ作ってばかりで申し訳ないからと先生から十分過ぎる程の食費と買い出しを手伝ってもらっている。
〚…悠ちゃんがしたいならりうらは止めないけどさ…ちゃんと寝たの何時なの?〛
『………』
りうらに言われた言葉に驚いて返しに困る。
先生に食べさせることばかり考えていてばかりで自分の事に目を向けていなかったからだ。
『………一年の時かな…??言われてみたらそんな寝てへんかも…』
そう言うとりうらは直ぐにブランケットを持って来て羽織らせられる。
〚悠ちゃん少しでいいから寝て〛
『大丈夫やって…午後の授業出な色々面倒やから起きるよ』
単位不足になると、学校がない日に呼び出され 補習を受けることになる。
学校に行く時間や、補習を受ける時間を考えると少々面倒だ。
〚でも……今日の悠ちゃん顔色悪いよ…〛
『…うちは大丈夫やって。縄跳び持ったら外行こうや』
眠い瞼を擦りながら制服のボタンを外し、体操服に袖を通す。汚れたらいけない物、貴重品類は無くさないように製鞄に片付ける。
風に吹かれても邪魔にならないように三つ編みカチューシャにしてもらった髪をヘアゴムで括る。
防寒対策の為に、ウインドブレーカーを羽織り教室の扉を開ける。
「……獅子尾さんっ、!と…えー…と…大神さん?」
扉を開けると驚いて目を見開く先生に目が丸くなる。可愛らしい紙袋を提げた先生は、不思議そうにりうらの方に目を向ける。
「…大神さん今日締切のプリント出せそうなら体育の前に出して欲しいんだけど…」
〚…………締切今日でしたっけ………〛
焦るりうらの顔にはすっかり忘れてましたと分かりやすく書かれているが、先生には伝わらず不思議そうに首を傾げる。
「……今月末までだから出せる時に出してね。…それと獅子尾さんは早退しようか」
『………?』
首を傾げ黙り込んでいると先生は気にせずに口を開く。
「……顔色悪いのが気になるから。心配だから一緒に帰ろう、? 」
『………ん、っ…分かった』
小さな返事だったけれど先生の耳にはちゃんと聞こえたようだ。
「大神さんお友達連れて帰るけど怒らないでねー」
〚怒りませんよ。悠ちゃんゆっくり休んで元気になったら遊びに行こうね〛
『……ありがとう、りうら』
「獅子尾さん危ないからシートベルト付けてね。」
『ないこ先生…仕事大丈夫なん、?』
ただでさえ仕事で忙しいと言っていたのに
生徒を送る程、暇ではないと思うのだけれど。答えにくそうに眉を下げる先生に畳み掛けるように言葉を投げかける。
『“ただの生徒“を送るなんて普段の先生なら面倒くさがってようせぇへんのに何で、?』
「っ、!」
“ただの生徒“を強調して言った声音にだけ先生の眉はピクリと動いた。
ホントのことなのに傷付いた表情で、震えた声で話す先生は酷く動揺しているようにように見えた。
「ただの生徒だなんて言わないでよ。
獅子尾さんに俺恥ずかしいくらい面倒見てもらってるのに…食改善にだって付き合ってくれてるでしょ、?」
『うちが好きでやっとんねんから先生は気にせんでええよ。食改善も先生がちっさいから心配でやっとんねんもん。むしろうちの自己満足に付きおうてくれとる先生の方が珍しいんちゃう?』
「別に…珍しくないし。」
不貞腐れた表情と膨らんだ頬に年上の人にこんな気持ちを抱くのは失礼かもしれないが、素直に可愛い人だなと言葉が込み上げる。
─そういう所が好き。
「獅子尾さん荷物持つから貸して。今日は安静にね。それと夜は冷えるから暖かくして寝るんだよ」
『ん〜分かっとるよ。先生も暖かい格好しぃよ。先生っていつも薄着やから心…』
