「もしかして心配した?」
自分から甘えるのは恥ずかしくて言えないけど、ばれてしまってるなら潔く言葉にする方が楽。
不思議だよねぇ。
んーと言いながらガサガサとつまみの袋を開ける相手へ、顔をうつ伏せたまま聞いてみる。
「そんな気がして?」
「あ!あれね、SNSか」
「それも見たけど、それの前に解ってた」
……
そういや投稿してからすぐ来た割に、コンビニで買ってきてるし…
「え、以心伝心?」
「静かな夜だなぁと思った時に、なんとなくそんな感じしたから」
目元がじんわりしそうな感覚に反して、ふははっと笑う。
今の顔は見せたくないから、下を向いたまま起きて座る。 オフでは長めの前髪をかきあげたくなるけど、こういう時は隠してくれるから便利。
「おい、待て待て。ビールは止めとこ?」
缶を開けようとしてる相手の手元に気づき、急いで取り上げる。
「ええ?!なんで?!」
返してーと取り返しに来る手をかわしつつ、
ベッドの端へ逃げる。
「ここはホテル、しかも深夜で煩く出来ない。明日も帰ったら仕事で、何よりビール少しで悪酔いするからだめ!」
大声で歌い出したり、絡まれたら本当面倒なのよ。
しかも部屋には僕しかいないじゃない。
必然的に止めるの僕になるのよ。無理!
「えーーーーー」
「えーーじゃない。ほらこれあげるから」
ビニールからジュースを取り出して握らせた。
まるで自分が買ってきたかのようだが、若井が買ってきてくれた物である。
「あ、ありがとう」
「…」
ビールを取り上げられ自分で買ってきたジュースを渡されただけなのに、お礼を返す相手から瞬時に顔をそらして笑いを耐える。
ばかだな、もう。本当良い奴。
気づいたら笑ってた。
消えはしなくても、ほんの少しだけ闇がうたた寝してくれた気がする。
「涼ちゃんにもメールして起きてたら呼ぼうか」
「そうだな」
家族?
それ以上。
不思議だけどあったかい。
終