「お早う、ニコラーシャ。来ないのか?朝飯とっくに出来てるぞ?」
眩しい程の日光を背負い、恋人である彼の顔がドアップになる。我が彼氏乍らに迚も優しくて穏やかで……まぁちょっと不器用で全てを見られてると言うかさ、ストーカーされてるような事が時々あるし怖い所もあるんだけどね。この世で一番大好きな自慢の彼氏だ。
料理が終わった直後に呼びに来たのか彼はエプロンを見に纏い、髪を一つ結びにしてハーフアップにして居る。昨晩彼が服を着せてくれた様で少し腰は痛むが何とか動ける、サイドテーブルからヘアゴムを取り彼とお揃いのハーフアップにした後。とたとたと忙しなくリビングに向かった。
「お早うニコラーシャ、って御前……それ、私の」
「嗚呼、通りでサイズが小さいと思ったらシグマ君のシャツ間違えて着ちゃってたのかぁ!!ごめんね!!」
少し恥ずかしそうに少し目線を逸らした僕の顎に彼は手を置いた。
慌てて服をはだけさせ脱ごうとするが其れも叶わず、彼の言う儘に僕の目と彼の目が合う。ラムネ瓶の様に何処迄も透き通る透明な瞳に見つめられ、少しキュンとしてしまった。此れが恋とか言うやつなのだろうか
「………可愛いから脱ぐな。ニコラーシャ、此方向け」
もしかして、キスされるのかな……淡い期待を胸に抱きぎゅっと目を瞑ると耳を甘噛みされた
「へっ、?」
てっきりキスされると思って居たものだから素っ頓狂な聲を上げて彼の顔を伺うと、小悪魔の様に悪戯に彼は微笑んでいた。俗に言う何時もの仕返しとか言うやつだ。
唖然とする僕に彼は軽くデコピンした、ほんの一寸痛いが彼の戯れ合いならば其の痛みすらも迚も愛おしい
「ふふ……期待したか?ごめんな。」
軽く口元を手で隠し、明るく彼を見て居ると何だかどうでも良くなって来た………
「もう〜!!」
ぷくーっと頬を膨らませ怒る僕にシグマ君は不意を突きそっと口付けを落とした。
彼は一見恥ずかしがり屋で一途な様で案外キザな所が有る。此れが今時の若者の云うギャップ萌えと云うやつなのか……?
「ほら、ちゃんとキスしてやったから機嫌、治せ。後、今日は少し頑張ったから冷めないうちに食えよ?」
ぶっきらぼうに頬を膨らませ拗ねる様にそっぽを向いた彼に彼らしいな……とほっこりしつつ、手を合わせた
「へへ、ありがとう!!!ご飯貰うね。戴きます!!」
「どうぞ。」
丁寧に置かれたフォークを手に取り、既に切り分けられて居る彼が作ってくれた小洒落たフレンチトーストをゆっくり口に運ぶ
とあっという間に口に旨味が広がった。蕩けるようにふんわりとした其れは外側はカリッとして居て良く焼けて居て中はふんわりと綿飴の様に柔らかな食感が広がって居て、生地の隅までちゃんと染みた味を考えると相当手に寄りを掛けて作ったのだろう
「んん!!美味しい……!!」
「ふふ、なら良かった。昨晩用事が有るって言っていたけれど……何処か行くのか?」
アンティーク調の雰囲気のある木製テーブルに頬杖を着いた彼はふとそう尋ねる。
そう言えば昨晩のピロートーク時に明日出掛けると云うことだけさっと話して睡りに着いたから、余り其れについて良く話せなかったな
「んー、今日ね!ドス君とランチに行くんだぁ!!」
うんうんと朗らかな笑みを浮かべ途中まで聞いて居た彼だが、ドス君の単語を聴くと途端に表情が曇る。
正に泥雲の差だ
「は、?フョードルと?絶対に駄目だ、其れだけは許さない。」
「え?如何して?会っちゃダメなの?」
今迄に無いくらい表情が抜け落ち真剣な顔をする彼にほんの少し恐怖感を抱いた。だって、こんなにも焦って居て余裕の無い彼を見たのは初めてだから、
「………………ヒョードルは御前の事を恋愛的な目で見て居るからだ。」
「あぇ…………?」
そんな事、思いもしなかった。確かに妙に僕と共に行動を取りたがっていたりする事はあったが……真逆、
