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チャチャ
本編へ〜。
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第八話『一つの証明』
あの砲兵が自分ごと爆発してくれたおかげで当たり一面にあった霧が少し見えるようになった。
残っている敵は?
ドイツの狙撃者がチャンスだと思いスコープを覗いた。
ドイツ狙撃者「!」
ドカァァァン!
ナチ「、、、、、、?、、、何が、、、起こって。」
ゴールド「デュグレチャフだ。」
ゴールドが双眼鏡を覗きながら向こうの塹壕を見た。
ナチ「な、、、そんな怪物を扱える化け物が居るのかよ、、、!」
ナチ(まずい。アレは対戦車用ライフル。モロに食らえば戦車ですらこっぱ微塵になる、、、!)
実際少しだけ顔を出した狙撃者は顔の原型を留めておらず、どこまでが顔で腹なのかが分かりなかった。ソ連がドイツに対抗する小さな必殺の武器。
フロイント「このままではジリ貧だよ。」
学校の頃から変わりない口調でフロイントは不安を語った。
ここは奴らのテリトリー。霧が少し晴れた程度で、戦況は変わらない。モタモタしている内に霧が再度かかり、奴らは迫って来る。
四面楚歌、逃げ場なんて存在しない。
フロイント「、、、、、、逃げ場が無ければ作ればいい。」
ゴールド「あぁそれしか無いな。野戦砲を打ちかますぞ。 憶測だが、あのデュグレチャフ一つだけが奴らの最大の武器。それを壊せれば良いんだが、、、。」
ナチ「だが座標がわからないのか、、、。」
約270メートル先にデュグレチャフが居る。そこにピンポイントで野戦砲を撃たなければカウンターを喰らう事になる。
ゴールド「一か八かやるしか無い。」
ナチとフロイントは小さく頷き、ソ連の狙撃兵が居ると思われる所に双眼鏡でなるべく標準を合わせた。
その時、雷鳴のような大声が聞こえた。その方向を見上げると、赤い煙を立てる戦車から丸こげになって逃げ惑うルーマニア兵。
双眼鏡越しにそれを狙う赤軍の狙撃兵が見えた。逃げる先には大量に敷かれた地雷。
このままでは死ぬなと、彼らは思った。もう彼らには慈悲とゆうモノがなくなっている様だ。可哀想だと思うナチは自分から湧いた薄っぺらな感情に驚いた。
その時に一人が叫ぶ。
フロイント「そっちに逃げちゃダメだ!」
フロイントが敵の機関放射を無視して全速力で塹壕から飛び出した。
ナチが止めるより早くフロイントは撃たれた死んだ。 ルーマニア兵とフロイントは白い雪原に転がり倒れ込んだ。
ナチ(、、、なんで。)
入学してから初めて話しかけてくれた戦友が目の前で死んだ。
幾ら明るい奴でもこんな狂気じみた地獄にいればおかしくなる。それでもフロイントは絶えない明るい笑顔をしていた。戦場に光を当ててくれる妖精と思っていた。フロイントは言った家族を守る為に戦うと。そして身を投げて他国の兵を庇った。命捨て、覚悟した戦う意志を通して雪原に屍とかした。
それに比べて俺は仲間の為すら死ねないような人間だ。
俺はなんの為に、復讐の為____?
