【阿形さん】
「ぅあああ”緊張する・・・・!」
一人クッションを抱えてソファに倒れ込んだ俺は、お風呂に入る彼女を待つ
友人関係が長かった◯◯ちゃんと、ようやく付き合うことができて 初めてのお泊り
極めて冷静を装い、「お風呂、先いいよ?」なんて微笑んでみたけど
このドキドキは持ちそうにない
「・・まじで今日心臓やばいかも」
「・・・阿形くん、ごめん 何か服借りてもいい?」
「うあっ!?わ、ごめん そうだよね、急にお泊まりにな・・・・え・・・・」
「・・・?」
濡れた髪をヘアクリップでひとまとめにした彼女は、バスタオルを巻いただけの格好でそこにいた
風呂の熱で頬が上気して、いつもと違う雰囲気にくらりとする
「・・・っ◯◯ちゃん!そんな格好で出てきたらだめだって!」
慌てて俺のパーカーをかけて、スウェットを探しに行く
呑気に「ごめんね」と笑うこの天然彼女は、本当に、自覚がない
「はぁ・・・はい、これ 向こうで着替えてね」
「うん、ありがと あ・・・ねえねえ」
「なに?」
「髪の毛、乾かしてほしいなあ」
「は・・・」
「憧れだったんだよねぇ 彼氏に髪、乾かしてもらうの」
上目遣いでにっこり笑う◯◯ちゃんにどきりとしていると、「すぐ着替える~」と緩い口調で脱衣所に入っていった
思わずしゃがみこんで頭を抱える
「まじ・・・破壊力やばすぎ」
翻弄されっぱなしの俺が、ここから挽回できるだろうか
そんなことを考えながら、俺はごくりと喉を鳴らした
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【隈取さん】
「◯◯、タオルどこに入れるんだ?」
「あ、洗濯機に直接・・・わ、ま、隈取さんっ!!」
「・・・あ?」
慌てて両手で目を隠すと、隈取さんは不思議そうな声を上げた
たまにはまったりおうちデートをしよう、と提案し 待ち合わせして、一緒に買い出し
その帰りに思い切り通り雨にやられて、交代でお風呂に入った
後から入った隈取さんは、服が濡れていたから仕方がないんだけど
下着しか着ていないせいで、あのすごい筋肉がばっちり見えてしまった
「え、ど、ま・・・ふく・・・っ!」
「・・・お前、テンパリすぎだろ
わりィけど勝手に洗濯乾燥使わせてもらったぞ」
「りょ・・・うかいです・・・」
「なんで業務連絡みたいな反応なんだよ」
一人慌てる私を尻目に、隈取さんはドカリとソファに座る
「隣こねぇのか?」
「・・・ちょっと刺激が・・・」
「・・・ふはっ・・・お前、かわいいな」
そう言って笑う隈取さんは、私の手を引き強引に膝の上に座らせる
「く、くまどりさん・・・私もう限界です」
「もう風呂じゃねえのに、のぼぜたのか?」
いつもより意地悪な隈取さんに抱きかかえられて
私は火照る顔を隠すことも出来ずぎゅっと目を閉じた
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【おかめさん】
「きゃあーなに見てんのよ、〇〇ちゃんのえっちぃー」
「おかめさん、風邪引きますよ」
「えー、反応薄くない?せめてこっち向いてくれても良くない?」
急なお泊まり、ちょっとしたいたずらでバスローブを少し開けさせてみたけど、まあ案の定 俺の可愛い彼女は今日も塩対応だった
まあわかってるけどねー、と呟きながら キッチンに立つ彼女を背後から抱きしめる
身長差も相まって、すっぽり収まる彼女は本当に可愛らしい
「明日の朝ご飯用?」
「はい、野菜スープを」
「いいねぇ〜 あ、ベーコンも入れてくれたんだ 俺このスープ大好き」
「・・・ありがとうございます・・・」
「・・・?」
いつもより、輪をかけて反応の薄い彼女に違和感があり そっと顔を覗き込む
「・・・ふふ、真っ赤」
「み、見ないでください!」
「え〜やだ めっちゃかわいい
〇〇、こっち向いて?・・・ね、一緒にベッド行こ?」
「な、にも しないなら・・・」
「んふふ、それは難しいなあ〜」
今度は耳まで真っ赤になった彼女を抱きかかえて、俺は上機嫌でリビングの電気を消した
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【狐さん】
「・・・狐さんって、着痩せするんですね」
「着痩せ・・・どうでしょう?
