Attention!
この小説は2.5次元創作となります。
実在する方々の名前をお借りしておりますが、御本人様とは一切関係ありません。
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自分が気を抜いてたのが悪い、というのは充分理解している。
ただそれにしたって、顔を一般兵見られてしまっては、暗殺系を担う自分の任務の支障になりかねない。
おまけに「女」なんて言われてしまう始末である。まあそれは、肩の下まで伸びたこの髪のせいだろう。
イメチェンも兼ねて、髪、切るか。
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食堂に行けば、大先生やロボロ、シッマにシャオロンが食事をしていた。俺を視界に入れた4人はあからさまに嫌そうな顔をし、そそくさとどこかへ逃げようとする。
別に今回は食害する気ないねんけど。
「ぞっぞむさん、俺はもうお腹いっぱいなんですよぉ〜・・・」
「ご飯食べにきたわけちゃうわ」
「えっ、あのゾムが?飯を食わんやと!?」
「気分やないだけやで。それとは別に、聞きたいことがあってん」
驚いた顔でコネシマがこっちを見てきた。俺は歩く公害か。今度炒飯をプレゼントしようと心に決める。
「ふぅん・・・髪、ね。誰に切ってもらうん?」
ことの経緯を説明したら、シャオロンがそう尋ねてきた。
でも、自分が聞きたいこととは無関係なので「それはどうでもええねん」と切り捨てれば、彼は不満そうな顔で黙ってしまう。
「俺が聞いてんのはどこまで切るか、ってことやねん。」
「別にこのままでも俺はええと思うけど、まあ無難にミディアムでええんちゃう?」
「いや、俺とお揃いのショートの方がええやろ!」
「ハァ??何言うてんねん俺とオソロや」
「じゃかまし」
お揃いお揃いとうるさいが、まあ普通に考えてミディアムやろな。まあ大先生と同じとかちょっと尺に触るけど。
そのまま借金がどうだの声が大きいだの醜い争いを始めたので、その場を離れた。
髪を切るとは言ったものの、美容担当の現役JKは外交でお留守だし、手先が器用な有能豚さんや復讐鬼はその護衛で、他に綺麗に切ってくれそうな人は思い浮かばなかい。
シッマなんかに任せたらぱっつんにされそうや。
近頃は任務続きで息も詰まっているし、休憩がてら旅行でもしようかな。ポケットからスマホを取り出してメッセージを送れば、すぐに返信が返ってきた。
グルッペンに休暇もらわな。
あぁそれと、狂犬たちにお土産話も。
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「ともさん、どりみー!」
「ゾミー、ヒサシブリ」
「久しぶり、ほら中入って」
目的地に着けば、ここの基地の主であるともさんと運営国のみどりくんが出迎えてくれた。
俺たち3人は前年の共同全線の時に偶々意気があって仲良くしている。
2人とも俺にはない戦闘センスがあって、一緒に戦うたびに感心してしまうのは変わらない。
そして、今日は髪を切ってもらいに来た。なんでも器用にこなすともさんにお願いし、どうせならまた3人で遊ぼうとなったわけ。
「でもゾムさん、いいの?俺が切っても」
「いいんすよ。あいつら脳筋だし、なんか怖いわ」
「ンフフ。ソレガ良イトコロダケドネ」
「ほんまかそれ」
「くふふ」
アンティーク調の部屋で、自分たちの基地とはまた少し違った温かみを感じる談話室。
髪を切るために座るよう促された木製のロッキングチェアは、灰色と赤のマットが映えて、少しみんなが思い出される。
ホームシック早すぎひんか、とあいつらの顔を浮かべてみて、うるさそうだなと思考の隅に追いやった。
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しゃきん、しゃきんと髪を切る心地の良い音。暖炉のぱちぱち、と火が爆ぜる音。
みどりくんが本を捲る音。微かに匂うラベンダーのアロマ。
全てが調和し、とろり、とろりと意識が落ちていく感覚。
でもこのまま寝るのは散髪してくれているともさんに失礼な気がするし、自分がすこし恥ずかしい。
そんな風になんとか眠気に耐えていると、ふとふんわりと頭を撫でられた。トントンのような、思いっきり、けれど慈愛を含んだような撫で方とはまた違う、するりと毛先まで撫でられるような感覚に少しくすぐったくなる。
ちらりと後ろを振り返れば、そのグルッペンとも、トントンとも違った、そう・・・珊瑚のような、まろやかな朱色と目が合った。
その撫で方が新鮮で、少しすり寄るように自身の頭を傾けてみせれば、ともさんはんふ、と笑ってもう一度撫でてくれた。さっきよりも少し長めに。
手の平から伝わる温度が、頭から脳味噌に抜けて全身を支配するような心地よさに生まれ変わり、先ほどよりも深く、深く、意識を底へと引っ張られる。
ともさんの撫で方も、気持ちいいなぁ。
そう、ともさん。赤髪で、仲が良くて、一緒に戦う・・・・・・とも、さん・・・?
・・・あれ?これ俺、もしかしなくても結構恥ずくね??
