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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ぺしぺし! ぺしぺし!


『おひる、はやく、うれしい、おきる、ごはん、あそぶ』


「うん……? ああ、眠っていたのか。今何時だ……」


朝風呂から上がった俺はそのまま基地の私室へと入った。


バフッ! とベッドに倒れ込んで、いろいろと考えているうちに、眠ってしまっていたようだ。


「もうすぐ昼になるのか……。腹へったし、久しぶりに何か作ってみるか。 シロは何食べたい?」


ベッドの上で軽くストレッチをし、俺たちは基地の台所へと向かった。


…………誰もいないキッチンを見わたす。


シンクや調理作業台は水滴ひとつ、塵ひとつ残さずキレイに片付けられていた。


(ふむ、家の影たちも、ちゃんと綺麗に使ってるみたいだな)


さて、何を食べようか?


材料庫や冷蔵庫を覗きながらしばし迷った俺は、簡単でおいしいパスタを作ることにした。


………………


「ゲン様おやめください! ゲン様の手を煩わせる訳にはまいりません。どうぞ我々にご指示なさってください!」


フウガや影たちがキッチンに集まってきた。


「まあまあ、そう言わずに見ておけ!」


生麺にしろ乾麺にしろ、向こう (クルーガー王国) の人間にパスタは馴染みがない。


ちょうどいい機会でもあるし、俺はパスタの作り方をみんなに教えることにした。


乾麺を使うのですごく簡単だ。


寸胴鍋にお湯を沸かし麺を茹でていく。


大事なのはこの茹でる時間。キッチンタイマーを使ってしっかりと時間を計る。


フライパンを熱したら、少量の水に固形コンソメを溶かし入れる。


あとはそのスープに麺をからませ塩コショウで味を調えたら皿に盛りつける。


最後に、ちょいっとバターを乗せたら出来上がり。


リビングにいたメアリーやマリアベル、お風呂の掃除をしていたキロに声をかけると、みんなが大食堂に集まってきた。


「我々はご主人と同じテーブルには座れません!」


そう訴えるフウガたち。


俺やメアリー、マリアベルと同席することをためらっているようだ。


「ここは王国ではない、日本だ。そのようなことに拘る必要はないぞ。それに早くしないと、せっかく作ったパスタが冷めてしまう」


クルーガー大国の王女であるマリアベルも、大侯爵令嬢であるメアリーも、そんなことこれっぽっちも拘ってないのだから、まったく問題ないのだ。


それに、別々に食べると後片付けだって大変だろう?


………………


俺の作ったパスタはすこぶる好評だった。


『旨すぎて全然足りない!』 キッチンに行って作り足しているものまでいた。


パスタはバリエーションが豊富なのもいいよね。


『ほうれん草や玉ねぎを入れたり、卵の黄身と和えたり、アサリに唐辛子なんかも旨いんだぞ』 そう教えておいた。


これなら、普段忙しい影たちも、簡単に美味しい食事をとることが出来るだろう。






昼食のあとはみんなで楽しく談笑していたが、そろそろヤツ (健太郎) を迎えにいかなくてはならない。


シロを連れて表にでた俺は、参道の石階段を下りていく。


健太郎が住んでるマンションまでは歩いて10分程の距離。


シロをマンションの前で待機させ、インターホンに部屋番号を入れて押した。


――ピンポーン!


「………………」


――ピンポーン!


「………………」


インターホンを鳴らす。……鳴らす。……鳴らす。……鳴らす。


「ふぁ~~~い、誰?」


「俺だ、開けろ!」


「えっ、もう来たんすかぁ~?」


ウィーンと自動ドアが開く。静かなエントランスを抜け、俺はエレベーターに乗り込んだ。


「ほれ、忘れものだ!」


部屋に入った俺は、ドーンと車椅子をリビングへ出した。


「うぉおーい! ビックリした。いま何処から出したんすか?」


両手と片足を上げて、半身で仰け反っている健太郎。


「なんだよー、昨日も見ただろう? インベントリーだよ」


「……あんた何者っすか。まさかの E. B. E?」


(Extraterrestrial Biological Entity 地球外生命体)


「ハハハッ、まぁ似たようなもんだな。それに昨日も言ったが俺のことは師匠と呼ぶように。わかったな!」


「へいへい。どうせ逃げることって出来ないんすよね。地獄の底まででも追っかけてきそうで、怖いっす!」


「さすがに俺でも地獄までは無理だな。しかし、異世界までなら追っかけていくぞ」


「ホントなんなんすか……」


ブツブツ言いながらも支度をはじめた健太郎。


………………


「師匠、用意できたっす」


「よし、今日は歩いていくからな」


「えぇ~、マジっすか」


「おおマジだ。お前はもう歩けるからな。それに自分の足で外を歩いてみたいだろ?」


「そうっすね! 師匠、行きますよ!」


そう言うと、健太郎はさっさと出ていってしまった。


お、おい、ちょっと待て! 戸締りはどうすんだよぉ。


……やれやれ。


ベランダの鍵よーし、ガスよーし、電気よーし、玄関のカギは……これかな?