心配だと言い終える前に先生は、上着を羽織って大丈夫だよと優しく伝える。
─心配し過ぎか。肌寒なってきとるし、上着持っとるもんな。
「ないこちゃんは薄い上着なら持ち歩いてるんです〜!」
『先生寒ないん。うちの上着着て帰って、先生が風邪引いたら…寂しいから。』
悴んで震えている先生の手を引いて部屋に入る。外と変わらない温度になっている部屋の暖房を付けて先生を椅子に座らせる。
「獅子尾さん………ありがとう」
聞いたことの無い声音に一瞬戸惑ったが、
聞かなかったことにして先生に声を掛ける。
『ないこ先生お茶とコーヒーどっちがいいー?』
「……カフェラテがいい…って言ったら…我儘かな?」
先生が口にした言葉に自然と頬が緩んだ。
─我儘じゃないのに。
食器棚からカップを取り出して、ドリップし終わったコーヒーを温めたカップに注ぎ、
別で温めていた牛乳を少しずつ注ぐ。
零さないように気をつけながらリビングで縮こまっている先生の元に戻った。
『先生、お待たせ…〜砂糖入れんかったから要るんやったら言ってぇよ。』
「んー獅子尾さんありがと〜いただきます…」
小刻みに震える手でカップを持ち、小さな唇をカップに付けコーヒーを口にする。
「ん、っ、美味しい…っ。 」
『苦あらへん?』
「全然〜獅子尾さんが淹れた物なら飲めるよ」
─嘘ばっかり。
素直に喜べばいいのに心の内は疑心暗鬼なっていて 先生の言葉を信じられない。
「獅子尾が淹れたコーヒー美味しいのに…
あ、獅子尾さんはコーヒー苦手?」
『苦手なんかな、?淹れるんは好きやけど… 』
「じゃあこれを機に飲んでみる?」
差し出されたカップ。満面の笑みでカップを手に持たせる先生。
『………』
「ん、美味しくなかった?」
『…美味しいけど…甘ないなって…思っただけ。』
─ほんま…現実は甘ないな。
ポツリと呟いた言葉にも嫌な顔をせず
桜が散り行く寒空の下、卒業式に参列する二年生を席に座らせ、卒業式に不備がないかを確認する為に体育館を見渡す。
パイプ椅子が数個足りないくらいで卒業式の確認も直ぐに終わってしまう。
─……獅子尾さんだ。
教員に軽く報告をしてから体育館の 入口に行くと鴉羽色の髪が視界に映る。
にこりと微笑みながら手を振ると獅子尾さんも嬉しそうに手を振ってくる。
「獅子尾さんおはよう。卒業式の日に晴れて良かったね〜!!」
『…………そうやね。ないこ先生も卒業式参加するん、?』
「……参加するよ。獅子尾さんの晴れ舞台の日くらい一緒に居たいもん。」
素直に気持ちを伝えると照れくさくて、上手く言葉が紡げない。
卒業式の日くらい自分の気持ちを伝えようとしても、上手く言葉に出来ず、口篭ってしまう。
口篭っても気長に待つ獅子尾さんの表情に涙腺が緩む。
─待ってもらうのが当たり前じゃないんだから…何か言わないと。
頭の中で繰り広げられる大会議に困惑しつつも今思っている素直な気持ちを伝える為に、
口を開く。
「教え子が卒業するってなると寂しくなるね…俺なりに指導をしたつもりだけど面倒見てもらってばかりだったけど…獅子尾さんはどうだったかな?」
『……ないこ先生には感謝してもしきれへんよ。なぁ、ないこ先生ー』
背丈の高い彼女が、その場で屈んで目線を合わせる。 珊瑚色の唇から紡がれる言葉は可愛いのに反応に困ってしまう。
『うちから目逸らさんといてな』
「……、?」
『先生の為に綺麗にしたからずっと見とってほしい。』
「…勿論。獅子尾さんの晴れ舞台なんだからずっと見てるよ。」
