リクエスト
(パリ×ロンドン)
「あ」
会議室には先客がいた。
「…おはようございますパリ」
驚いたような顔をしたのもつかの間いつのも笑顔でそう挨拶してきた
「…おはよ〜ロンロン〜」
軽く返す
会議開始20分前に来るメンツはいつも同じで、ベルリンとかロンドンとかローマとかその辺。
ちなみに俺は遅れる側
ま、他にもいるけど〜
ニューヨークとか上海とか…あ、あと時たま東京とか
席について荷物を広げる
なんとなく向かい側の席にいるロンドンを見てると、彼が顔を上げ目が合った
「なんです?」
「お兄さんが早く来た理由とか…聞かない〜?」
「会議の始まる前に来るのは当たり前ですよ」
こ、こいつ…
「え〜…珍しく遅刻しなかったんだし、少しは褒めてくれてもいいじゃん」
「遅刻が当たり前なのが問題です。それに…」
頬ずえをついてこちらを見据えてくる
「いちいちそのような事で賞賛しなくては?
まるで子供ですね。」
朝からお得意の煽り。
ここでイラッとしたら負け。
別にロンドンのことは嫌いじゃない。
都市的にも尊敬できるし、仕事はいつも完璧。
人付き合いも表向きはいいし、顔も広い。
けどなー…その完璧人ってのが嫌なんだよな〜
「ひっど〜。お兄さんそんな子供っぽくないと思うけど?上海じゃあるまいし」
「いいえ?子供ですよ」
そう言うとロンドンは目線をパソコンに戻し作業を再開した。
つまんな〜…
ていうか最近こういうディスりが多い気がする…
言い負かしてやりたいけど口論では勝てたことないしな〜
そんなことをボーッと考えながらパソコンを開いた
パスワードを打ち込むと昨日見ていたサイトが開く
……そうだ。いいこと思いついた。
静かな部屋にタイピング音が響く。
ガタッと椅子から立ち上がる
パソコンを持ったままコピー機へ向かうと、使いたい資料をアップロードした
そんな俺をロンドンは横目で見て、すぐに目線を戻した
油断してるがいい。思いっきりからかってやる。
印刷が終わった。
パソコンだけを自席に置き、ロンドンの前まで来た
成功すれば話が広まることは無い。
失敗すれば恥さらし。
ギャンブルみたい
「ね〜。ここ、わからないんだけど〜…」
そう言って紙を手渡すと、綺麗な眉が少し動いたのがわかった
イラッとした証拠。
「…調べました?」
「調べたよ〜。お兄さんなりに〜」
そう。さっきコピーした資料は口にしずらいテーマに関するもの。
つまり説明するには”そういうこと”を省かずには不可能であった
「すみませんが、他を当たってください」
ま、そう言うだろうね。ここまで計算内
「え〜?こんなこともわからないのー?」
わざと返答のしやすいように言う。
そうすれば誰だってこう返すだろうね
「その言葉、そっくりそのまま返します」
ほら。計算通り〜
「へぇ〜?」
だよね〜。そう思うよね〜…
「何か間違ったことでも?」
「でもさっきお兄さんのこと子供って言わなかったっけ〜??」
一瞬動きが止まったような気がした
煽り文句は素直に受け止めて武器に。
返し方は完璧だった。
青い瞳がこちらを見た
目線から幼稚だと言わんばかりだ
「…貴方って結構根に持ちますね」
「それはお互い様。それにお兄さん子供だから難しいことわかんないな〜?」
わざとらしく首を傾げる
ほら。なにか言い返してみなよ
「……」
珍しくロンドンが黙った
内心スカッとしていたがまだ、まだ足りない。
今まで言われてきたぶんやり返してやる
その気持ちはすぐに行動に出た。
端正な唇を塞ぐ
突然のこと過ぎて動揺してるんだろう
抵抗が全くない
それなら…
足を曲げ、ロンドンが座っている椅子に乗せる
更には耳に触れると微かに身体が動いたのを感じた
ゆっくりと近づき、ネクタイを外し、ボタンを1つとったところでストップがかかった。
肩を掴まれ距離を取られる
「……なんのつもりです?遊びにしては度が過ぎるのでは」
冷静に見えるが耳が少し赤くなっている。
勝った。これは成功
「別に?ただの好奇心みたいな〜」
嘘では無い。どんな顔をするのか気になった故の行動だから
「ていうかさ〜?」
まだ開いていない2つ目のボタンを上からなぞる
「これだけで照れてる方がよっぽど子供じゃない〜?」
ロンドンの目線が逸れた
不機嫌な証拠。
「お兄さんのことからかってたけど…ほんとは寂しかった…とか〜?」
口角が自然と上がる
「違いますよ。貴方ほど人に飢えてません」
平然を装ってるようだが明らかに不服そうだ。
「そう。ま、お兄さん愛の国だし〜」
だからこういうことには慣れてる…というと何か言われると思ったからやめた
「あと、」
顔を覗き込んで無理やり視線を合わせた
「一応…俺の方が歳上なの…忘れないでね?」
そこまで言ってクルッと後ろを振り返る
満足。満足。
今どんな気持ちなんだろーな〜
「じゃ、お兄さん用があるから〜
会議までには戻るね〜」
扉に手をかけて、会議室を後にした
さてと、次はどうやってからかってやろう
閲覧ありがとうございます
このシリーズの小説初めてなので大目に見てください!!
リクエストお待ちしてます!
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