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「……わぁ…」
キラキラと輝いて見える服の数々、そして珍しい色、柄が着いている生地。小物、ピカピカな靴、色々と備えられている場所に連れられてきた。
「この中で好きな生地、服等々ありましたらお教えくださいませ。」そう案内してくれたのは仕立て屋をやっているお姉さん。
「セラフさん、アキラさん、どういうのがいいとか、ありますか…?」
如何せん俺は服を選ぶという事をやったことがなくて、なんの生地が良いとか当然の如く無知だ。
奏斗に任されるほど目が肥えてる2人なら俺に似合うのを選んでくれるかもしれない。
「……そうですね…貴方は顔が端正で美しいのでなんでも似合いそうですが……清潔感はあるに越したことはありません。白い触り心地がいい生地を選ぶといいですよ。」
「うん、俺もそう思う。動きやすいの七分丈のこういうズボンがいいかな。それかもうこのぐらいの短いのでも動きやすいと思う。」
「訓練用、自室用、外出用には欲しいですよね。」
うんうんと悩んでいる2人をおいて今度は店員さんに聞いてみる
「奏斗の服の仕立てもやっているんですよね。」
小声でこしょこしょと喋ればすぐに屈んでくれた。もう一度同じことを言い聞こえたのを示すように頷いてくれた。
「そうですよ、それがどうかましたか?」
「えっと……奏斗が好きそうな服とか…ありますか…?」
「奏斗様は色んな幅広いものが好きですが、貴族という立場上、派手な服より清潔感が求められ、あまり着られておりません…でも、奏斗様は貴方が一番似合う服を着てくださる方が喜ばれると思いますよ。」
「……そ、うですか」
顔を真っ赤にしながらぽしょぽしょ話せばふふ、と笑って店員さんは立ち上がり、アキラとセラフの案内をし始めた。
俺が1番似合う服……やっぱり、黒かな…
「あ、の、セラフさん、アキラさん、自室用は白で、外出は黒基調がいいです…あと、顔を隠せるようにマントのようなものが欲しいです…インナーには羽が出ても破けないようなデザインが好ましいです…」
「ズボンはセラフさんの言っていた短いズボンでお願いします。」
一気にそういいアキラとセラフの顔をチラリとみればびっくりしたように目を少し開いている。
あれ、なんか……変だったかな……
生意気だったとか…無礼をなにか働いたとか…
「ではそれで行きましょう。ワイシャツは白、ズボンは黒、そして…手袋も必要ですね、手袋は黒で大丈夫ですか?」
「は、はい!」
手袋はなんでだろう?
「手袋は君の身元がすぐバレないためだよ」
「そっ、そうなんですね…」
なんでわかったんだ…
「それが俺の魔力だからだよ、雲雀様。」
「心が読めるんですか!?」
「心…かな、うん、心を読むというか、動きを読めるんだよ。その応用みたいなもん。んまぁ、大体は魔力でブロックされるんだけどね、」
「なるほど…」
そんな魔力の形があるのか。
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魔力にも色々と形がある。生まれつき付与した能力という方が簡単かもしれない。
雲雀は魔族ではありえない癒しの能力を。
セラフは未来予知の能力を。
色々とあり、魔族が使えるヒールは神聖魔法から派生し、とある魔族の1人が作り出したのが発端になり、魔族から生まれつきその能力を用いることは無い。
奏斗はそれを知っており雲雀が神聖魔法を使える魔力の持ち主だと確信している。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「では、一応私たちからも似合いそうなものを二着ずつ頼んだのであとはそれが届くまでの服が必要ですね…あと小物、靴とかも買っちゃいましょう」
「えっ、い、いいんですかそんな…」
「いーのいーの、奏斗のお金なんだし好きに買っちゃおうよ」
あいつファッションにしか興味無いからお金有り余ってるんだよ、とセラフに耳打ちされる
奏斗、ファッションすきなんだ
確かにあの店員さんも色々幅広いのが好きと言っていたし、よく来ているんだろう。
「この靴とかどうですか?上品なイメージもありますし、雲雀様はその歳にしては背が高くて脚が長いので似合うと思います!」
ば、と見せられてよくデザインを見ればよくあるヒールブーツ、だが皮の品質が良いのかツルツルに輝いて耐久性はバッチリ、半年かそれ以上は激しく動いてもダメにならなさそうだ。
足首が固定されている訳では無いため動き安そうだ。
それに黒色で買う服にも似合う。
「これで!!お願いします!」
店員さんはアキラから商品を貰い受ける。
「あ、じゃあ小物とかこれどう?イヤーカフとピアス。穴開けるの嫌だったらイヤーカフだけとか」
イヤーカフ…!
