「」➝イカ
[]➝タコ
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「まー、家に連れてく、とは言え…」
[?]
「家なき子なんだよなぁ…」
[…]
「何も言わなくても分かるぞ、呆れてるんだな。
私が1番呆れてるよ」
はぁ、と溜息をつくこの馬鹿。招き入れようとした心意気だけでも評価して欲しいね、言いたい事は分かるけどさ。
「あー、そうそう。っとねー……これこれ。イカ語学べる、あれ。本。てきとーに空き家探すからさぁ、読み通しといて。」
[…]
こくと頷いた姿を確認すると、俺は街に進んだ。
…ただ、あそこに行くの嫌だなぁ~…。
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「っと、ここがバンカラ街ね。混沌としてて、お世辞にも治安が良いとは言えないね。ま、色んな個性があって良い所ではあるけど。」
[…ふむふむ]
その辺で拾った紙でメモを取る。
「まぁそんな街だから空き家あるっしょゆーことで」
[なる、ほど]
「ん、イカ語慣れた?早くね。まぁいっか。」
自分を凝視してから一言放つ。
[一応、ね]
「お、あそこ空いてる」
彼女の背中を追い、何となく気になり聞いてみる。
[ねぇ、家賃はどうする?]
「ま、払わんでええやろぉ!」
本当、こいつ。
[…帰りたい]
「じゃ行く…」
彼女はいきなり固まった。
1歩後退ると、徐に回りを見渡し走り出した。
[っちょ、!?貴方がいないとどこ行けば良いか…]
せめて、ごめんの一言くらい言ってくれれば良かったのに。
彼女の視線の先を探してみる。特に変なものは…そこにかなり歳を食ったように見えるイカがいるくらい。
…取り敢えず話を聞こうと、近付いてみる。
[…あの~…]
<何でしょうか?>
そう物腰柔らかそうに聞いてくる。変な人じゃなさそうだし、関係は無いのかな…。
[いやえっと、その───]
事情を一通り話してから、ちらっとイカの方を見る。そこには、さっきの物腰柔らかそうなイカは居なかった。
<そう。その子、私の娘なの。迷惑掛けてごめんなさいね。良ければ、お詫びとして私の家で少し休んで行って頂戴。>
直感で察した。このイカに着いて行ったらやばい。
[いえ、大丈夫です!!]
<遠慮しないで。ほら。>
腕を引っ張られ、必死で抵抗する。振り回したり、叩いたり、走ったり。
もう駄目だ。瞬間、目を瞑り。
[誰か、助け──────]
ぐっと、腕を掴まれる感覚。どんどん引っ張られる。
痛くてぎゅぅっとまた目を瞑る。
ぱちっと瞼を開け、引っ張られていく方向を見る。
──────「何してんの?」
あの時話しかけてくれた、私に希望をくれた。
あのイカだ。
[っイカ、おま…ッ!]
後ろから悲鳴に近い叫びが聞こえる。声も気にせず、良く分からない土地まで走っている。
「分かってる!自分勝手でごめん!でも…ッ」
走る脚を止めず、此方を振り向き微笑んで、声を張り上げた。その言葉と、笑顔に見惚れてしまう程、眩しかった。
「お前と…〝5号〟と!2人で最強になりたいっ!強くなりたいッ!!」
[…!!]
[…5号って、何さ]
笑い混じりで自分も声を張り上げる。
「名前、ないでしょ?お前が5号で、私がろくごーっ!!」
こいつとなら、大丈夫だって。確信できた日に見た夕日は、びっくりする位綺麗だった。
〝6号〟に、笑い返し叫ぶ様に言った。
[名前、ちょーイカしてる!!!]