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あれから3日、テストまで後5日になった。
ノゾムと安良木さんとの溝が深まっていくような気がしていた。学校で話し掛けようとしても時宜を得たようにどちらか片方が話しかけ、そのままどこかへ行ってしまうのだ。
「なに暗い顔してんだよ」
話しかけてきたのは隣の席の男子の安堂慎二だ。普段はおちゃらけているが、いざという時には頼りになる良いやつだ。
「ノゾムのことか?」
「…ああ」
やっぱりかという風に慎二はコクコクと頷く。
「偶然、昨日ノゾムともう2人がカフェに入ってくの見たんだよ」
「え?」
俺がいなくなったから、2人とも飯でも食べて楽しんでいるのだろうか、否、そんな薄情な奴ではないのはここ2ヶ月で分かっている。安良木さんはともかく。
それにしても、
「3人、見たのか?2人はわかるが…」
「ノゾムと安良木とあと1人、大学生くらいの女の人がいたな」
放課後になり、俺は学校から出る2人のあとを追っていた。
「慎二が言っていた通り、カフェに入ったな…」
カフェの窓に張り付き、2人の様子を伺っていると周りからの視線がすごいことに気がついた。店の中にいるとバレると思って外にいたが、こっちも存外やばそうだな。
「おい、そこのお前何やってんだ」
背後から女性の声がする。
「え!えっと、あの、何もしてないです!」
何を言っているんだ俺は…
突然話しかけられたことに動揺し、不審な態度をとってしまった。女性はそんな態度でさらに不審に思ったのか、より一層警戒心を上げ、眉を顰めた。
「…いま、店内の誰を見ていた?」
「へ?」
唐突な質問に間の抜けた声を出してしまった。
「いま、店内の誰を見ていた!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
女性は声を張り上げ、拳を固める。
「や、やめて下さい」
「うるさい、この不審者!」
ごもっともな対応だ。周りから見ても自分から見ても俺は不審者にしか見えないだろう。
俺は最後の望みに賭け、店内の2人に視線を向ける。
「あ…」
無論、外でこんな大騒ぎをしていると店内の視線もこちらに向くだろう。そうした動揺に包まれる店内から別の視線を感じた。
それはノゾムだった。動揺の視線は次第に軽蔑の視線に変わる。
「の、ノゾム…やほ…」
女性に掴まれていない方の手で店内にいる
ノゾムに手を振る。
「……」
「……」
数分が立つと周りの客も自然と元の雰囲気に戻っていた。
俺はというと、1人から睨まれ2人から軽蔑の視線を感じていた。
「で、貴様は誰だ?」
「……えっと」
圧を感じる。不用意に喋ろうものなら殴り飛ばされそうだ。
「…俺は咎士…ぶ…ンギ…です」
「は? しっかり喋れないのか?」
「ひゃっひゃい!」
大学生くらいだろうか、正面に座っている女性は両脇に女子を座らせ、こちらをギロリと睨む。
「…咎士文戯です。高校1年生でそのお二方と一応友達です」
両脇に座っている女子2人を見ると、肯定も否定もしない。
「2人が何も言わないならストーカーってことでいいか?」
そう女性が切り出したところで「えっと」
と女子の声が上がった。それは、女性の右に座っている安良木甜瓜のモノだった。
「どうした、甜瓜?」
「文戯君は…」
言いかけたところで「ちょっとまった」と
女性は安良木さんを手で止め、顎に手をあて
考えるポーズをとる。
「ぶんぎ…文ぎ…文戯…」
ぶつぶつと呟く中で線と線が結びついたのだろうか人差し指を立てた。
「2人がこの間言ってた文戯って、こいつのことだったのか」