「修学旅行という名の戦い」
「……なんでオレが、こんな修学旅行でまで集合時間ギリギリの真波のケツ追って走んなきゃいけねーんだよ!!」
早朝の京都、嵐山の渡月橋。荒北靖友はリュックを片手に、全力ダッシュしていた。
その数メートル先を、制服のネクタイをゆるめた真波山岳が、ニコニコしながら小走りしている。
「すみませーん、荒北さん!宿の部屋が気持ちよくて、つい…」
「謝るならもっと早く起きろォ!!」
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修学旅行2日目。班行動のメンバーは、東堂・新開・福富・荒北・真波という、もはや遠足という名のチーム総北対策会議みたいな班になっていた。
清水寺に着けば、東堂が早速はしゃぐ。
「見たまえ!この朱色の伽藍、まるで我が美しき姿を引き立てるための舞台ではないか!」
「東堂、記念写真のフレームに1人で5回も映るのやめろ。オレの顔が全部お前の髪で隠れてんだよ!」
「むしろありがたく思え、荒北。美の一部になれたんだからな!」
「ぶっ飛ばすぞナルシスト!」
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新開はというと、修学旅行限定の「八ツ橋詰め放題」に夢中。
黙々と箱に山のように詰め込んでいたが…
「……チョコ味が……入ってない……」
「新開さん、八ツ橋って本来そういう……」
「なら、オレが作るしかないか……チョコを……八ツ橋に……!」
「ちょ、やめろ!なんか職人魂に火がついてるゥ!」
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一方、福富は地図とスケジュール表を広げて、集合時間の計算をしていた。
「次の拝観は13時。移動時間を考慮すると、ここでの滞在時間は12分30秒」
「まるで軍隊のスケジュールじゃねぇか……」
「計画通りに動けば、全てが無駄にならない。修学旅行も、勝ちに行くぞ」
「いや、勝ち負けねぇから!!」
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夜の宿では、男子部屋でトランプ大会。
最初はババ抜きのはずだったが、真波の気まぐれで「七並べ」に変わり、いつの間にか「坊主めくり」になっていた。
「坊主!福富さん、残念でしたね!」
「………」
「ま、負けた福ちゃんが“お風呂掃除”な!」
「異議は……ない」
(あぁぁ、福ちゃんゴメンネェェェ!!!)
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翌朝、窓の外には霧のかかる京都の街。
荒北はこっそり早起きして、宿の外の自販機で缶コーヒーを買った。
缶を開ける音とともに、隣に人の気配。
「……福ちゃんかよ。こんな朝早くから」
「お前こそ。夜はあれだけ騒いでいたのに、早いな」
「……ま、なんだ。こういうとこ来ると、ちょっとだけ“思い出”とか意識すんだよ」
「ふ……そうだな。残りの時間、大切にしよう。全員で」
荒北は缶を一口飲み、にやっと笑った。
「オレは、忘れらんねー思い出にしてやっからな。この修学旅行も」
福富は、静かにうなずいた。
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おまけ:真波の感想
「修学旅行、楽しかったですねー。でも、やっぱり一番楽しかったのは——」
「オレの全身写真コレクション、だろう?」(東堂)
「ちげぇよ!!」
(荒北)
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ひつまぶしたべたことなーい