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みんな、バタフライバースってご存知ですか……?ほんと考えた人に国民栄誉賞与えてほしいくらい、いい設定なんですよ!!!
というわけでオタレイ書きます!⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
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この世には蝶、蛾、蜘蛛、蜂に分類される人間が少なからず存在する。もちろん普通の人間より数は少なく、世間にはあまり知れ渡っていない。というか、ほぼ知られていないのだ。その希少な存在がレインとオーターだった。
その希少な存在同士、赤い糸やらで結ばれていたのか、はたまたただの偶然なのか、二人は互いに惹かれあっていた。ただ、どちらも無口でろくな会話もしないため、相手はこちらのことなんて気にも止めてないだろう、とお互い思っていた。
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レインは、魔法も今ほど使えない小さい頃、蜘蛛に襲われたことがあった。路地裏をうろついているところを、急に腕を掴まれ、噛み付いてきたのだ。噛み付かれた部分に鋭い痛みが走った。それと同時に、相手の男が苦しみ出し、か細い声でこう言った。
「……っ、クソッ蛾だったか……!」
しばらくして男は息絶え、レインは腕を押さえながらその場を離れた。そのときに自分が毒である蛾だったということがわかった。
それを機に、人との接触をなるべく避けてきた。相手に好意を向けることもあまり無かった。好意を向けた相手が蜘蛛だったら耐えきれないと思ったからだ。
ただ、残酷なことにそう思っていたレインはオーターのことを好いてしまったのだ。立ち振る舞い、強さ、優しさ、気づいたら目で追っていたのだ。
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神様はまたもや意地悪なことに、オーターを蜘蛛に選んでしまった。だが、オーターは蜘蛛だったが、蝶や蛾に対して食べたいという衝動が起こってこなかった。レインに会う日までは。彼に会い一目見て食べたい、という衝動が走った。こんなこと今まで一回もなかったのに、そう思いながらも食べたいという欲とただ単純に恋愛としての好意も持ってしまった。
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あるとき、大事な書類を渡そうとした時、二人の手が触れてしまった。二人ともドキッとした。レインは、好きな相手と触れ合ってしまったという可愛らしい感情。オーターは触れたときの手先のビリビリっとした痺れに動揺してしまった。
(今、確かに痺れがあったよな……)
気がついてしまったのだ。蝶か蛾か、その二分の一の確率でレインが蛾だとわかった。
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それは突然だった。いつものように深夜、普通の人なら寝ているだろうという時間に二人は仕事に追われていた。ずーっと沈黙が流れていた。その長い長い沈黙を破ったのはレインだった。
「……オーターさん、好きです。」
オーターはついに幻聴が聞こえてきたのかと思った。だが、それは違った。
「俺と付き合ってくれませんか……」
もちろん告白なんてするのは初めてだった。神覚者になる前は告白をされる方は数えられないぐらいあったが、自分がするとなると緊張で、手に汗を握っていた。
「……本気で言っているのか」
「本気に決まってるじゃないですか 」
そう疑いの言葉をかけられ、思わずガタッと音を立て立ち上がってしまった。オーターもレインに目線を合わせるためかはたまた違う目的か、そっと席を立った。
オーターはレインとの距離を詰めぐいっと、こちらを見てきた。急に距離が近くなり動揺と焦りと緊張で顔に熱が集まった。
「……オ、オーターさん?」
そう呼びかけると同時にオーターはレインの首元に噛み付いた。血が勢いよく溢れ出した。
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「オ、オーターさん?」
そう呼ばれたときにはもう、食べたいという衝動で頭がいっぱいだった。だが、頭の端に食べてはいけない、レインを殺したくない、という気持ちも働いていたはずだった。気がついたら自分の口は、レインの首元に噛みつき、同時にピリピリとした痺れと目眩が起こった。
「っ、!ア、アンタ蜘蛛だったんですか」
レインは首元から溢れてくる血を押さえながらフラフラとした様子でオーターを見ていた。どんどん顔色が悪くなっていくレインを見て、自分の口の中が血の味でいっぱいになって、オーターは我に返った。
「……すまない、お前を食べるつもりなんて、傷つけたくなかった……」
事の重大さに気づいた時にはもう遅く、いっそ死んでしまいたいほどだった。いや、でも毒でもう死ぬんだもんな、と一人でそう考え、毒の影響か倒れ込みそうになってしまった。いや、レインの毒で死ねるならまぁいいか、と思っていた。
「一人で勝手に死なないでください、俺のこと食べて。俺も一緒に連れてってください…」
そう泣きそうな顔で言われ、オーターはレインと一緒に行かないといけないと、レインの願いを聞かなければいけないと、そう思いもうほぼ感覚がない体を必死になって起こし、座り込んでいるレインにキスをし、いろんな箇所にかぶりついた。
痛みに喘ぐ声が聞こえなくなったことに気がつくと、レインは既に息をしていなかった。体は食べられたあとで肉が露出している部分もある。目の下は涙の跡で赤くなっていたけれどその表情はどこか満足げに見えた。
オーターはボロボロになったレインの死体の隣に倒れ込み、震える手をレインの頬に添え、綺麗に残っている口元にもう一度キスをした。一緒に行こう、という意味と愛情の意味を込めて。キスはレインの血の味がした。その途端、意識を失った。