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久和千秋がいじめのターゲットになってしまった理由。それは、よくある人間関係の拗れだった。
彼女は、人形の様に可愛い顔がモデルの様にスタイルの良い体に乗っかっているような、入学時に校内を少しザワつかせた美人だった。性格も、明るく優しく誰にでも平等に接する、太陽の様な性格だった。ただ、マイペースで動きが遅いため、一部の女子から「ぶりっ子」と呼ばれていた。
部活は水泳部に入っていた。幼少の頃から水泳を習っていたらしく、彼女の泳ぎを見た先生が「まるで人魚の様だった」と絶賛する程泳ぎが上手だったらしい。
美人で、性格も良く、スポーツもできる。それだけで妬まれやすい人物なのに、ある問題を起こしてしまった。それがいじめの原因らしい。
水泳部の3年生に小鳥遊詠司という女子人気の高いイケメンがいる。噂によると、彼は千秋の泳ぎの美しさに惚れたらしく、沢山の女子からの告白を断り続けてきた彼が、千秋に告白したと言うのだ。
千秋は迷った。千秋も、小鳥遊の猛アタックにより心が傾いていたが、ある人物により牽制を受けていたから。その人物こそ、いじめのトリガーとなった河野陽葵だ。彼女も水泳部の3年生で、小鳥遊に1番近く、1番想いを寄せている人だった。陽葵も、少し性格がキツかったものの美人で、男女問わず人気だった。だから、水泳部に入った女子生徒は絶対に小鳥遊に恋慕を寄せることは許されず、陽葵の恋を応援しなければならない決まりがあった。
大事な先輩の為にも、小鳥遊からの告白は断らなければならない。だが、目の前の小鳥遊の強い眼差しを無下にすることも、優しさの塊の様な千秋には出来なかった。
結局、小鳥遊の手を取った千秋は、陽葵と彼女を支持する女子により迫害を受け、水泳部を退部した。その後、元々千秋を目の仇にしていた生徒たちも加わり、いじめへと発展した。
もう、千秋と小鳥遊の関係なんてどうでも良くなる程、狂気じみた憎しみと快楽は渦巻き、今も千秋を沈めていっていた。
でも、私は可哀想だとは思っても、無干渉を決め込むことにした。それは未儚も同じだ。理由なんて、至って単純。まだ入学して2ヶ月も経ってないのだ。無駄な善意でこれからの3年間を黒色で塗りつぶす程、私たちは馬鹿じゃないのだ。“普通の人ならそうする”“当たり前の判断”なのだ。ある意味人間の保身本能を、誰が悪と言えようか。自分を守って何が悪い。いつも先生は「まず自分の身を守れ」と言うのだから、私たちの行動は何もおかしくない。それを批難する方が狂っているのだ。
私は……私たちは、まだ非力な中学生で、自分の身を守ることで精一杯な小動物なのだ。
おかしくない。私は何も間違っていない。私はあの小説の主人公の様にはなったりしない。今までも、これからも、彼女たちとの関わりを無視し続ける。絶対に。