____バチんと音がした。
ゴールドが俺の背中を叩いた事に気がついたのに時間が掛かった。
ゴールド「しっかりしろ、ここで死ねば元も子もないぞ。」
ナチ「、、、お前は仲間の死に哀しまないのか?」
目の前で戦友を失い、砲兵で生かされ砲兵は死に、負けるかもしれない状況で湧き上がる感情を抑えてはられなかった。
ゴールド「、、、泣ければ良かったがもう散々泣いてきた。泣くのはあの日で最後だ。」
ゴールドは野戦砲に大きな弾丸を詰め込みながらナチに太い眉毛を寄せて言い放った。
ゴールド「泣けるのは今日だけだ。戦う動機はこの瞬間だけ全て捨てろ、今はただ目の前の敵を討ち滅ぼす弾幕の弾を撃て。」
戦う上で感情論や動機は要らない。殺意に邪魔なものだ。
____今はただ目の前の敵を撃て。
ナチ「うん。」
その瞬間、感情が消え失せ敵を冷たい目で見つめた。ナチは構え、野戦砲を放った。
銃口の中で弾が擦り切れ発射する。空間が弾幕で斬り裂かれて敵塹壕と一直線で繋がった。
当たる____。
銃声からなる轟音が耳に入った。
同時に血飛沫が爆ぜた。
それはナチの冷たい頬を濡らした。
こんな近くで敵兵の血飛沫が当たる訳。
ナチの瞳孔が小さくなり黒目がその方向を見た。
ナチ「、、、、、、ゴールド、、、?」
体の上半身が持ってかれ、下半身しか人間の原型を留めていない肉片が飛び散っていた。
敵から『突撃』と声がした、敵が此方へとやって来る。
一瞬で暗い闇の世界に入れ替わった。
憎悪
怒り
哀しみ
虚無
それらを消し去って化け物は殺意を銃口に詰め込んで、最悪な状況の戦場に雪の様に儚い綺麗な弾幕を放った。
____化け物は呟いた。
塹壕に寄りかかり走って来る奴らに容赦ない弾幕を浴びせる。弾切れしたら銃剣で喉から腹にかけて滅多刺し。
血飛沫が肉片が叫びが全身に降りかかる。
地獄よりモ楽園ノようダ。
気づいたら紅く染る世界。
「ッ、、、、、、なぁ嘘だろ?なぁやめてくれよ、、、知らない、、、わからない、、、これ、、、全部、、、
俺がやったのか、、、?」
戦場に真っ赤な十六夜月の光が独りを照らしていた。
ルーマニア「、、、ツペシュだ。」
地獄を目の当たりにしたルーマニアはその化け物を見てかつてのワラキアを思い出した。
アレは戦場の死神だ。
二人だけになり、、、ナチは上手く口を開けなかった。ようやく声を出したら、怯えた様子で気づけば逃げられてた。
ここにはフロイントがいつも照らしてくれた明かりはない。儚い古の記憶だけが君がいた一つの証明だった。
それすらも残らない荒地へと変化していた。
(自分だけ、、、ナニかが違う、、、皆とは違う、、、化け物だ。)
親を殺した悪魔に復讐する為に強くなり、自らも化け物になった時、自分もまた悪魔だと思われる。
真なる敵は____
復讐する為に生きたい
これ以上居ると傷つけてしまうから死にたい
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生きたい
死にたい
曖昧なまま給水塔で目が覚める。横に軍医と思われる者がいたから枝垂れた醜い笑顔を作ろうとしたが、、、できなくなっていた。
そのまま軍医に顔を覗かれた。
軍医「、、、ちゃんと飯食ってるか?」
何を言われるのか怖かったが飯の話をされてびっくりした。
ナチ「、、、食ってない。食べても殆ど意味を成さない。」
軍医「ダメだぞちゃんと喰わなきゃ、どれだけ精神を研ぎ澄まし強靭にしたってそれにともなり体が脆くなる。精密機械が少しの埃で呆気なく壊れてしまう様に。今はゆっくり休め。」
ナチ「それでも、戦わなければならない。」
軍医「そんな生き込んでいる君に朗報だ。スターリングラードからの道は閉ざされた。包囲網作戦にドイツ第六軍はハマってしまったんだ。」
ナチ「、、、は?」
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序 第八話『一つの証明』 完
長くなりましたねーー読んでくれてありがとうございます♪
それではまた地獄で。
コメント
2件
話の途中の「地獄よりモ楽園ノようダ。」と最後の地獄(ラクエン)で地獄という名のラクエン感がめちゃ最高です!