「だからもう会わない方がいい」
「………………じゃあ、せめてお別れの挨拶、させてくれるかな」
「それくらいなら、まぁ」
全て食べ終わり、手を合わせた僕を冷静に彼は見つめた。
今日の彼は何処か変で何かが恐い。なぜ、其処まで…………
嗚呼、彼の声はどんなのだったっけ。心を蝕むピンク色の店内に身を委ねた
彼に見送られゆったりと電車に揺られながら待ち合わせ場所に着いた。昨日は夜遅くまで行為に専ら集中していたからか、迚も眠たい
「あ!!ドスく…………ん……」
彼に会った瞬間、口にハンカチーフを押し付けられ、さらに強烈な眠気に思考を奪われる。駄目だ眠ってしまう……こんなの、誘拐じゃんか、シグマ君の云う通り、家で大人しくして居れば……よかった、ごめんなさい、シグマ君、僕の我儘の、せいで、
「おやすみなさい、僕のニコラーシャ。」
赤子のようにすやすやと可愛い寝顔を見せ安らかに眠りに落ちた彼を傷つけぬように優しく優しく、抱き抱え、其れとは裏腹に彼を犬用の首輪とロープで拘束した
酷く霧が立ち込めるとある地下のバー。僕は其処を貸切にして愛するフィアンセへと慕情を伝えることにした。霧が出て居ては咳が出てしまう為簡易ガスマスクを着けて
ただ、無理矢理連れてこられて監禁されている彼は不機嫌な様だ。
「………今更、裙は何しに来たの?僕がキミを裏切った復讐かい?ハッ、其れにしては随分と幼稚だね」
僕の姿を認めるや否や、彼はキャンキャンと五月蠅く吠える子犬の様に訝しげに威嚇する
組織の方針に抗い、作戦で死ぬ予定だった彼はこうして息をして居る。確か、彼は同組織だったシグマさんと交際して居た筈……だからか。可哀想に…………必死に僕から恋人を、自分を守ろうと躍起になって。憐れだ、滑稽だ。正に道化だ
「いえ?実は僕、貴方の事を好いて居ましてね。僕と交際してくれませんか?」
「は?」とでも言いたいのだろうが、口を開いた儘彼は何も話せずに唖然と口を開けた儘にしている。
暫く正気を伺う様な目で見つめられたが、僕の気持ちは変わらない。まぁ、彼が第一にシグマさんと結ばれた事を報告したのが僕だから、こんなにも驚いているのだろうが。僕のやる事のえげつなさや凄惨さだなんて、彼が一番知っている癖に……。何を云うのだろう
「別に良いんですよ?此の告白を断ろうとも…………。但し、貴方の恋人である彼の生命は保証しません。」
「はは、そんなテンプレート通りの脅し何て嘘に決まってる。誰に向かって嘘を吐いているんだい?僕は紛れない道化師だよ?」
何とか余裕を演出しようと啖呵を切る彼を他所に、僕は振り返り駆けた
ふわりと外套が円状に舞い、落ちる帽子を押さえながら。腕だけが拘束されて居た彼は何とか立ち上がりフラフラと僕を追いかけ……ようとした。然し、程無くして彼はパタリと地面に倒れ込んだ
気絶した訳では無い、転んだ訳でも無い。そう、彼を転倒に追いやったのは紛れも無く此の霧だ。
合成麻薬…………メチレンジオキシメタンフェタミン 、MDMA。別名、セックスドラッグ。
裏社会で薬物を使い乍らの性的行為、通称キメセクを行う際に用いられる薬物だ。
ニュースや新聞等で一度は聞いた事があるだろう此の麻薬は人工的にアルカロイドを掛け合わせ、自然麻薬のアヘンやケシよりも強力な効果を持つ。其の上、シルデナフィルも同時に作用させてある
良く、地下のバーで薬物を取り引きして居る。何て話を聞くが密閉空間のため直接吸って居なくとも効果は多少なりとも出るのだ。其の上此の霧は特に濃度を濃くしてある、まぁ錠剤よりかは効果が薄いが、濃ければ濃い程急性中毒の危険性も高まるからこれ位が妥当だろう。
「あッ、ふぅ、…………ぁ?うぅ、♡んっ♡なにこ、れぇ………♡♡♡あたまがぽわぽわすりゅぅ……♡♡♡♡へへ、♡」