親御さんが居る中、生徒と親しげに話すのも良くない。一教師として彼女の“卒業“をお祝いしないと。
〚悠ちゃんおはよう〜!!もうすぐ点呼みたいだからお話はそこまでにしよう? 〛
人懐っこい表情で彼女の後ろから顔を覗かせた大神さん。
卒業式の為なのかミディアムの髪を所々編んだ三つ編みを彼女に嬉しそうに見せる。
『呼びに来てくれてありがとう、りうら今日も可愛いねーその髪自分でやったん?』
〚そー早起きしてやったの〜!!今日はりうらが一番可愛いって思われたいから…〛
頬を赤く染めながら話す大神さんの表情に
彼女は顔色を変えずにこやかに大神さんの小さな手を握る。
『どんな髪型でもりうらは一番可愛いよ。だから自信持ってぇや。 』
潤んだ瞳を覗き込みながら言うのだから戸惑い不安に揺れていた大神さんの瞳もにこやかに歪む。
〚悠ちゃん……ありがとう……悠ちゃんに褒めて貰えて凄く嬉しい…悠ちゃん後で一緒にお写真撮ろうね、!〛
『そやね。それやったらはよ席つかなセンセーに怒られるな。ないこ先生うちのことちゃんと見といてぇよ?』
そう言ってから彼女は大神さんと手を繋いで自席に腰を下ろす。優雅に気品が溢れる彼女の所作は美しく、周囲の視線を集める。
─可愛い…
癖っ毛の無い髪に輝きのある瞳。彼女から何も言われなくても俺は彼女から目を逸らせない。
─好きだなぁ。
〚ないくん先生…生徒より泣いてどーするの?〛
式終わりに声を掛けてきた大神さんに言われ、箱ティッシュで目元を拭う。
「…生徒の成長に涙腺が緩んで…今日卒業なんだなぁって実感してた。」
〚何それ…いつからないくん先生は親になったの…悠ちゃんも何か言ってあげてよ。〛
桜並木にもたれかかり様子を伺っていた彼女に大神さんが声を掛けるとスタスタと歩き大神さんの傍に立つ。
『ないこ先生花粉症持ちやもんな。お水飲んたら少し楽なるよ。ティッシュもあるから鼻かんだ方がいいよ』
「…っ、…獅子尾さん…」
彼女に心配されると勝手に頬が色づく。
太陽の暖かさに当てられたのだろうか。
『ブランケット羽織る?春って言ってもまだ寒いから顔赤くなりやすいよね。』
「大丈夫だよ…改めてだけど二人共ご卒業おめでとうございます。」
卒業証書を握っている二人に卒業したことへのお祝いの言葉を送ると『急に畏まらんでも…ええのに』と彼女が先に反応し、返答する。
『ないこ先生泣き止んだら一緒に写真撮ろう!!』
「…んー獅子尾さんと写真撮る前に泣き止無用に努力します。」
『先りうらと写真撮ってくる…からね』
腫れた目元に水で濡らしたハンカチを当て、彼女と写真を撮る前に少しでも目の腫れを抑えようと努力をする。
背伸びをしないと触れることも出来ない彼女に触れたいと思う気持ちは消えることはない。 消える所か彼女が成長する度に触れたくて仕方がない。触れたら壊れてしまう関係。
─そんな生徒と教師の関係も今日で終わりか。
「獅子尾さんが好き……」
口に出したら終わりだとわかるのに口は勝手に言葉を紡ぐ。
風に揺られてなびく髪も、嬉しそうに歪む瞳も、目が合った時にはにかんだ笑顔を浮かべる彼女が可愛くて仕方がない。
─好きだから可愛い。好きだから触れたい。
身の丈に合っていない恋愛だって分かってるのに、彼女を思う気持ちは無くならない。
初めて会った時の印象は背の高い女の子。
「今日から担任の乾ないこです。えーっと、獅子尾さん?今日からよろしくね」
『いぬ、い?犬みたいな人やって思っとったけど…苗字まで…犬なんや…』
失礼というか恐れ知らずというか素直にそう思ったから口にしたんだろうと分かるくらい彼女の言葉は可愛らしく嫌悪感を抱かなかった。
