私は内心、嬉しかった。今回の案件は大きくて、話題性も高い。なのに、スケジュールは詰まっていて、初めから緊張感がずっとあった。
それが、先ほどの啓人の一言で、みなの顔つきが変わった気がした。
地下の出入口まで下りた。
車が前に着くまでのあいだに、思いもよらず、啓人が話しかけてきた。
「ねぇねぇ、金本さん」
「どうかなさいましたか。」
「先月、東京、来た後、俺たちのこと調べてくれた?」
「あ、はい。InstagramやYouTube、拝見しました。あと、ファンの子がいたので、いろいろ聞かせていただきました。」
「やっぱり…」
「え?」
「いや、ちゃんと見てくれてないと、あんな企画内容には変わらないよな、って、思って。うれしくて。」
「それは、こちらも、有難いお言葉です。」
そこまで話して、安藤マネが振り返った。
「行くぞ。」
「じゃあ、金本さん、またね。」
彼は、ニコニコ手を振って、車に乗り込んでいった。
ふぅ…
今日も疲れた…
17時50分。
帰り支度をしていると、明葉ちゃんが声をかけてくれた。
「すみれさん、お疲れさまでした。ひとまず、良かったですね。」
「明葉ちゃん、ありがとう。いつも助かってる。」
「いえいえ。今日は、部長命令でAチーム全定時退社だから、これから、飲みにいきますよ。」
「あー、あたし、いいや。行ってきて。」
「え?すみれさん、お酒、飲めるじゃないですか。行きましょ?」
「んー…でも、今日は、やめとく。」
「…そうですか。じゃぁ、また、ランチ行きましょうね。」
「うん、それは、行く。ごめんね。」
「了解でーす。では、お先に!」
「お疲れさま」
明葉ちゃんは、私のサポーターに入ってくれている2コ下の後輩だ。よく気がつくし、事務処理もきちんとこなすし、本当に助かっている。
今回のKeys-1に関しても、明葉ちゃんの友達が大ファンらしく、いろいろ情報収集に走ってくれた。
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