MDMAには興奮と脱抑制、行動のコントロールが弱くなることを引き起こす効果がある。其れにより異常な程親密に接して来たり、性行為の数十倍の快楽を感じ、ずっと達して居る様な感覚に陥いる。
ガクガクと腰を痙攣させながら痙攣する彼は何処か恍惚とした表情を浮かべており、彼のテントを張って居るズボンは濃い染みを作ってだらし無く水溜りを作って居る
「あッ…………♡あぅっ、♡♡」
嗚呼、失禁したのか。恋仲である人が居ながらこんな姿を僕に見せるだなんて……ふしだらだ。
「ニコラーシャ、お漏らししちゃう可哀想な貴方には、躾が必要ですね。」
抵抗もせず、狂った様に笑う彼のズボンを下ろし、純白に染まる御居処を暴く。其処に陰茎を充てがう。が其処は迚も柔らかい
「んんっ♡ふぅあっ♡♡あぁっ♡♡♡おッ!!♡おッ!!♡♡♡」
………………元からシグマさんの物を呑み込んでいた。と云うわけか
「ひぃっ!!!♡♡♡んあぁっ!?♡♡♡あぁーーーッッッッ!!!!♡♡♡♡♡」
嫉妬の儘僕の全てを彼の奥底に叩き付けると、彼は大きく腰を跳ねさせ勢い良く精液を吐き出した
其れでも淡々とわからせる様に腰を打ち付ける。其の為にビクンッ、、ビクンッ、、と魚の様に腰が跳ねる
「お”ぉッ……!!♡♡♡ん”うぉっ、!?♡♡♡おッッッッ!!♡♡♡おほぉっ!!!♡♡♡」
汚い聲を上げ、彼の陰茎からはずっと絶えずにびゅくびゅくと白濁が飛び交って居る。
其れと共に涎をたらたらと垂れ流し、両眼がグリンと白眼を剥く……
「ん”お”ぉ〜〜〜〜〜ッッッッ!!!!♡♡♡♡」
想像を優に超える快楽に彼は結腸に陰茎が入ったまま大きく仰け反り潮を吹いて気絶した。
だが、そんな事僕には関係ない。彼の口側に周り、未だに奮い立つ陰茎を草臥れた口吻に挿れた。とろりと蕩ける唾液がじゅぷじゅぷと卑しい音を立て、陰茎が狭い咥内を上下する。正気を失った目は焦点が合わず荒い呼吸のまま鼻で呼吸する事さえ忘れ、息を苦しそうに切らして居る
「はぁっ…………ニコラーシャッ、出ます、」
吐き捨てた一言と共に彼の鼻を摘み頭部後屈あご先拳上法の様な形で顎を上げさせる。ごくりと上下する喉仏を見守った後
愛おしい彼を背負って外へと出た
「どうしたんだ?ゴーゴリ。昨日から様子が可笑しいぞ?」
「え、ええ、そう?はは、何にも無いよ!!」
………………昨日、ヒョードルに犯された。態々誘拐して麻薬まで使って、彼の元に返されて居た。
麻薬の副作用か、視界がぐにょぐちょして彼の顔が余り捉えられない。駄目だ、此の調子では彼にバレてしまう、目眩が酷い、
『御前何か性欲処理位にしか思って居ない。余り出しゃ張るな』
違うッ、……………違う!!!!!彼がそんな事言う訳なんか無いッ、!!幻聴だ!!
あぁ、だめ、ちがう、ちがうのに、いきが、できない、、、こわい、また犯されるんじゃ、?
「ヒュッ、はぁっ…………かひゅッ、ひっ、う、はッ………はぁっ、」
「お、おい!!矢張り何かあったのか、?様子が可笑しいぞ、」
様子の可笑しい僕を見た彼は即座に駆け寄り、宥める様に優しく背中を摩る、あぁ、落ち着く………、暫く背中を摩っていた彼だが、突然、僕を強く抱きしめた。あったかい
子供の様にほんのり温かい彼の全身で感じていると、気を利かせてか。彼は一旦慌てた様に腕を離し台所へと向かった
「そう言えば、御前。ずっとなにも食べて居ないだろう?朝食を作って置いたから食べたらどうだ?腹が満たされれば自然と少しは元気が出るんじゃ無いか?」
彼なりの気遣いか、お盆に乗った朝食が運ばれて来た…………筈だが、明らかに皿の上では夥しい量の蟲がわなわなと蠢いて居る
皿から溢れる迄に盛られた頭の潰された蚯蚓や翅の千切られた蝿、四肢の捻れたバッタ。此れが…………?朝食、?狂って居るの?
