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夜の帳が世界を包む。室町時代から続く霧島家の歴史は、異能と”物語”に彩られてきた。その終焉が、いま始まろうとしていた。
「……やはり、この”物語”は、破綻する運命だったか。」
霧島宗連は、血に染まった庭に立ち尽くしていた。かつて最強と謳われた十二獣士は、無惨にも地に伏している。
虎鉄は斬られ、胡蝶の幻想は消えた。狼は吠えることを忘れ、蛇は己の毒に溺れた。
——そして、宗連の前に立つのは、一人の影。
「……お前が、”物語”の最後の語り手か。」
「そうさ、宗連様。アンタの時代は、もう終わるんだよ。」
その声の主は、霧島夜刀。宗連の嫡男であり、かつて十二獣士の”鴉”と呼ばれた男。
「異能演舞——”終焉ノ書(しゅうえんのしょ)”。」
世界が黒に染まる。無数の文字が宙を舞い、現実そのものを書き換え始めた。
「この世界は、俺の筆先一つで決まる。”物語”は俺のものだ!」
だが、宗連は静かに微笑む。
「愚か者よ。異能とは”物語”を創るものではない。”物語”に生きる覚悟だ。」
宗連の太刀が、静かに振り下ろされる。
「異能演舞——”黄泉神楽”。」
黒と紅が交錯する。冥府の舞台が再び現れ、夜刀の”終焉ノ書”さえもその渦に飲み込まれた。
——だが。
「終わらせるのは、俺だ!!」
夜刀は最後の力を振り絞り、”終焉ノ書”を己の血で染め上げた。
「異能演舞、最終章——”無限回帰”!」
時間が、巻き戻る。霧島家の歴史が、繰り返される。異能の伝承は無限にループし、誰もその終わりを知ることはない。
本来ならば異能というものはここで断絶されていたが、夜刀によって異能の世が続くようになってしまった。