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恋愛恐怖症
「好きですっ!付き合ってくださいっ…!」
最大限の勇気を振り絞って先輩に手を伸ばしたあの夏。
一生分のドキドキを味わったような気がした。
「…ごめんね。俺、好きな子がいるから…気持ちには応えられない」
私が差し伸べた手を、先輩は優しくやんわりと押し戻した。
「…そう、ですよね。あはは、すみませんっ、何か変な事言っちゃって。頑張ってくださっ…」
最後は言葉にならなかった。歯切れ悪く笑う私に、どこか申し訳なさそうな顔で先輩は去って行った。
そりゃあ、そうだ。先輩は学校一と言っても過言ではないほどの人気者で、私はどこにでもいる平凡な女の子。
告白したところで、OKをもらえる確率なんてそもそも少なかった…いや、なかったんだ。
でも、少しだけ…。少しだけ、期待してしまった。
先輩が「年下の女の子の事が好き」と言っているのを聞いて、私かも、と舞い上がってしまった。
年下の女の子なんて、この学校には何百人といるのに。
家に帰ってから、たくさん泣いた。友達と電話をしながら、ずっとずっと泣いた。
失恋って、こんなに悲しいんだ。当たり前のことを、今初めて知った。
あれから一年。
先輩への気持ちはもうなくなっていた。
振られてから数ヶ月は先輩を見るたびに心が痛めつけられ、泣いてしまいそうだったけれど、今はもうそんなことにはならない。
でも…気持ちは吹っ切れたはずなのに、なぜか恋をするのが怖くなっていた。恋愛恐怖症になっていたのだ。
振られるのが怖くて、告白どころか恋をするのもままならない状況になる、一種のトラウマ病だ。
数週間前、仲の良い男子に告白されたが、いずれかは振られてしまうのではないかと考えてしまい、断った。
昔の私なら、OKしていたかもしれないのに。
周りの友達は、学生らしく恋愛しているのに――。