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日々の日常に嫌気がさしていた。
勉強しろと怒鳴る父、私以上に進路を気にしてくる母、口を開く度唾が飛んでくる先生、どっからどう見ても平凡な私。
待てと言っても時は過ぎて待ってくれないし、近所の犬は言葉を理解してくれない。
川に水は流れて人は歩き、空は青く広く、風で草木は揺れる。
誰でも魔法が使えたら?”冬”と呼ばれる季節が暑く、雪も積もらなかったら?犬が人間の言葉を喋り逆に人は犬の言語を話せたら?空が虹色だったら?
そんな世界だったらどれほど楽しく、面白かっただろう。
でも、そんな日常を暮らしていても、いつか飽きは来るのだろうか。
だったら、お願いします神様。今の日常を非日常にしてくれませんか。
ピピピピッ ピピピピッ_
「うるさいなぁ……もう!!」
目覚まし時計を叩き、起き上がる。今日は日が差しておらず湿ってる空気が朝から漂っている。
時間通りにいつも起きるし時間通りに準備が終わる。
「ねぇ、ちゃんと弁当持ったの?」
「うん」
「じゃあ鍵は?保険の紙は持った?今日は何時下校なの?」
「持った、持ったしいつも通り!!うるさいよ…」
「もう!朝からなんなの?その態度!あのねぇ、」
「いってきまーす」
母の言葉を遮るように私は家を出る。曲がり角を曲がるともう他校や同じ学校の子が登校しているのを見かける。みんな私と同じ生活を送ってるんだ。
私はこんなに息が詰まるほどこの日常がつまらないのになぜそんなに楽しく話せるの_
チャリンチャリン、と後ろから自転車の鈴の音がする。考え事をしていたから気づかなかった。
「よぉ、遥陽」
自転車に乗っていたのは最近隣に越してきた巧だった。すぐに打ち解けて仲良くなったけど、方言男子って感じで少し合わない時がある。
「ん、おはよ」
「朝から素っ気ねぇなぁ、てか今日俺と一緒に学校行くって話やったろ」
忘れるなや、と少し不機嫌そうな巧に「ん、ごめん」とわたしも関西出身だから少し訛りを入れて喋ってしまう。
そんなこんなで巧と話しているといっつも遅刻寸前になり怒られる。
「また、あんたのせいで遅刻しそうになった……」
走ってきたおかげでゼェゼェと喘ぎ何とか息を整える。
「ははっ、ごめんってば。そやけど遅刻せぇへんだけマシちゃう?」
にっと笑う笑顔に気に食わなく「全然マシじゃないわ!!」と頭を叩く。
巧と一緒に教室へ入ると「また遅刻しそうだったな。」と入学当初から仲の良い瑛太に声をかけられる。
「ウチは瑛太クンみたいに優等生じゃないんでね!」
「なぁ瑛太ぁ、ジブン今日の放課後ラーメン奢ってくれへん?」
「え!それならウチも!!」
「はぁ?なんでオレなん?」
「ええやんけ、この前ジュース2杯分奢ったやろ?」
「それなら奢ったるけど、遥陽は自分で買えよな。」
「えぇ……」
この日常に嫌気はさしているがこの2人とは、いつまでもずっと話していたい。
もう、嫌だと言われても私はこの2人と一緒に、ずっと一緒に……
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン_
「はっ、」
放課後のチャイムが鳴った。私は机に伏せて寝ていた状態だったことに気づいた。
「あ、やっと起きたか。ほらラーメン行くで。」
「え、ウチいつから寝てたん?」
「1限目からやで。ずっとそこから熟睡してんのに口に食べもん近づけたら食うのおもろかったわぁ」
ケラケラと笑う巧を見た私は瑛太が居ないことに気付く。
「なぁ瑛太は?」
「瑛太ならまた後輩の女子から呼び出されたらしいで、知らんけど。”待っとけ”だってさ」
