短編集第3話 IMAWANOKIWA/いよわ
- ̗̀⚠︎ ̖́-
・カプ要素なし、登場人物は桜のみ(+α)
・死ネタ
・原作無視
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〘 僕は、君の事が好きだ。一生離さない…〙
〘 私もよ、貴方の事…愛してる。 …end〙
ぴっ
(…あのドラマも、ハッピーエンドで終わったんだな)
夜中、テレビの電源を切り、ごろんとベッドに横たわる。
今は暗くて分かりづらいが、天井は相変わらず真っ白。天井だけではない。壁も、床も、ベッドも、全部が白い。
それはそうだ。此処は病院なのだから。
桜は、ある病気にかかった。かなり重い病気で、風林を出てほとんど1年、このベッドで過ごしていた。
桜がかかった病気は、近寄ると感染する可能性があるため、クラスメート達も見舞いには来れず、会えるのはせいぜい医者と看護師だけだった。
その医者と看護師には、容姿のせいで変な目で見られるので、最早ベッドだけが桜の居場所となっていた。
「…ッ、げほ、ッごほ…ッ」
いつも通り、咳き込めば口からは血が出てきた。
はあ、とため息を付き、もう一度ドラマでも見ようかとリモコンを取った時、ふいに周りが明るくなった。
「…朝か、」
開けっ放しにしていた窓からは、淡い朝日の光と、肌寒いそよ風が入ってきた。
いつでも自由な太陽光と風がなんだか鬱陶しくなって、桜はじっと外を睨んだ。
それもなんだか馬鹿馬鹿しくなって、再び横たわり、目を細めた。
(早く楽になりてぇな。)
ふいにそんな事が頭をよぎった。
医者からは、君はいつ死ぬかは分からないと言われた。
寿命が短い訳でも、普通の人くらい生きられる訳でもない。本当にわからないそうだ。
(そんな事なら、いっそ……)
『退屈?』
「…ッ、!?」
澄んだ声が窓の外から聞こえて、思わず桜は目を見開いた。
「…な、何だ、お前、?」
外には不思議な生き物が居た。白い服を着た子供。
でも普通の子供ではない。羽が生えていて、ふわふわと浮いている。
それに、頭の上に光る輪があって、これはいうなれば…
『天使だよ。』
「…は、?」
『君、退屈してたんでしょ?ボクもちょうど暇だったんだ。ねぇ、お話しよう?』
桜は、毎日…決まって朝日が昇った頃に、天使と話をするようになった。
最初こそ天使を疑っていた桜だが、次第に天使に打ち解けていった。
天使の瞳は、とても美しかった。
今はもう誰とも会えない、孤独な桜の心の全てを奪う程。
そして、天使と出会って2ヶ月が経とうとしていた頃。
その日はいつも通り、朝は天使と話して、昼はドラマを見ようとしていた。
でも、なぜだかその日は、何もやる気が起こらず、桜はずっとぼーっとしていた。
夕方には、意識が遠くて、寝そべっているのにくらくらしていた。
(なんか、今日は…ずっと…眠い、な…)
その時。
『サクラくん。』
声が聞こえた。いつもの、天使の声。
「天、使…?なんで…、今は、夕方…」
『うん、そうだよ』
「…なぁ、今日、俺…変なんだ…、ずっとくらくらして……」
『…おいで』
天使は、開いた窓から手を差し伸べた。
天使の周りは、まばゆく光っていた。
朝日と同じ、淡い白色に。
「…あぁ、”やっと”なんだな……」
桜は横たわった儘、そっと、光の方に手を伸ばし、ゆっくり、ゆっくりと目を閉じていった。
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