「…先輩もしかしてもう酔いました…?」
kn「…んん〜…」
ここは一応BARではあるんだから、色々なカクテルが置いてある。
俺が何を飲もうか迷っていると、先輩がおすすめのカクテルを教えてくれて、それを頼んだんだ。
アプリコットフィズというもの。
黄色のような…オレンジ色のような色のカクテル。
透き通っていてすごくキレイな見た目をしている。
味は思っていたよりもフルーティー。
甘めのもので、お酒がそんなに好きではない俺も飲みやすいものになっていた。
「…美味しい…!」
kn「…そっか…」
「…先輩…?」
先輩は傷ついているような…苦しそうな笑顔をこちらに向けた。
sh「…そんなんじゃ意味ねえだろ」
kn「…いいの」
俺には2人がどういう意味の会話をしているのか理解は出来ないが、俺になにか伝えようとしていたんだろうか…
そう思った。
けれど、何を伝えようとしてくれたのかは何も分からず困っていた時。
先輩に声をかけられた。
kn「…俺が飲むやつもえらんでよ」
「…そう…ですね…」
先輩がどんなものを好きなのか全く知らない。
卒業してからも先輩とは1度も連絡をとったことがなかったから、何が好きなのか…どういうものをいつも飲むのかサッパリだった。
メニューのカクテルの名前や見た目を見て少し長考しながら選んだ。
「…じゃあスクリュードライバーはどうですか?」
kn「…スクリュードライバー…ってえ…!?」
「…え…?」
俺がその名前を口にすると、先輩は顔を少し赤く染め驚いたようにこちらを見てきた。
…なんでそんな恥ずかしそうにしてるの…?
kn「…いや、知らないか…」
と、ボソッと呟くと「ありがとう。それ飲むね」と、シャケにそれを頼んだ。
…さっきから一体なんなんだろう。
先輩はさっきから変な態度だし、シャケもやれやれと呆れたように笑っていた。
sh「…はい」
kn「ありがと」
先輩の目の前に置かれたお酒はまるでオレンジジュースのような見た目をしていた。
オレンジ色で何も透き通っていないのがとてもジュースに見える。
先輩が1口ゴクッと飲むと、少し顔を歪めた。
kn「…これ…度数たかい…?」
sh「?そうだけど。きんとき酒飲めねえの?」
「いつもジュースばっかでなんでだろうとは思ってたけどさ」
kn「…飲めないわけじゃないんだけど結構弱くて…」
そう言っている先輩はもう既に酔っているみたいに、話し方が普段よりも少しふわっとしていた。
「ご、ごめんなさい…」
「お酒飲めないの知らなくて…」
kn「全然大丈夫だよ…!?」
「俺が選んでって言ったんだしありがとね」
そう言って、先輩は優しく俺の頭をぽんぽんとしてくれた。
…先輩の手暖かいな…
しばらく飲んで話しているうちに、先輩は最初の緊張や気まずさがとけたようで、まるで高校生の頃に戻ったように楽しい時間を過ごしていた。
けれど、先輩は本当にお酒があまり得意では無いらしくグラスにあまり口をつけていなかった。
それでも顔は赤く染っており目はとろんと…話し方もふにゃふにゃしていた。
「…先輩やっぱり酔ってるよね…?」
そう聞くと、先輩は嬉しそうに目を細めふわっと笑った。
kn「…やっとためではなしてくれたぁ…」
「……タメで話して欲しかったの…?」
高校生の頃先輩とはかなり仲が良かったため、部活以外ではタメ口で話していた。
廊下ですれ違った時…
一緒にゲームをしている時…
通話をしている時…
遊んでいる時…
先輩は俺と年齢差があるのを気にしていて、敬語を使われると距離を感じるからタメ口で話してと言われていた。
だから俺も先輩に甘えてずっとタメ口で話していた。
けれど今日、6年ぶりに話したからと言うのもあってずっと敬語で話していた。
…それに、もう前のような関係性では無いから…
けれど、俺がタメで話すと先輩は本当に…
ほんとーーーに可愛い笑顔をこちらに向けてくれた。
kn「…あたりまえだろ〜…」
「前はずっとためだったんだから…」
と、眠そうな顔をしながらそう伝えてくれる先輩が可愛くて、クスッと笑ってしまった。
kn「…ん、なに〜…?」
「…ううん。なんでもないよ」
お互い酔っている今ならもしかしたら流れで言えるかもしれない。
そう思ってある言葉を口にした。
「…先輩かわいいね…」
kn「…ぅえ…?」
ぽかんと口を開けてこちらを見てくる先輩…
少し間が空いて「なにいってんだよ…」と、恥ずかしくなったのかそっぽ向いてしまい顔が見れなくなってしまった。
「…こっちみてよ」
kn「…むり…」
酔っていてもまだあまり素直になれないのか先輩は少し冷たくなってしまった。
「…ねぇ、先輩」
kn「…なに…?」
「…お酒飲んでよ」
kn「…?のんでるよ…?」
「…もっと…」
人によるだろうが、お酒を飲むとその人の本性というか…本音というか…
そういうのが聞けたりする。
今の先輩はすごく酔っているけれど、” これ以上は飲まない “ と、セーブしているように見えた。
もちろんセーブは大事なこと。
飲みすぎて記憶がなくなる人もいるし、変な行動をとって怪我をする人もいる。
でも、俺が隣にいるんだし怪我をすることはない。
…それになにより、先輩のべろべろに酔っている姿がみたい。
今の俺に対しての先輩の気持ちが知りたい。
そう強く思った。
だから、先輩にお願いをした。
けれど、先輩はうーんと眉をひそめ悩んでいた。
「…だめ…?」
少し上目遣いでそうお願いすると、先輩は「…わかった、」と言って2口ごくごくと飲んでくれた。
…俺は先輩がお願いを断りずらいのを知っているからね。
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