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登場人物
主人公【海月 優弦】ウミツキ ユズル
友達【暁 志弦】アカツキ シズル
優弦の関係者【星生 璃舞】セイリュウ リム
酷い頭痛がして、目の前の景色が、二重に歪んで見えたのは覚えている。でも、其処から先の記憶が一切無い。
(璃舞)「優弦…良かったぁぁあ…。」
「い、いや、何だよ…。」
「取り敢えず離れて?!」
「抱き付かないで?!」
「落ち着いて?!」
何だ、此の状況?!何が如何してこうなった?!
遡る事、5時間前。
今日は、15時で、大学から帰る事が出来た。そして、璃舞、志弦、俺の三人で、家迄の道を帰っていた。志弦は、途中から帰る方向が違うから、志弦と別れてから、同じアパートに住んでいる璃舞と、二人で帰る事になった。俺は、昼ぐらいからずっと頭痛や、倦怠感があった。其れが、帰っている途中でいきなり悪化した。迄は覚えている。其の後、俺が倒れたらしく、璃舞が、部屋に運んで来てくれた……らしい。
(璃舞)「優弦、ずっと目覚さなくて…。5時間もだよ?!」
「今、8(20)時だよ?!」
「う、うん…。」
(璃舞)「本当に…本当にさぁ…。」
「え、え?!り、璃舞?!」
(璃舞)「うぅ〜〜……っ。」
何時も、ニコニコと余裕のある笑顔の璃舞が泣いている?!
俺は、璃舞の泣いている姿を見た事が無くて、自分が倒れた事よりも、璃舞が取り乱している事に驚いていた。
「い、いや……ご、ごめん…ね…?」
璃舞は、何時も何を考えているのか、よく分からない。でも今は、何時もの様な、何考えているのかよく分からない感じは無く、まるで…。まるで……。
犬……?
(璃舞)「うぁぁぁあ…。」
「ご、ごめんね…?」
無意識に、俺は、璃舞の頭を撫でていた。
「ほ、本当にごめん…。」
(璃舞)「………。」
「……優弦が倒れたのって、…僕の所為?」
「えっ、あ、えっと……。」
何時もの璃舞だったら、「そうだよ!!」と、即答出来ただろう。
言えない…。「そうだよ!!」なんて、今の璃舞には言えない…。言いづらい…。
あんなに璃舞の事が嫌だったのに、怒る気すらも湧かない。
(璃舞)「…ごめん……。」
「え、えっと、…う、うん。」
こんなにも潔く謝られると、逆に、調子が狂ってしまう。此処までしおらしい璃舞を、今迄、見た事が無い。
(璃舞)「優弦…。何で僕から逃げるのか教えて欲しい…。」
「あ、っと…。其れは…。」
悩んだが、俺は、覚悟を決めて言う事にした。此処で言わなければ、此の機会を逃せば、次が無ければ、俺は一生、璃舞へのぐちゃぐちゃな気持ちを、抱えて行くことになるかも知れない。もしかしたら、言った所で、何の意味も成さないかも知れない。其れでも、今、此処で逃げたら、絶対に何も変わらない事は確かだ。彼の時の事について触れる事に、不安になりながらも、俺は口を開いた。
「…俺は、中学の時に、璃舞にされた事が、本気で嫌で……。」
「璃舞は、もしかしたら俺が嫌がって無いと思ってたのかも知れないけど、本当に嫌だったんだよ。」
「でも、本気で抵抗出来なかったのも事実。」
(璃舞)「…うん。」
「璃舞の事、しっかり嫌う事も、憎む事も出来なくて。」
「…もしかしたら、嫌いになりたく無いが、俺の本音だったのかも知れない。」
「でも、璃舞にされた事を、無かったことにできるかって言ったら、そうは出来なくて。」
(璃舞)「…うん。」
「自分でも、如何すれば良いのか分からなかった。」
「だから、…逃げようと思った。」
「全部忘れて、楽になりたかった。」
「でも、忘れる事も…出来なかった…。」
「俺が、璃舞を避けてたのは、また璃舞に何かされるんじゃ無いかって思って、怖かったから。」
「…だと…思ってた。」
「でも、今、ちゃんと言葉にしてみて、もしかしたら、少し違うのかもなって…。」
「俺は、また、璃舞に何かされて、今度こそ、本当に璃舞の事を嫌いになってしまうのが怖かったのかも知れない。」
「璃舞と一緒に過ごした時間が、楽しかったのは本当だから。」
「其れすら、嫌な思い出になってしまいそうで、其れが……俺は、怖かったのかも知れない。」
俺が、本気で抵抗出来なかった理由。其れは、璃舞の事が好きだから…。だったのかも知れない。でも、嫌な事をされてるのに、そんな風に思った自分の事が、気持ち悪く思えたのかも知れない。
まだ、はっきりとは分からない。でも、自分なりにしっくり来る説明は、きっと出来たと思う。
(璃舞)「そっか……。」
「優弦、本当に…ご、め……ッ。」
「り、璃舞?!なんかごめん?!なんか、突き刺さる事言っちゃった?!」
璃舞は、ごめんと言いながら、また泣き出してしまった。