「…乾です。先生は犬じゃないので…出来れば言わないでほしいです。」
自分よりも背の高い女の子が怖くて最初は話す声が震えていた。
『…はぁ、い。ないこ先生』
にぱっと笑みを浮かべる彼女に何も言えなくて会話を終えた。
一年だけの関係なのだから彼女との関係もすぐに終わるだろうと思っていたから。
だけど彼女との関係は一年では終わらなかった。
『やった、!またないこ先生が担任や。今年もよろしくね。先生!』
「…よろしくね、獅子尾さん。二年生になってもちゃんと指導するからね」
彼女の力になりたいと強く思ったのは彼女が高校二年生になった頃だ。
生徒の進路指導は教師としての仕事だから純粋に頑張りたいと思う。
「……はぁ、…もうお昼かぁ…」
お昼休みの時刻になっても終わることのない仕事に溜め息を吐いた頃に彼女は職員室から顔を出す。
『ないこ先生ー。一緒にお昼食べよ』
誘われた言葉に驚いて何も言えずに黙り込む。黙り込んだ俺を見て獅子尾さんは目元に手を伸ばす。
『寝不足やと思って蜂蜜檸檬作って来たんよ。飲み物ならいけそう?』
「………蜂蜜檸檬、?飲めるけど…どうして?」
『…不摂生気味な先生に何か食べさせたいだけ…先生うちに付き合ってくれる? 』
「…………喜んで」
優しい彼女の誘いを断りたくなくて俺は首を縦に動かした。
生徒を傷つけたくないって思ったから。
『……ないこ先生…苦い顔しとるけど檸檬苦手やった??』
「ううん、?檸檬は食べられるけど炭酸苦手で…」
『……先生のグラス貸して。』
しなやかな手が重なって触れられただけで、
驚いて彼女の手を振り払ってしまった。
絶望、喪失感、恐怖感に支配されてあの時、こうしていたら、 なんて過ぎたことを酷く後悔した。
『急に触って驚かせてごめん。次は先生の好きなの作るから好きな食べ物教えてぇよ』
彼女は嫌な顔をせず笑いかけてくるから。
簡単に堕ちる。
『教えてぇよ。先生のこともっと知りたい 』
「……獅子尾さんが作るなら何でも…食べます…」
我ながら単純だと思う。笑いかけられたから、触れられたのが嬉しかったから彼女の事がもっと知りたい。
『そ、?嬉しいこと言ってくれてありがとう〜ないこ先生』
名前を呼ばれただけで嬉しくなって、舞い上がって…馬鹿みたいだ。
なんて自虐しても彼女から目を剃らせないし、彼女のことを諦める気にもなれなかった。
彼女に魅せられたのは俺だけじゃないって
どうして気付かったんだろう。
『ないこ先生に食べてもらえて良かった…』
帰り道、空になったお弁当箱を手に持って夕焼けに染まった通学路を歩く。
入学式に出会った先生の第一印象は不健康そうな顔、痩せすぎた体が、心配になるくらい小さな先生。
昼食に誘ったのは痩せた体を少しでも 良くしようという自己満足から始まった。
不摂生気味なのは痩せた体からなんとなくこの人は食べていなさそうだと思ったから。
〚ニヤニヤして嬉しいことあったの〜?悠ちゃんが笑うのって久しぶりだよね〜〛
『担任のないこ先生とお昼一緒に食べられたのが嬉しくて……』
言っていて恥ずかしくなる。先生とお昼を食べられただけでこんなにも嬉しい。
〚そうなんだ。あの先生痩せてたから悠ちゃん的には放っておけないもんね〛
『……うちが心配することやないけどさ…ないこ先生に食べさせたくて気付いたらお昼誘ってた…』
〚悠ちゃん男の人苦手じゃなかった? 〛
心配で声を掛けるりうらの声は優しい。
長年一緒に居るから身長のことを言わずに接してくれる。
『ないこ先生は大丈夫やから…』
