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「見てください王馬クン!」
「はー?ロボットが人間様になんの用…って何それ?」
キーボの手には、白黒の市松模様の首輪が握られていた。鈴も付いている。
「フフン、これは首輪です!キミに似合うと思って持ってきたんですよ!」
「はぁー??まさかオレを犬扱いするつもり?鉄塊のくせにいっちょ前に何言ってんの?」
「いえ、そんなつもりは…って、ロボット差別ですか!?…ともかく、王馬クンに似合うと思うんです。ほら、付けてみてください!」
「やだよ!誰がつけるか!!」
「付け方が分からないんですか?ならボクがつけますよ!安心してください!」
「安心できるか!じゃあ、オレゴン太と虫取りに行くから!じゃあね!!せめてプレゼントはその首輪じゃなくてプァンタにしてよね!キー坊!!凄い悪趣味だよ!」
「えっ!この学園には虫はいないはずでは…あ、待ってください!!」
ちょっと違います
「あ、王馬クン…」
「…なんだよ」
「さっきはボクも悪かったです…すみません、だからどうか泣くのはやめてもらってもいいですか」
「…ロボットにはわからないだろ、涙が止まらないことくらい」
「えっ!でも、キミはいつも止めてるじゃないですか」
「アレは…はぁ、もういいよ。出てけよ」
「え、でも…」
「でも、何?お前は最原ちゃんの所に行くんだろ。こんな嘘つきよりも優しくて安心出来るもんね!」
「王馬クン…」
「それともお前自分でやったことわかってんの?浮気だよ。ロボットには浮気なんて概念ないか…元々恋愛できないもんね、人間と」
「それは違っ…」
「ねぇ、言い訳ほど見苦しいものは無いよ」
「…王馬クン、ごめんなさい。ボクが悪かったんです。許してもらおうとは思ってません。でも、ボク達ならまだ」
「うるさい!」
「えっ…」
「それが言い訳って言うんだよ?メモリにちゃんと学習した?ならもういいよね。出てって」
「…」
…ガチャ。
キーボは無言でそこを立ち去った。
これ以上言い争いをしても無駄だと思ったからだ。
翌日、最原や百田のあらゆる協力で仲直りした。
「キー坊!」
「あ、王馬クン!どうしたんですか?」
すると王馬はもじもじしながら言った。
「実は、オレ赤ちゃん出来たんだよね…」
「はぁ、どうせ嘘でしょう?キミは男ですし、赤ちゃんが出来るはずがありません」
「何言ってんの?ホントだよ!ほら、ここにいるじゃん」
そう言って王馬は自分の腹をさすった。
「いいや、嘘です!!王馬クンには赤ちゃんは出来ません!」
「なんで信じてくんないの!?オレらの赤ちゃんだよ!めでたいことなんだよ!!」
「王馬クン…本気ですか?」
「は?オレはいつでも本気だよ?」
「えっと、根拠は?」
「根拠ってなんの?」
「赤ちゃんのですが…」
「オレがいるって言ったらいるんだよ!!」
今回の王馬は、至って真面目そうだった。装っているだけかもしれないが、キーボには嘘に見えなかった。
「本当にどうしちゃったんですか…?」
「オレは至って普通だけど?まぁ、キー坊との赤ちゃんが出来て浮かれてるせいかもしれないね!!」
「あ、あの…」
「こいつの出産が楽しみだねー!名前は何にする!?」
王馬は話を聞いてくれなくなった。まるで幻覚でも見ているように、ずっと腹に声をかけるようになってしまった。
「キー坊、オレ家族ってのが分からないからさ…こいつが道を外しかけた時とか全力で止めようね…オレらでさ」
「何言ってるんですか…さっきから…」
「楽しみだね、オレらの子!」
キーボは確信した。今の王馬は狂っている。いつも以上に変な方向に。
王馬の笑顔が、清々しいはずなのに、なぜか怖く感じた気がした。
「なーんてね!ウソだよ!あれ?どうしたのキー坊。そんな安心したような顔して」