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「なんだ、金本、全然、箸がすすんでないじゃないか。嫌いなものあったか?」「あ、いえ。普段、こんな高級な駅弁たべないので」
「ハハハっ。そうか。しっかり食べろ。頼んだぞ。昇り調子のアイドル起用だからな。当たれば名古屋支局の株もあがるな!」
「…そうですね」
“参ったな…企画…正直、アイドル、分かんないだよね…Keys-1感って、どんなだろう。誰か、チーム内に、ファンの子いるかな”
こんなとき、渡辺がそばにいてくれたらな…
実は、渡辺と私は付き合っていた。
だから、渡辺の栄転が決まったとき、私は素直に喜べなかった。
3年目だった。
春に大阪に行ってしまって、すれ違いから別れた。あんなに気の合う2人だったのに、別れは案外あっさりしていた。
大好きだった彼に、会えない寂しさからキツイ言葉を発してしまう。自分は遠距離恋愛には向かない体質だということは、認識していたし、これ以上、嫌われたくなかった。
ありがたいことに、新採がチームに加わったり、アート担当が増えたり、チーム全体のすすみ具合を調整したり、業務が増えて忙しくなった分、彼のことを考える時間がなくなっていった。
ガチャン
マンションの鍵を開ける。
玄関近くに、お土産の「東京バナナ」と「シュガーバターの木」を置いて洗面所に向かう。
久しぶりの出張で疲れた。本来、営業チームが行くべきところ、部長から指名されてしまっては断れない。
「はぁ~…足、パンパンだよぅ。部長、隣だから、お肉の味なんて分かんないし。だいたい、”Keys-1感”って、なんなんだよぉ」
私は一人、大きなクッションにうっ潰して、愚痴った。
リンリン♪
LINEだ。誰だろう…
『お姉ちゃん、元気?もうすぐ、なべちゃんの誕生日だね!夏休み、帰るから、会えるかなぁ?』
妹のかすみだった。
『元気!もぅ、だから、渡辺とは別れたってば!』
『えー、ホントに別れたん?』
『別れたん、ほんま』
『ふぅーん…あんな仲良かったのに?』
『大人には、色々、事情があるん!』
『まぁた、大人、やって!お姉ちゃん、やらしいわぁ。私だって、もう大人!お酒飲めるもーん』
『あんたは、お気楽でええわ。大学生、うらやましー』
『それは、それは、お気楽で悪うございました。』