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最終話:「心の中で」
文化祭が終わり、すべてが元通りの静かな日常に戻ったように感じていた。しかし、えりと斗真の関係は、文化祭の準備からずっと変わらず微妙な空気が流れ続けていた。最初はただの喧嘩友達だった二人。お互いに強がり、嫌な部分ばかりが目立った。しかし、時間が経つにつれ、二人の間には知らず知らずのうちに変化が訪れていた。
それでも、私はずっと自分の気持ちに気づかないふりをしていた。斗真が嫌いなわけではない。いや、嫌い。あんな意地悪で、カッコつけのどこがいいんだか…?ただ、彼に対する感情が一体なんなのか分からなかった。毎回、斗真のことを考えると胸がざわついて、何もかもがうまくいかなくなるような気がしていた。例えば電柱に顔面ぶつけるとか?
そして、今日はとうとうその決定的な瞬間が訪れることになった。
学校が終わり、いつものように帰る支度をしていると、斗真が教室にやってきた。普段のように無愛想に、しかしどこかいつもと違う雰囲気をまとっている。…へん。似合わない。
「おい、帰るのか?」斗真が声をかけてきた。
「まあ、そうだけど…」えりは少し驚いたが、すぐに冷静を取り戻して答えた。…急になんだ…?
「一緒に帰ろうぜ。」斗真は少し顔をしかめて言った。
「別に、私はいいけど。」えりはちょっと面倒そうに言いながらも、心のどこかで嬉しさを感じていた。
「おー。断らないなんて…」
「は?それはあんたがぼっちだから仕方なくですけど?」
喧嘩腰に言う。
二人は無言で歩き始めた。いつものように、どこかぎこちなさを感じさせる距離感。斗真の横顔を見ながら、えりは考えた。斗真はどうしてこんなに強引に、でもどこか無理をしているように見えるのだろう。彼の素直でない態度が、逆に胸を締めつけるような気がする。
「なあ、えり。」斗真が急に声をかけた。
「ん?」えりは立ち止まり、斗真の方を見た。
「お前…最近、俺のこと避けてるだろ?」斗真は真剣な顔で言った。
えりは思わず息を呑んだ。「え?避けてなんか…そんなつもりないけど。」
「でも、そうだろ?」斗真はちょっと苛立ちを見せながら続けた。「俺が何か言っても、お前はあからさまに冷たくなってるし、前みたいに喧嘩もなくなったし。」
「喧嘩は…なくてもいいんじゃない?それとも、喧嘩したいの?」
喧嘩望む馬鹿がどこにいるの?
しかし、斗真の目は真剣だった。
「お前、俺が何かしたか?」斗真が少し顔をしかめて尋ねてきた。
えりはその質問に対して、言葉が出なかった。実は、斗真が無意識のうちにしていた態度に、えりは敏感に反応していたのだ。彼の冷たい態度に傷つき、でもそれが自分の心を揺さぶるものだと気づいていた。しかし、それを認めることが怖かった。
「別になにも…」えりは言いかけて、すぐに言葉を止めた。
斗真はじっとえりを見つめ、少しの間があった。えりの中で何かが崩れるような感覚があった。そして、ついにその思いを口にする瞬間が訪れた。
「私が…どうしても気になるたけだから。」えりはゆっくりと、しかし確信を持って言った。
斗真はその言葉に驚いた様子だったが、すぐに自分の顔を真剣な表情に変えた。
「お前、俺のこと…?」斗真は一瞬信じられないような顔をしていた。
「うん、どうしても気になるだけ。なにか?」えりは小さく息を吐き、目を伏せた。
その瞬間、斗真が一歩近づき、えりの目を真っ直ぐに見つめた。二人の間に、もう何も遮るものはなかった。
「俺も、お前のことが気になってる。」斗真は少し照れくさそうに、しかしはっきりと答えた。
えりはその言葉に驚き、しばらく黙っていた。そして、ようやく微笑みながら答えた。「でも、今までどうしてそんなに強がってたんだろうね。熱のときとかチャンスだったくない?」
斗真は少し困ったように笑った。耳が極端に赤くなってる。「俺、あんまり素直になれないから。」
「私も、ね。」えりは少し照れくさそうに言った。
その後、二人はしばらく黙って歩き続けたが、その空気の中にあった微妙な距離は、すでに消えていた。斗真とえりの関係は、確かに新しい一歩を踏み出した瞬間だった。
「初デートどこにする?」
「は?俺?どこでも」
「うわー。酷くない!?」
犬猿の仲から私たちがカレカノになるまで。長かったけど、いつでも斗真が私の隣にいてくれそうで!嬉しかった。
※ちなみに付き合って初日から兄姉にはバレたよw