「何アイツ……モテるのウザイし!!!」
そんなことを言ってると教室の扉がガラッと開く。
「ごめん、待ったか?」
「おうおう、女たらしの登場やで。
また告白かよ、狡い男。」
「入学当初からモテてさぁ、アンタほんとにいい加減にしてよね。」
グチグチいう私たちに瑛太は「はいはい」と五月蝿そうに聞き流す。
駐輪場に着き、2人は自転車の鍵を開けるが私は徒歩のため自転車がない。
「ジブン、そういえば徒歩やったもんな。瑛太かオレの後ろ乗るか?」
「ん、どっちでもいいけど帰り道巧近いから巧でよろしく。」
「おう。」
「早く行くぞ〜。」
自転車を漕ぎ始めてラーメン屋へ向かう。この3人で何回一緒にラーメン屋へ行ったことか。
橋の下を通り、坂道を下る。
そういえば、ともうすぐ親友である翠の誕生日であることを思い出し
「ごめん一旦ここで降ろして、ここ見てるからもしだったら先行ってていいよ。」
と二人に言う。けど我慢強いからと2人は待つ。
どうしようかと悩んでいるといきなりガシャンッと音がした。何かと思い見てみると2人が急加速で坂を下っていた。もうすぐで車通りの多い道路なのに、2人は止まる気配が無い。急いで私も坂を走って下る。
「待って、待って!!」
慌てる2人に車が近づく。
「やだ、だめ、待って!!!」
そう、待てと言っても時は止まってくれない。こんなになるなら私、降ろしてなんて言わなきゃ良かった。
ドンッと鈍い激突音が響く。血を流し倒れ込んでいる二人。事故が起こる前から見ていた人は「前の自転車の子が転んでいた男の子を助けようと自転車から降りようとしたらバランスを崩して、後ろの自転車の子が助けようとしたけど一緒に落ちていったのよ。」と言う。
あぁ…神様。これは私が望んだことじゃない。私、あの二人のおかげで飽きる平凡な日々も乗り越えられてきたのに。こんなの、こんなのあんまりです。
ピピピピッ ピピピピッ_
「んん…ん、えっ??」
気付くと朝になっていた。しかも今日の朝。なに、何が起きてるの…?状況が飲み込めないが準備をし学校へと向かう。
チャリンチャリン、と後ろから自転車の鈴の音がする。
「よぉ、遥陽」
え、嘘。巧?呆然と立つ私に
「何驚いた顔してんだよ。夢でも見てるような顔してさ、」
「……ね、ねぇ巧。私の頬叩いてくれる?触るだけでもいいからさ」
「え?あぁ、」
パチッ、と少しひりっとする痛みが走る。これ、夢じゃない?
「てか今日俺と一緒に学校行くって話やったろ。忘れるなや」
少し不機嫌になる巧。朝と同じだ…
巧と一緒に教室へ入ると「また遅刻しそうだったな。」と瑛太が言う。
「やば…何これ…」
「は?何言ってるん?」
瑛太が不思議そうに私を見つめる。
「え?えぇっと…」
「なぁ瑛太ぁ、ジブン今日の放課後ラーメン奢ってくれへん?」
あっ、これ…タイムリープ?
朝と同じ会話、ちゃんと痛感する頬。神様が与えてくれた試練なのかも。
「はぁ?なんでオレなん?」
「ええやんけ、この前ジュース2杯分奢ったやろ?」
「まぁ…それなら奢ったるわ。てか遥陽は?行かんの?」
「えっ?あぁ…どうしよ…」
行きたい…行きたいけど…
「ごめんっ!今日用事あってさぁ…」
先のことを考えて私は行かないことにした。翠の誕生日プレゼントなんてあの時に行かなくても良かったし…
「珍しいやん?ならしゃあないわ。2人でデートやな。瑛太っ」
「きしょいわぁ…」
「あ、そやけど今日ジブン徒歩やったよな?送るから後ろ乗りな」
「えっ、?いや良いよ…太ってきたから歩きたいし」
「そうか、、?じゃあええわ」
これで、助かるなら良いんだけど…
その後の私はまた眠りについてしまった。