「どうした?食べないのか?…………もしかして、食べられないのか、?一寸待て、食べさせてやる。ほら、あーん」
彼はスプーン一杯におどろおどろしい其れを掬い、僕の口に運ぶ。近付けば近付くほどぎょろりと蟲の目が僕に剥き蠢きが増す、何匹かが動きを早めポトリと机に堕ちては四肢が捥げバラバラに成る
独特の異臭を醸し出す其れを唇に押し付けられた時触角が口に当たり、ビクリ……ビクリと痙攣する脚の細かな産毛がふさ、と唇を掠め攀じ登る……其処で遂にずっと堪えて来た嗚咽が限界点に到達した。
「う、お”ぅえッ………!!!ぉ、おげぇっ………!!!げほッ……!!ゴホッ……!うえっ、…………!」
ボタボタと音を立て、喉の奥底から込み上がって来た白濁がべしょりと音を立てて其れらの身体を満たして行く。ぷかぷかとゼリー状の白濁に蟲の足や目玉、が浮かび上がる。
「何だ、此れ、?精液、?どう言う事だ、?ゴーゴリ、、、まさか、!御前、ヒョードルに、」
いやだ、…………だめ、いわないで、ごめんなさい、きらわないで…………ごめんなさいッ、ごめんなさい、
燦然と反復して繰り返す謝罪の中、ふと自分の身体を見た。ただ其処にはこの世の地獄の様な悍ましい光景が残酷にも広がっていた
「はぁっ、ひゅ、はひゅ…………ぜぇっ、はぁっ、、、ヒィッ、………!?!?」
僕の口吻から何かしらの蟲の卵の様な物体が夥しい数吐き出され、爪の間にはぎっしりと蟻の頭部、身体には数十匹もの蒜が寄生していた
皮膚の下を辿り、食い破り新たな蝿が孵ってはまた巣食う。いつしか僕の身体は蟲によって覆われており、見る影も無い。何時しか蓮の華の様に穴だらけになった身体を蟻が伝い、触角が折れたダンゴムシが彷徨う。やめて、やめてよ!!痛いっ!!食べないで!!!
「クソッ、おい!!何をされた?正気に戻れ!!!!」
「あ”ぁ”う、!!い”ッ……!やぁっ、!来”な”い”でぇ”っ!!!」
気持ち悪い、、、こんなの、こんなのッ、!!現実じゃ無い!!
「ええ、そうですよ?今迄は全て貴方の幻想です。だって、シグマさんはとっくの昔に死んでいるのですから。」
え。
ぐしゃり。無惨な音を立て、幻想が全て全て崩れ去る。
嗚呼、そうか。彼は僕を庇って肉塊になって、生きる綱を全て失って風俗に堕ちたんだっけ。有る意味何も変わらないけどね
結局あれ程僕が恐れていた蟲と言うのは僕自身だった、過去の幸せだった記憶の繭に閉じ籠り、社会に出る事ができなかった不完全な存在。
遂には店にも愛想を尽かされてヨコハマの夜の街に立ち尽くしていた処を彼が奪い去った。あゝ、何て下世話で無情な噺なのだろう。
「ぁ、あ、………」
「さぁ、僕の愛おしい人。僕達を邪魔する邪魔者はもう居なくなりました。」
酷いよね。恋人にこんな事するだなんて、ごめんね、
「は?」
彼の頬を打った、。幻覚に蝕まれた儘。
愛する彼を故意的な事故で失い、風俗に堕ちた。見知らぬ男に抱かれ、身体を暴かれ。そう、ドス君もその一人そのまま薬物で僕を依存させて監禁した
「主人に逆らう駄犬には仕置きが必要ですねぇ、、、ッ?ほらッあーん」
ドス君は僕の唇を奪い、錠剤を流し込んだ
そう、これは全て、愚かな僕への罰なんだ、
「あ”ぁっ、!!♡♡♡どすくんっ!!♡♡あんっ!♡♡ふぇーじゃぁ、♡♡♡♡」
「よしよし、良い子ですね。ニコラーシャ。」
快楽に蕩け無ければ生きられない憐れな存在。だから今宵も道化師は厳罰を喰む
コメント
1件
今回も最高!!やっぱドスシグゴーは最高すぎる!!大好き!!でもシグマ君…悲しすぎるぅぅぅぅぅぅ! ゴゴちゃんも…もう! ドス君!何してんねん!でも僕は不穏系好きなのでもっとやr((