カチャ…カチャリ、カチャ
皿とフォーク、箸が軽くぶつかる音が食堂に静かに響き渡る
その食堂のど真ん中に不仲と言われている2人組が静かに食事をしていた
この気まずさを誤魔化すために精一杯口に食べ物を詰めモキュモキュと食べている潔世一は流石に自分から誘っておいてこれはないんじゃないのかと罪悪感と悔しさからこの気まずい雰囲気を破った
ダンっ
「…あ?」
訳も分からず連れてこられて機嫌がダダ下がりなカイザーは静かにイラつき始めていた
(Kaiser,what kind of food do you like ?)
「…は?なんだ、その初級英語みたいな質問は」
早くとカイザーの手を軽く叩いた
「はぁ、世一くんは物好きねぇ…パンの耳のラスク」
予想外な回答に吹き出してしまった
「クソ汚ぇ」
(really?)
「嘘を言ってどうする」
まさかのラスク
確かにあれは美味しい
だが見た目の割に予想の斜め上を向いてしまった
人を見た目で判断するのは良くないがあのカイザーがだぞ?
青薔薇を添えたワインとか言い出すんじゃないのかと思ったが
「…なんだ、その言いたげな視線は」
(Nothing)
言おうとしない態度にイラッとしたのか乱暴にご飯を口に詰め込んだ
「…世一くんは俺と食事なんてして、楽しいのか?そんな事をしている暇があるなら玉蹴りでもしたらどうだ」
腹立つ…
あいつを前にして最初に思うことはこれだった
日常的会話をしようと発せれば煽り言葉で返される
でもアイツは、なんか…なんだろ
ひとりぼっちみたいな
嫌、ネスとかカイザーを気にかけてる人もいたり愛されていると思うこともある
ただ、なんか…
人生は1人で十分みたいな
人の温もりを知らないみたいな
寂しいやつって長い間話してた時に気づいた
2番目に思うことは寂しい人と思うぐらいには
三つ編みをしている後ろ姿を見て肩を優しくトントンと叩いた
「潔?どうした?」
(話したいことがあって)
「任せろ任せろ」
ふんっと胸に握りしめた手を置いて誇らしげに顔を歪ませる姿はなんとも愛らしいと思う
(サンキュー!)
「相棒だからな」
親指を上にあげてずいっと目の前に出してきた
「で、話したいことって?」
(実は…)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(Hey,Kaiser)
「あ?…誰かと思えば、ヘナチョコ世一くんじゃないか。あれからどうだ?声は…あー悪い悪い出ないから紙を使ってんるだったな、かわいそーに 」
ほら、日常的会話をしようとしてもこうだ
まるで何かから逃げているようだ
(so what? and its you fault!)
「…で?」
こいつは罪悪感とかないのか…!
いや、こいつに人間性を求めるのは時間の無駄だ
「用がないなら散れ、目障りだ」
(how meny your family?)
「…お前に教える義理はない」
先程までニヤニヤとウザったらしかった顔が何人家族と聞いた途端に雲行きが怪しくなった
「まず、なぜそんなに質問を続ける。今日の朝だって好きな色はなんだとか、誕生日はなんだとか…何を企んでいる」
ギロリと目を鋭くさせ狼の群れが兎をの周りを囲んでいるような気持ちに差せられた
(I want to know you)
「…知ってどうする」
(I don’t know and I don’t get it)
「…虫唾が走る…クソキモ」
怪訝そうな顔をするカイザーにイラつきはしたもののその反応をするのは無理もないと思った
俺ですら分からないのにコイツがわかるはずない
「いない」
突然の発言に記憶でもぶっ飛んだのかと凝視した
何を言っているんだ?いない?じゃあお前はどこから生まれ出てきたんだ?
母親の腹の中からだろ?まさか雲の上と言わないよな?
流石に信じられないからな?
「…質問はそれだけか?」
(wait,Excuse me.I don’t got it!)
※この場合のExcuse meはもう一回言ってという意味になります
「俺に、実の両親はいない」
面倒くさくなったのかスタスタと自分の部屋の方まで言ってしまった
『…俺、入っちゃいけない領域入った?』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(てことがあってさ)
「あー…意外意外、アイツ親にめちゃくちゃ愛されててあの態度だと思ってた」
(俺も最初はそう思ってたけど、なんかあいつって寂しい人って言うか)
「…俺には煽りに煽ってくる気分屋にしか見えん」
(寂しかろうが煽り言葉は煽り言葉で返す)
「さすが潔、さすいささすいさ」
と、この会話が1時間前に行われたのだが…
「ん」
目の前に紙切れを押し付けそっぽをむくカイザーを見てハテナマークで頭がいっぱいだった
(what?)
「…世一くんがいつまでも玉蹴りをするもんでアドバイスでもやろうかと思ってな」
(thanks a lot, Kaiser)
※thanks a lotこの場合「余計なお世話」と訳されます
「おやおや〜?助言は素直に受け取るべきだぞ?クソ世一くん、それとも自分の弱さから恥ずかしくなったのか?」
(very funny joke)
※very funnyとても面白いと訳すのではなく「つまらない」と訳されます
「俺はお前に構ってやれるほど暇じゃない、それじゃあなくそ世一くん」
先に寄ってきたのはお前だろ、と言いたかったが書く余裕もなく廊下の角で消えてしまった
まぁアドバイスはありがたいためもらってやらんこともないが
ぴらっと2枚折りにされている紙を丁寧に開いていくと”甘いのが好きそうな世一くんは紅茶よりも蜂蜜茶を飲むのをおすすめする”とガタガタな字で書かれた平仮名日本語が書かれていた
『…なるほど、喧嘩か』
瞬時に理解した脳みそはカイザーが歩いていった方向に向かって走り出した
「おい、蘭世」
「?何、何」
「…日本語、クソ教えろ」
「……何故?」
「下々共に教えるわけないだろ?」
「…いいんだな?俺が教えないって言う選択があることを忘れてないよな?」
「な!卑怯だぞ!」
「教えて欲しかったらそれ相当の態度がある」
ふんすっという明らかに勝ち誇った顔をする黒名に悔しがりながらも「…おしえて…くれ」とオネダリをするカイザーを誰かが見たとか何とか
完11/5