「ピアスの穴は空いてるのでお願いします!」
「ん、わかった〜」
ピアス、イヤーカフは家を出る時わすれていったから欲しいと思っていた。せっかく痛い思いして穴を開けたのだからこれで塞がってしまうのは勘弁だ。
「…それじゃあ、このぐらいですかね。買うものは」
あの後セットの服を何着か買い、今は2人でデザートを買いにケーキ屋に足を踏み入れていた。
「かな、デザートも買えたし、もうそろそろ奏斗が帰ってくるから早く行かないとね。」
「?そうなの?」
「そんな決まりは無いけど、なにより雲雀様のことを心配するし、俺たちは休暇を貰った以上主を出迎えないとね」
なんという忠誠心なのだろう。これを休暇だと捉える心の広さに感服してしまう。
「そうだね、俺も早く奏斗に会いたいな」
「………雲雀様も奏斗の事好きなんだねぇ」
「え、ぁ、えっ、声に出てました…!?」
「あははっ、うん、心も読んでないよ。」
え、やらぅ、と言葉にならない声を上げて顔を下に下げる。
恥ずかしい。
昨日拾われたばっかなのに、優しいあの笑顔と、甘ったるい優しい声が頭から離れないのだ。
大きな手で頭を撫でられたい。褒められたい。
「……ほら、雲雀様、行くって、早くしないと置いてかれちゃうよ」
「う、うん…!」
タッタッタ、と駆け足で馬車に入り込む。
するとすぐに発進し始めて、どんどんと奏斗の屋敷が見えてきた。
「お帰りなさいませ。」
「えわっ、か、奏斗じゃないですけど…」
「もちろん分かっておりますが、客人やこの敷地内に誰かが入ってきたらお出迎えするのがメイドたるものの務めですわ。」
それはお出迎えであり、侵入者を防ぐためでもある。なんであれ、外から人の気配がすればなんでもすぐに1箇所に集まるようにされている。
人質を防ぐために。
なるほど、と感心しているとセラフに抱き抱えられ体が浮遊する。
「おわっ、!?な、なに…!」
「君の自室の準備が出来たみたいだから一緒に見に行くよ」
「俺自分で歩けますよ!」
「迷子になったらどうすんの、連れてく、凪ちゃん、奏斗が帰ってきたら雲雀の自室の場所教えといてね。俺ちょっと荷物とか運ばないとだから奏斗の出迎えは厳しいかも」
「わかりました。荷物は部屋の中にありますが追加で発注したものは部屋の前にあるそうです。」
「あいりょうかい〜」
「かなと、後どのくらいで帰ってくるの?」
「ん〜あと20分ぐらいかな?今日遅くなるって連絡来てないからもう帰ってきててもおかしくないんだけどな…」
「そう…」
今日は沢山歩いたから疲れてしまった。
どんどんと瞼が閉まっていくがその度に首がかくんと、落ち目が覚める。
「眠いかもだけど頑張って雲雀、今日は荷物とか全部確認したいから」
「ん…ぅ」
「かなと…早く帰ってきてあげて…」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
路地裏、廃れた廃墟の裏の路地にコツ、コツ、と足音が響く、それは不規則であり規則的で、1人の足音では無いことがわかる。
自身がゆっくりと歩けば相手もゆっくりに、早足にすれば早くなる足音。
「……しつこいなぁ…」
「雲雀を返してもらおうか」
「はあ?誰のこと?」
振り返って見てもフードで顔までは見えなかった。
どうやら雲雀を探しているらしい。
しらを切るがぴら、と写真をこちらに見せびらかす、そこにはセラフとアキラと仲良さそうに笑っている雲雀の姿。
「………………それが何。」