〚…………それなら良かった。りうらは何でも手伝うから何時でも頼ってぇ。〛
素直に甘えてくるりうらの行動は性別関係ななく可愛いと思う。
─りうらはモテるけど自慢したりせぇへんから可愛いんよなぁ。
『…さっそく頼っていい? 』
〚いいよ〜?りうらに出来ることなら…〛
『…………一緒に…お弁当作ってほしい…うち一人やと作りすぎてまうから手伝って。』
〚…喜んで!〛
屈託のない笑みを向けてくるから素直に気持ちを伝えることが出来る。
〚好きな子のお手伝いなら付き合うから何時でも言って。〛
『いつもありがとうりうら。』
〚…どーいたしまして〛
りうらの笑顔が見れるなら力になりたいって
思ったのが間違いだって知らなかった。
〚悠ちゃんって…胸大きいよねぇー?〛
『…っ、りうら急に何の話……』
プールの授業中に尋ねられた話題に驚くより呆れてしまう気持ちが勝つ。
〚…大きくていいなぁって無いものねだりしてた…〛
『りうらは…スタイルええから羨ましいよ。 』
言いたいことは何となく分かりそれとなくりうらに言葉を返す。
胸の大きさを気にするのはりうらが幼児体型で周囲の男子に馬鹿にされる事が多いから。
─男子ってほんま餓鬼やなぁ。
〚……悠ちゃんがそう言うなら…嬉しいけど
りうらのこと好きになる人なんか居ないよ。〛
『そ、そんなことあらへんよ!りうらは可愛いて、優しくて、頼りになる自慢の友達やから、うちの友達のこと悪く言わんといて…』
〚…悠ちゃんには分からないよ。りうらの気持ちなんて…〛
酷く落ち込んだ親友を元気付けたくて言った言葉は親友を酷く傷付けてしまう。
〚りうらが好きって言ってもまともに相手してくれないじゃん。〛
『…そんなことないよ』
〚それならキスも、デートも、それ以上もりうらとなら出来る?〛
尋ねられた問の答えが分からなくて黙り込んでしまう。
〚りうらは悠ちゃんの声も、体も、視線も、全部欲しい。悠ちゃんとならキスも、デートも、それ以上だって出来るよ。 〛
同性を好きになって頼る人も、相談する人も居なくて どんなに心細いかは想像出来る。
『りうらとなら…出来るよ…うちもりうらのこと好きやもん。』
一人にしたくなくて今にも泣き出しそうなりうらの頭を撫でた。
『うちで良かったら付き合ってくれへん?』
〚…悠ちゃん……ありがとう〛
手を繋いで授業に戻る時頃には、りうらも泣き止み、花の咲いたような笑顔を浮かべる。
一度気持ちを受け入れられると…もっとって感情が込み上げるのはどうしてだろうね。
〚悠ちゃん好き……〛
無防備な彼女に気持ちを伝えるのも、触れるのも、嬉しくてもっとって感情が込上げる。
柔らかい肌の感触も、恥ずかしそうに頬を赤く染めるのも、全部可愛くて愛おしい。
触れられて身を捩る彼女は、これ以上触れないように手で制してくる。
『……わ“…かった、から…もう、やめようや…』
〚…はぁ、い。もうすぐお昼だもんね。今日のお昼はどーする?〛
『お素麺…母さんが買い溜めてもたから食べなあかんねんよなぁ。』
〚素麺美味しいよね〜りうらお昼まだ良いからさ…もう一回だけ……いい?〛
彼女に強請るのも一度するともっと我儘を言って困らせたくなる。
『…………少しだけなら…』
〚…それだったらご飯後でいい?〛
『…りうらが作ってくれるなら』
〚勿論。頑張って作るから…全部食べてねー〛
指を絡めてソファーに連行すると彼女は緊張した面持ちで腕を広げる。
健気で可愛くてどんどん堕ちていく。
〚悠ちゃん嫌じゃない?〛
『りうらからのスキンシップは嫌ちゃうよ。』
