異能街の路地を埋め尽くすように現れた影たち。その中で、特に目を引いたのは、四人の異能者だった。異能街で「四天王」と呼ばれる彼らは、それぞれが特異な能力を持ち、街の秩序を保っていると言われている。
三寳は第三の口をしっかりと閉じ、周囲の異能者たちを見渡す。
「なるほど、こういう奴らがこの街を牛耳ってるってわけか。」
ウラジーミルが身を縮め、耳をピンと立てる。
「にゃー、まさか異能街四天王と直接対決になるとはな。」
アーサーは茶葉を小さく振りながら、落ち着いた口調で答える。
「そうですね。ですが、これもまた異能の楽しみというもの。」
その瞬間、異能街の広場に現れたのは、壁男と呼ばれる異能者だった。
身長2メートルを超える巨大な男で、その体のほとんどが壁のような質感になっている。肩を越えた部分からは、無数の石壁が体の一部として伸び、周囲の物体を吸い込むかのように引き寄せる。
「よぉ、三寳櫻……異能食いのご無礼を謝らなきゃいけねぇな。」
その言葉と共に、壁男は一歩踏み出すと、巨大な壁のような腕を前方に伸ばす。
「これが俺の異能『壁面支配(ウォールマスター)』だ!」
壁男の腕が大きく伸び、そのまま三寳に向かって激しく飛んできた。
三寳は軽く身をよじり、壁男の腕をかわす。
「ちょっと待っててくれよ。食事中だからさ。」
第三の口をわずかに開け、壁男の腕が地面に吸い込まれる。だが、壁男の腕はすぐに元に戻り、また巨大な壁として立ち上がる。
「やっぱりダメか!」
壁男は舌打ちしながら、空中に巨大な壁を次々と展開し、三寳の周囲を囲い込んでいく。
「さっきからうるさいなぁ。メタボな壁男が。」
三寳は舌を出して笑うと、手のひらを地面に押し当てる。
「これでどうだ。」
彼女の周りに生えた植物が壁男の壁を絡みつかせ、動きを封じ込める。壁男はもがきながらも、その壁の一部を再構築していく。
「くっ、強い異能だが、簡単には――」
その時、突然、広場の隅から一人の男が現れる。
虚仮は、異能街の四天王の一人で、細身の体に常に浮かんだ虚ろな笑みが特徴だ。その笑顔が、まるで無敵の異能を誇示するかのように不気味に光る。
「おやおや、壁男、ダメだねぇ。やっぱりこの子には通用しないか。」
虚仮が軽く手を振ると、その周囲の空気が歪み始めた。
「俺の異能は、『虚無の領域』。何でも消す、何でも無くす。」
虚仮の手が空中を撫でると、壁男の壁が次々に消失し、彼の存在そのものがぼやけるように消え失せていった。
「おいおい……やられるとこだったじゃないか、虚仮。」
壁男はその場に膝をつき、息を切らせながらも立ち上がる。
「ま、まぁ、ありがとうな。虚仮。」
虚仮は意味ありげに微笑んだ。
「お互い様さ。」
そして、次に現れたのは、異能街四天王の中でも最も謎めいた存在、摩耶だった。
「ようこそ、異能食いの三寳櫻……俺たちを楽しませてくれるってことだよな。」
摩耶はにやりと笑い、その一歩を踏み出した。
「さて、俺の番だな。」
異能街四天王との戦いが本格的に始まる―――
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!