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昼ごはんのことを忘れて本屋に入る。初めて入ったが、何故か安心する。人は少ない、寧ろ俺らしか居ないんじゃないか。
「此処、好きなんだよね」
「よく来てる、」
元貴が口を開く。此処は色んな本を売っていて、如何してか分からないけど……あの絵本を売っている気がした。なんで、俺はこんなにも夢のことを考えているのだろう。
中を歩いていると、とあるコーナーを見つけた。
《絵本作家𓏸𓏸の本》
そう書かれた紙が棚に貼ってある。
「懐かしぃ……」
元貴が其処の本を見て手に取る。その本の表紙は、夢で見たもののまんまだった。
「その本…知ってる」
俺が言うと元貴は吃驚していた。
「僕、小さい頃からこの作家さんの話好きなんだけど…」
「今は引退しちゃったんだよね」
へー、と頷きながら別の本も手に取る。どうやら、絵はいつも同じ人が書いているようだ。
「でも、若井が知ってたなんて……」
少し嬉しそうに、そう呟く元貴。
「内容を知ってるとかじゃないけど、表紙だけ見たことある…」
「ふーん。僕の家にあるし、来て読んでみなよ」
そう言って棚に絵本を戻す元貴。
「うん、気になる」
そこで、俺は昼ご飯を買いに来た途中ということを思い出した。
元貴も用事を思い出したようで、2人とも帰ることにした。
「土曜、うち来てよ」
「うん!」
そう言って店を出て、元貴と別れる。
帰り道、俺の頭の中は夢のことでいっぱいだった。たかが、1つの夢にこんなにも心が動いたのは初めてだ。