第8章 光輝の君
(王立警察署内の実験施設)
カタカタ、パチパチ、カタカタ
ブクブク――。
キュイーン、ビー。ビー。
――6% 適応不可、不完全一致
カタカタ、パチパチ、カタカタ
キュイーン、ビー。ビー。
――30% 適応不可、不完全一致
ブクブク――。
カタカタ、パチパチ、カタカタ
キュイーン、ビー。ビー。
―17%、適応不可、不完全一致
カタカタ、パチパチ、カタカタ……――。
コツン、コツン。
「――解析はどうだ?順調か?」
あたりは暗闇が広がっていた。だがところどころ人工的な光の照明が、微かに周囲を照らしている。
パソコンのモニター画面には、この前闘技場に現れた謎の怪物の映像が映し出されていた。その暗がりの奥から一人の顎鬚を生やした男が、モニターへ齧り付くメガネかけていながらもクマが酷くボサボサな髪の男へ声をかけた。声をかけられた男は、背後の人物を見ず、作業を続行したまま返答した。
「そこに置いてあるデータが頼まれてたものだ。それと、もう少しで解析結果が終わる」
男の指示した近くのテーブルには、紙の束が積まれていた。それは闘技場に現れた例の異形の怪物の一件についてだった。
王立警察は秘密裏に怪物の一件を追っていた。この一件を王立警察側は、南門周辺から徐々に広がっている怪物目撃事件の情報と何か関係があるとみていた。
そっと紙の束受け取って中身1ページ、とさらに巡り男は内容を確認していく。
「……人が関与した形跡は見られない、か」
「それが、王の左・腕・というお偉い方々が導き出した結果だそうだ、間違いないだろう。――そしてこっちの解析も終わった。
帝国内、その他同盟国の生物による生態判定もこの通り一致なし。つまり、あの化け物は完全に外部の侵入だ。外のもんだ。こりゃ、警備が杜撰でセキュリティバリアを上げろと上からお達が来るわけだ」
モニターの画面と同時並行しながら男は器用にも背後の人物へ答える。
ふとページを捲っていた顎鬚の男はある一点がきになった
「……少年少女を執着に追いかけ回し、襲われた。後に阿暁一門により討伐…か」
「あぁ、被害者の少年は避難しそびれた少女を救出、その際、少女を庇い怪我をおった――と、将来有望な子だな。…結局この一件は、セキュリティの不備による外部の侵入って事でかたがつくそうだ、はぁ眠ぃ〜」
男は大きなあくびをする。
顎鬚の男はじーと、闘技場の怪物の件の資料、文字、画像を見続け深く考え始めた。
「――割に合わんな」
男がポツリと呟く。
「俺らが働いた時間と給料が見あってないって話なら同感、」
「違うそうじゃない」
間髪入れて訂正した。
「――なぁ、お前が怪物なら、獲物を前にして数日間耐えられるか?」
「おい、おい、急にどうした?まさか……巷で広がってる怪奇な事件がこの怪物襲来騒動の一件と何か関係があると思ってるのか?ハスイ」
顎鬚の男――ハスイと呼ばれた男は答える。
「少なくとも何かしら繋がっていると思っている」
「おいおいハスイよ、考えすぎだぞ。近頃の怪奇な虐殺事件も闘技場の怪物も別件だろ」
「リオル、なぜ別件と言い切れる?その虐殺事件も初めは南門の真偽不明の噂から頻繁に起き始めたんだ……いや、そもそも南門の噂の始まりも奇妙な点があるが」
ボサボサな髪にメガネをかけたクマの酷い男――リオルのメガネが傾いた。
「はぁ、、まず、南門の噂の出所なんて今更だろ?昔からあそこ一体は皆不気味がってた。勘違いした市民の噂が一人歩きして尾鰭ついてでっかくなってるだけだろう。それに怪奇な――複数の虐殺事件の方は、起きてるのは全て貧困地域に集中している。正直なところ人間同士のいざこざって線も捨てきれん。あと仮に、仮にだ!その虐殺事件と闘技場で現れた怪物が同じだったとしたら、街を襲っていた怪物は今までどこに隠れてたっていうんだよ?」
「そこだよ、リオル」
「は?」
「俺が気になっているのはそこだ。闘技場の怪物と虐殺事件の共通点は、傷の付け方や行動が酷く凶暴且つ加虐的であるのに対して、南門の噂で流れた怪物は、その様子が見られない――つまり明らかに別者だ」
「?……おい、ちょっと待て。なんで南門でそもそも怪物が現れたってお前が分かるんだよ?それは噂の域をでないだろ?――――まさか証人が現れたのか?い、いや仮に本当に証人がいたとして一般人の場合は動転してる可能性がある為、信用に足らない。‥だがお前が断定してるって事は、その発見者、証言者は、、まさか」
「……あぁ、お察しの通り。この帝国唯一、王の右腕とも言われるエキスパートさ。その一門の片割れ、阿暁一門の一人だそうだ」
「お前、それ早く言えよ!!!え?じゃあまじで南門に怪物がいたのか?!」
「いや‥証言者である阿暁一門の者は、怪物自体は見ていなかったそだが、痕跡を発見したそうだ。そして闘技場と南門の怪物が別物とも断言した――」
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遡ること一週間前
続く
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