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「綾乃ちゃーん、コーヒーブラックでね♡」
黒川法律事務所のソファで寝っ転がってエロ雑誌を見ながら、そう言ったのは、紛れもなくこの法律事務所の看板弁護士である|宇賀神玲《うがじんれい》先生である。
「なんっども言いますけどっ!
私はコマ使いじゃありませんっ!
コーヒーくらい自分で淹れて下さい!!!」
「綾乃ちゃんて、司法試験受かったんでしたっけ?」
「私の胸に光る弁護士バッチが見えないんですかっ!」
「うーん、胸…
何カップ…?」
「真面目に仕事してくださいっっっ!!!」
私はガチャゴトと乱暴にコーヒーを淹れた。
「流石綾乃ちゃん♡
うーん、綾乃ちゃんが淹れてくれたコーヒーは美味しいですねぇ。」
いつものように調子の良いことを言う先生に、私はまたいつものように呆れ返った。
このやり取り何回目!?
しかし、そんなエロくてどうしようもない宇賀神先生だが、こと仕事が始まるとその頭脳は明瞭で、どんな難事件の嫌疑をかけられた被告も弁護して勝ってしまうのだ。
そんな我が黒川法律事務所には、難事件の数々が舞い込んでくる…
が…!
「金持ちの依頼しか受けませんよ。
それか、巨乳で美人か。」
と言うポリシーを持つ宇賀神先生が選ぶ事件は、かなり狭き門だった。
その日、ある事件が宇賀神先生ご指名で舞い込んだ。
「お金…」
「あります!
心配なさらなくても、資産家のご婦人ですよ!」
私は先生の言葉を遮ってそう言った。
「ふーん?
ちなみに美人ですか?」
「いや、もう50代の方ですから…」
「チッ!」
舌打ちした!
今舌打ちしたよ、この人!
という訳で私が事件の概要を説明する。
「えーと、いつものように刑事事件になりますね。
殺人事件です。
殺害されたのは、斉藤五郎氏。
先週の金曜日に書斎で亡くなっているのが発見され、第一発見者だった奥様の斉藤洋子さんが被疑者として逮捕されました。」
「ふぅん?
面白くも何とも無いストーリーですねぇ。
しかし、警察が逮捕と言うことは何かしらの強い証拠があるんですよね。」
「おっしゃる通りです。
殺害された斉藤五郎氏に突き刺さった凶器からは、妻洋子さんの指紋が見つかっています。」
「なるほど?
それで、逮捕、ですか。
しかし、被疑者は容疑を否認している?」
「えぇ、それまたその通りです。
完全に否認しているとか。」
私は言った。
「ふぅむ…
ま、行ってみますか。」
おそらく被疑者に面会に行く、という事なのだろう。
「お供します!」
私は急いでコートを羽織り、カバンを持った。