「セラフとアキラだよな、これ、お前んとこの。渡会雲雀、こいつのことは裏では持ち切りなんだよ。お前のとこにいるのは分かってる。」
「だぁかぁら、で?お前は何が言いたいの?」
こいつはさっき雲雀を返して欲しい、と言ってきた、が親では無さそうだ。それにこういうとき、人質といった嘘をつくが僕に返して欲しいなんて言った時点で人質には取られてないことが分かる。
セラフとアキラがいればさらわれることも無いだろう。それにもう屋敷に帰っているはず。
そこまで考えてふぅ、と一息つく。
「渡会雲雀についてお前はどのくらい知っている」
「はぁ?いやいや、人について知るのは名前と素性ぐらいじゃない?」
「…ほぅ、渡会雲雀の素性を知っているのか?」
「………………。」
どういうことだ。雲雀の素性?出生は渡会家、そして吸血鬼の一族。それ以外に何がある。正解は言ってはいけない。こいつは何か勘違いをしている。
「え、なに、そんなことも知らないの?呆れた、それだけの情報で雲雀の話が裏で持ち切り?バッカみたい。」
「天使と何か繋がりがあるんだろう。」
ぴく、と指が動いてしまった。
あぁもう僕のバカ。
「図星か?ははっ、おもしろい、渡会雲雀の魔力は魔界では存在しない、してはいけないなんて風楽、お前がいちばん分かってるだろ」
…はぁ。
「お前は攫って何がしたいんだよ」
「そんなん…ひとつしかないだろ?渡会雲雀という珍しき魔力の持ち主で、美しい容姿の持ち主、極めつけに生にしぶとい吸血鬼!」
「……」
「奴の唾液に限らず体液までもがヒールできる。であればあいつの血液を摂取し続ければ大量のポーションが出来上がる。なんて素晴らしい!いままで魔族が天使に逆らえなかったのは、ただのヒーラー不足。これで問題が解消され、天使との戦争にも打ち勝てる!」
「渡会雲雀も魔界で一番の功績を勝ち取れるんだ、光栄なことだろう。だから、」
「渡会雲雀をこちらに渡せ。」
ミシ、と指の骨が軋む。
なんて惨い。それが100にも満たない吸血鬼の子供にする仕打ちか。
血液を死なない程度に吸い続け、回復させる。
そんなこと、拷問と一緒だ。
片目がじくじくと焼けるように痛い。
天使との繋がりがなんだよ。ただの魔力の違いで、天使と手を組んでいるなんて、憶測にも程がある。
しかも吸血鬼という情報があり、拾ったという情報もない。正真正銘渡会の夫婦が産んだ子供だ。
そうでなければ守るようなことはしない。
ギリギリと奥歯を噛み締める。
「…もういいよ、お前は死ね」
もう魔力を抑えることも忘れて、その魔力は圧と化す。
「ひ」
男は腰が抜けたのか間抜けな格好をして逃げようとする。
必死に四つん這いで逃げようとしている。
実に滑稽だ。
「僕の大切な子供を、戦場の道具につかうわけねぇだろ。…お前は僕の逆鱗に触れた。許してくれなんて言ってももう遅い。生き返れると思うなよ。」
久しぶりの魂だ。口角が無意識に上がる。
間抜けを追いかけるようにゆっくりと歩き出す。
コツ、コツ、とわざと音を出して。
「はは、そんなんで僕から逃げれんの?言っておくけど、何百人と雲雀を奪うために僕に立ち向かっても、1番強いのは雲雀だからね。…君達みたいな、人を道具扱いする奴に勝てるわけないよ。」
馬鹿なヤツ。
奏斗の綺麗な夜空のような瞳が、深海のように暗くなる。
それと対比した片方の瞳は、青い晴天のように光り輝いていた。
そこに大量の血飛沫が上がる。
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