熱を帯びた彼女の体に触れると背筋を震わせる。返答の代わりに可愛い声を出して抱き着く。
〚…好き…悠ちゃん大好き。りうら以外の人とこういうことしないでね。〛
『やからスキンシップを変な言い方せぇへんの!!』
好きだから取られたくない。
そう思う気持ちは薄れることはない。
夏から付き合い始めで現在の時系列に戻る。
─肌寒い頃に卒業なんて嫌だなぁ。
そう肩を落とすりうらとは裏腹に彼女は嬉しそうに笑う。
そんな彼女に問いかけるのがりうらの楽しみ。
〚悠ちゃん卒業式楽しみ??〛
『楽しみ。やっと卒業やって思ったら嬉しい。』
〚…悠ちゃんが嬉しいならりうらも嬉しい。〛
嬉しいから手放したくないなんてこっちの都合だ。 悠ちゃんの気持ちを押し殺してまで自分の意見を通し続けたくない。
〚悠ちゃんは後悔してない?りうらの気持ちに合わせなくていいんだよ…〛
『…後悔してへんよ。りうらのことも好きやから…大切にしたいんよ。』
笑わなくなった彼女を苦しめる趣味はない。
彼女には幸せになって欲しいから。
一度思った気持ちは変わらない内に彼女に伝えたい。
〚悠ちゃん…別れよっか…〛
もう大丈夫だよって言いたかったから、 彼女を手放す言葉を送る。
〚もうりうらは大丈夫だから。 〛
『………っ、ぅ…りうらを傷付けてごめん…』
─違うよ。泣いて欲しいんじゃない。 苦しめたいんじゃない。
〚悠ちゃんは自慢の友達だって言える人に会えたからりうらは大丈夫だよ。〛
─だから泣き止んで。
りうらの前では子供らしく泣きじゃくる悠ちゃんの背を押して笑顔を送る。
小さい頃から大丈夫になったらするおまじないだから。
〚困らせてごめんね。りうらはこれからも悠ちゃんが好き〛
高校生最後の恋は幸せで優しかった恋で沢山満たされたけど 失恋した気持ちは消えない。
『好きになってくれてありがとう…けど応えられんくてごめん……ね』
悠ちゃんはその場から動かずにりうらの傍に居てくれた。
─悠ちゃん違うよ。違うんだよ。
りうらは悠ちゃんの幸せを奪いたかったんじゃない。
今度は悠ちゃんの背中を押せる程、強くなりたい。
古くなった校舎を月明かりが、校舎全体を優しく照らす。
彼女が卒業して六年が経った今も俺の気持ちは変わらない。彼女に出会った日々を、面倒を見て貰っていた出来事を忘れることなく、
教師を続けている。
『カフェラテ切らしてるんだった…俺の夜ご飯がぁ…』
肩を落として職員室の戸棚を閉める。
「ご飯食べないのもいいけど…食べないと…怒られるかなぁ…」
食べないのは体にも良くないと思い、寒空に包まれる職員室の扉を開ける。
「………寒い、…マフラー持ってくれば良かったなぁ…っ、危ない」
バランスを崩さないように、手すりを持って螺旋階段を下る。
階段を下り終え風で、乱れた身なりを整え
グ ラウンドを歩いた。
「……今日の夜ご飯はどーしようかなぁ… 」
食べ慣れた料理も何年か食べると飽きてくる。好きだった食事も今は億劫に、なってしまい栄養を撮る為の作業になっている。
─外食もいいけど…仕事したいしなぁ。
食事をする気がなくて自宅に帰らず、学校に残り仕事をする日々。
「久しぶりにベッドで寝たいけど…帰りたくないんだよなぁ〜人肌恋しくなっちゃっ…」
独り言を呟きながら歩いていると校舎付近に人影が見え、その人影が誰か分からず怖くてその場に立ち止まる。
声を押し殺して去るのを待とうかと思っていたが、人影は遠ざからずどんどん俺の方に近付いてくる。
─フライパン取ってくる、?それとも…職員室に逃げる、??