シューズボックスの上に置いてあったカギで玄関の扉を締め、先に行ってしまった健太郎を追いかけた。






「やあ、健太郎くんか。いらっしゃい! これからもしっかり励むんだよ」


「うっす!」


神社に戻ってきた俺たちは社務所に顔をだし、茂さんに挨拶。


そのまま母屋の居間にあがらせてもらった。


すると健太郎のヤツ、いきなり腹へったとか言いだしたのだ。


「…………」


まあ、帰ってから寝るばかりで、ろくに食べてないのかもしれないな。


――しょうがない。


牛丼弁当に明太マヨネーズをぶっかけて出してやると、


「おかわり!」


「おかわり!」


うまそうに3つも平らげやがった。


「ハハハハハッ、すっごい食欲だな!」


俺も高校生の頃はこんな感じだったよなぁ。


とにかく、すぐ腹が減るのだ!


『いま、食べたばかりでしょ!』 お袋になんど言われたことか。


今度からはコヤツ (健太郎) の分も考えて、牛丼をキープしておかないとな。(笑)


と健太郎の食欲に、


まだ、この時までは笑って済ませる程度だったのだが……。






さ~て始めるとするか、


「……あれ? 健太郎どこいった!?」


忽然と姿を消した健太郎。


今度はトイレなんだそうな。


はぁ――っ、食ったり出したり、まったく忙しいヤツだ。


………………………………(トイレなげーよ!)


ようやく戻ってきた健太郎。


魔力操作についての説明をおこない。その場で座禅を組ませると、訓練のやり方を教えていく。


シロの力を借りて、魔力感知も実践させた。


「あっ師匠! {鑑定を獲得しました}って、いま……」


「おお、そうなのか? スキル獲得おめでとう! ”鑑定” は有用なスキルではあるんだが……、レベルが上がるまでは過度の期待はしないように」


「へへへ師匠。どうやったら使えるんすか?」


「自分の手を見て ”鑑定” と念じてみろ」


「おし、鑑定!」



―― ”ケンタロウ・17歳” ――



「師匠……、名前と年齢しか出ないんですけどぉ」


「まあ、最初はそんなもんだろ。期待はするなと言っただろうが」


「でも師匠~~~。なんとかなりませんか~~~」


「だ――――っ! わかった、わかったから。その上目遣いはやめろー。まじでキショイから!」


「キショイとか、師匠ひどいっす!」


「シロの背に片手を置いて、もう一度自分を鑑定してみろ」


「それじゃあシロさん、おねしゃっす。 鑑定!」



ケンタロウ・クドウ Lv.2


年齢 17

状態 通常

HP 4242

MP 2121

筋力 22

防御 21

魔防 22

敏捷 22

器用 20

知力 21

【特殊スキル】 状態異常耐性 言語理解

【スキル】 魔法適性(聖・火・雷・氷)鑑定(3)

【称号】 受け継がれし者、勇者、

【加護】 ユカリーナ・サーメクス



「ああ、見えた見えた! ……これって何んというか、ゲームのステイタス画面みたいっすね」


「そっかそっか、良かったなぁ。あとは地道に能力を伸ばすしかないぞ。頑張ってな」


「ちなみにシロさんってどれくらいなんすか? 見てもいいっすか?」


「ワン!」


「ほんじゃまぁ失礼して……、 鑑定!」



シロ Lv.17


年齢 ー

【契約者】 ゲン・ツーハイム

HP 21682168

MP 19601970

筋力 795

防御 714

魔防 860

敏捷 673

器用 420

知力 710

【特殊スキル】 身体頑強 状態異常無効 感覚共有(超)

【スキル】 鑑定(7) 魔法適性(全) 魔力操作(9)

【魔法】 風魔法(7)火魔法(7)氷魔法(7)聖魔法(9)回復魔法(9)結界魔法(7)身体強化(3)雷魔法(4)

【加護】 ユカリーナ・サーメクス



「えぇっと、Lv.17っすか。そこまで高くはないっ………………はあっ?」


「どうだ見えたか? スゲーだろう。聖獣フェンリルはもともとの基準が違うからな」


「聖獣……。基準……。それなら師匠は……」


「んっ、なんだ? 俺のも見るか?」


「は、はい。いや、今は止めとくっす……」


「そうかぁ、いつでも言え。見せてやっから」


まあ、鑑定があれば自分のステータスも確認できるし、励みにはなるだろう。


それから夕方までは一緒にダンジョンに潜って探索をおこなった。






夕食はみんなで食卓を囲む。


今日は慶子 (けいこ) もダンジョン探索に参加していたので、一緒に夕食をとっていた。


「まぁ幼馴染み! そうだったの。私はてっきり紗月 (さつき) ちゃんの彼氏だとばかり思っていたわ」


「そ、そーすか。てへへへへ」


「もう慶子さん、冗談言わないでくださいよぉ。すぐに人生を諦めてしまうような軟弱者に私は靡きませんよーだ!」


「それは、うううっ……」


紗月に撃沈され、海の底に沈んでいく健太郎。


「でも若いんだし、まだまだこれからじゃない。頑張って見返せばいいのよ」


「そうっすよ、見ててください師匠。俺の眠れる底力ってやつを!」


慶子がエールを送ると、健太郎は拳を握りしめ、再び浮上してきた。


はいはい、浮き沈みの激しいヤツ。


そのやる気は俺じゃなくて紗月に見せてやれよなー。

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