確かに、ジャケットを羽織っている時はもう少し細く見られるかもしれませんね」
初めて見るお風呂上がりの狐さんは、いつものかっちりとした服装とは違い、珍しく半袖にハーフパンツという常夏ボーイのような格好で出てきた
汗っかきの彼のことだ もしかしたら、1人の時はもう少し露出があるのかもしれないが、私がいるからこんな格好になったのかな、なんて想像して少し頬が緩む
「ねねね、触ってもいいですか?」
「さ・・・え・・・?」
「腕を組んでる時、いつもすごい筋肉だなあって思ってたんです
せっかくだから、直に触ってみたいです!」
「せっかくだからって・・・まあ・・少しなら」
こほん、と咳払いをして どうぞ と両手を広げてくれた狐さんに抱きつき、腕や腹筋をぺたぺた触る
「わあーすごい・・・これって、女性でもガッツリ鍛えたらつく筋肉ですか?」
「まあ、やろうと思えば でも、◯◯さんはそのままでいてくださいね?」
「んー、でも生涯で一回くらい腹筋割ってみたいなあ、なんて
あ、狐さんほどのトレーニングはちょっと自信ないんですけど」
そう言いながら、ちょっとしたいたずら心が芽生えて
Tシャツの裾から手を入れて、直接ぺたりとお腹を触る
狐さんは無言でビクリとしたあと、ふう、と盛大なため息を付いて私を抱え上げた
「わわ、ごめんなさい 怒りました・・・?」
「怒ってはいません」
「え、と・・・私お風呂がまだ・・・」
「後にしてください 無理そうなら、私が入れて上げますから」
「待ってまって、そんなつもりじゃなくて!」
ジタバタと暴れる私は、「観念してください」と言った狐さんに連行されて
その後は、まあ、ご想像にお任せします
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【般若さん】
「・・・おお、いいじゃん 似合ってる」
「ありがとうございます!ふふふ、般若さんの選ぶお洋服は、いつも間違いないですね」
久しぶりのお泊り 般若さんに「手ぶらでおいで」と言われた私は、お言葉に甘えてそのまま彼の家へ
バスタブには私が大好きなお店の入浴剤 お風呂から出ると、彼が選んでくれたのであろう新しいルームウェアが置いてあった
「ワンピースタイプのパジャマ、はじめてです どうですか?」
嬉しくなって子どものようにくるりと回転する私を、般若さんは目を細めて見つめる
私のことが、大好きでたまらないというその目を見ると
なんだか心の奥がくすぐったくて、一層愛おしさが増す
「般若さんも、お風呂どうぞ ・・・って、私の家じゃないのに失礼でしたかね」
「・・・お前の家にしてもいいけど?」
「・・・え?」
すっと伸びてきた手 反射的に頬を寄せると、親指でゆるゆると私を撫でる般若さんは
ちょっとだけ、大人の目をしていた
「なあ、俺も風呂先のほうがいい?」
「え、あの」
「今日は在宅やったけん、そんな汗はかいてないけど
・・・◯◯の、好きにしていいよ」
「・・・あ、とでも・・・良いです」
「・・そ?さんきゅ」
ゆっくりと重なる唇 いつもの、彼の香水の匂い
あ、このパジャマ 脱がせやすいやつだ、なんて
私はひっそり思って、彼の腕の中で微笑んだ
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