逃げたいのに恐怖で足が空くんでその場から一歩も動けない。
─地面這って行く?でも…足が動かない。
どうしよう…どうしようどうしようどうしようどうしよう。
そう考えている間に人影は俺目掛けて走って来て思いきり抱きしめられる。
「………、あ、ぇ…っっ…と 」
優しい銀木犀の香りに柔らかい髪に、押し付けられる胸の柔らかな感触に戸惑って思考が止まる。
『…ないこ先生…相変わらずちっこいし、うちが居らん間にまた痩せた?』
「……」
降ってきた言葉に優しい高音の声。声を聞くまで誰か分からず怖がっていたくせに、彼女だと分かると、再会できた嬉しさで頬を涙が伝う。
「っ、ぁ、え…っっ……と獅子尾さん…大きく…なっ、たね……?久しぶり…っ、…」
『涙腺弱いのは変わらへんくて安心したぁ。先生…久しぶりー』
触れられる嬉しさ。彼女がもう生徒じゃない喜びに思っていた言葉をぽつりぽつりと囁く。
「…獅子尾さんにこうやって触れたかった…です。」
『…うちも会いたかったよ…ずっと先生に触れたかった。 』
─ならどうして会いに来なかったの。どうして遊びに来ないの。
自己中心的な気持ちを思ってばかりで申し訳なくなる。
『けど、りうらと別れてそんな経ってへんのに…次の恋愛に行くのは…りうらに申し訳なくて…六年間…会いに来れんかった…』
「何で六年間だったの?卒業してから遊びに来たら良かったのに…」
『…ないこ先生を意識してた年まで自分へのケジメとして会いに行かんかったの』
─六年…今は四月だから獅子尾さんが……意識し始めたのは…十一月から…?
『高校時代から…触れたかったけど…そんな照れられたら…困る』
頬を撫でる彼女の手が暖かくて冷えた頬が徐々に熱を帯びる。
「っっ…だって…好きだから……触られたら恥ずかしくて…」
『…っは、?…っ、いや、いや、…先生がうちのこと……好きなわけないやん…っっ…』
信じたくない気持ちも分かる。
一教師が元教え子の生徒を恋愛的に見る筈がない。そう思いたいのも十分分かる。
「獅子尾さんに一目惚れしてから今も変わらず好き。獅子尾さんは…?」
『言いたない…』
「…どうして??獅子尾さんの気持ち知りたいから教えてー」
頬を赤らめる彼女に聞かなくても答えは分かるけれど…ちゃんと彼女の口から答えを聞きたい。
『…………知っとるくせに…意地悪ばっか……する』
でも惚れたのは君だから。
彼女の瞳をじっと見るとそっぽを向いて赤い頬を隠そうとする。
隠す前に彼女の頬を両手で包み込むと観念したのか赤い頬を隠さずに、髪に触れる。
「…獅子尾さん…っ、?…っん……っ…ふ…っくすぐったい〜!」
『…ないこ先生暴れんといて。落ちてまうから。』
「…っ、?……触っていい奴?」
『触ってもええけど散るから気をつけてぇや』
髪に触れると四本のガーベラが三つ編みの合間に挿されていた。くすぐったいけれど彼女の気持ちが知れて嬉しい。
「獅子尾さんが俺の事大好きって知れて嬉し…っ、! 」
『……うちのこと名前で呼んでくれへんの?』
「…………急にキスする人の名前呼びたくない…っんー!っ、っ、ぅ……ふ…っ……」
脅しの口付けも触れ合いも初めての経験で心臓が痛いくらい高鳴る。
彼女の名前を呼ぶことは簡単なのに、呼ぶのはまだ照れくさい。
「…悠…子さん……」
『っ、!はぁ、い。ないこ先生どーしたん?』
彼女が嬉しそうに頬を緩めたのもおでこに口づけるのも慣れなくて頭がクラクラする。
「……好きだなぁって…思って」
上機嫌な彼女を驚かせたくて精一杯背伸びをして彼女の頬に触れる。
「…俺と結婚してください。悠子さんには悪いけど…ずっと傍に居て欲しいです。」
彼女に口付けるまであと10cm。
俺は彼女に「一生愛を捧げる」
涙を滲ませる彼女の頭を撫でるとほっとしたのか指を絡めて手を握る。
口篭りながらだけれど彼女は言葉を返してくれた。
『………っ、…ええよ。ないこ先生のこと放っておけへんもん。その代わりないこさんはうちから一生目逸らさんといてよ。』
だから獅子尾さんは俺だけを 『一生愛し続けてよ』
彼女と『』するまで…あと9cm
𝕖𝕟𝕕 𓂃 𓈒𓏸
最後までご覧いただきありがとうございました。
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