ぶわり。
そんな効果音がつきそうなほどに顔に熱が集まるのが、自分でもわかる。
心臓の奥からプライドと羞恥心が顔を出し始めて、でもその手を払いのけることもできず。自分は俯いたまま動けなくなってしまった。
かた、と椅子が揺れる音がしてそちらを見れば、今度はまんちゃんともまた違った緑、クリソプレーズが視界に映る。
え、と思う暇もなく2方向から頭を撫でられる。
もう一方はこの暖かい空気を含ませるように。
もう一方は自身の手と馴染ませるように。
なんで、とも思ったけど。それ以上に心地よさと眠気が襲ってきて、もういっか、とその暗闇に身を委ねた。
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「なあトン氏。ゾムが休暇届を出してるんだが」
「なんやて」
とある昼下がりの総統室。
カリカリ、とどっかの誰かさんがガバった書類たちに修正のペンを走らせるトントンは、グルッペンの言葉に顔を上げた。
「ちょい見せて。・・・これ、しかも2日間て、どっかに泊まんのか」
「ワシも不思議に思ってな。あいつが見知らぬところで夜を越すなんて無理だろ」
そうなのである。
ゾムはその持ち前の鋭い五感によりセンスが磨かれたのだ。そんな彼が、誰がいたのかも、何があるのかも分からぬ場所で寝泊まりするなんてたまったもんじゃない。街の方に出たらバタンキューだ。
「・・・つまるところ、ゾムは仲のいい友人に泊まらせてもらう、と」
「そーゆーことだ、と思うが・・・せめて旅先ぐらい教えろや」
「ほんまに」
ふう、とため息をついて窓の向こうを覗けば、訓練よろしくコネシマとシャオロンが内ゲバに励んでいた。
自分の腰にしっかりと粛清剣が携えてあることを確認してから、まずは誰に連絡しようか、とトントンは空を見上げるのであった。
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なんだかぽかぽかするなぁ。
ふわふわしてて、雲に包まれたような布団。
柱時計がかん、かん、とリズムよく刻まれる音。
鼻を擽る花の香り。
だんだんと意識が浮上していく感覚に、いやだ、と抗いながらうっすらと目を開けた。
ぱちり。
1つ瞬きをしてから周りを見渡せば、先ほどの談話室とはまた違う、別の部屋。
一番最初に目に入ったのは大きなゲーミングPCとモニターとチェア、そして枕元に置いてあった、ともさんを模ったであろうぬいぐるみ。
はぇーかわいい。
誰もいないことを確認してから手に取ってみて、それからそっと抱きしめる。
うわぁジャストサイズや、これ欲しい。
そう思いながら、髪を切ってもらう最中に寝落ちしてしまったことを思い出し、少し申し訳なくなった。
今度の誕生日プレゼントはとびきり豪華にして、ついでにたらふく飯を食わせてあげよう。
なんて思いを馳せていると。
キィ、扉が音を立てて開き、そこからひょっこりとみどりくんが顔を出した。
「あっ」
「エッ」
ばちりと目が合った。
こいつはまずい。非常にまずい。俺はともさんのぬいを抱きしめたままである。
顔があちぃぜ。
みどりくんは俺の顔とぬいを交互に見て、それから小さく笑みを溢した。
「んなっ・・・なんやその顔っ、馬鹿にしとんのかっ!」
「イヤ〜?サスガ枕ガすみっこ◯らしナダケアルナッテ」
先ほどの柔らかい笑みとは打って変わって、今度は子供のようなニマニマとした顔を浮かべる。
くっそ、こいつ煽りスキル高い!今度訓練で絶対勝ったるかんな。
心の中でそう宣誓して、熱い顔を誤魔化すようにそのままベッドの上に腰掛けた。
「ともさんは?」
「トモサン、ゴ飯作ッテルヨ」
「あれそんな時間!?」
やばい寝過ぎた。反省しながらそのまま立ち上がり、シーツを整えて部屋を見渡しす。
「・・・ここ、ともさんの部屋っすよね」
「ウン」
「やらかした・・・申し訳ねぇ・・・!」
「ナンデヨ」
寝てる間に運んでもらって、仲が良いとはいえど他人のベットで寝かされて。一回も起きなかったってまじ?
ちょっとここにきて、気ぃ緩みすぎちゃうか。変やな、仲間達でもこんなにデレデレすることなんかあらへんのに。
そうがっくりと項垂れる俺を、どりみーは笑って励ましてくれた。
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「グルさん、返信きましたわ。ともさんとこやって」
「そうか。まあ居場所が分かって良かったわな。」
「そうですねぇ、次は行き先も教えてくれるとありがたいんですけどねぇ」
夕方の総統室。終わった書類を束ねて引き出しに仕舞いながら、トントンはそうほざいた。
グルッペンはガバった書類を手に大先生のところへ出て行った。総統直々に説教される姿を思い浮かべ笑みが溢れる。
ゾムの居場所が分かったし、明日になったら帰ってくる。心配することは何もない。
ばんっ
「「トットントーン!!」」
と、束の間のトントン安心も、扉が勢いよく開かれそこから飛び込んできたシャオロンとコネシマによってぶち壊された。
「ノックせぇ言うてるやろ。あともっと丁寧に扉開けろや」
「トントン!ゾムは?あいつ、髪切る言うておらんくなってん!」
「はぇ〜無視」
「あいつが街に行ったんか?ぶっ倒れへんのか!?」
捲し立てる狂犬組に落ち着くよう言い聞かせる。
「ゾムなら、ともさんとこやで」
「・・・えっ」
「とっ、ともさんに髪切ってもらうん・・・?」
「せやろな」
と、途端にいじけ出した2人にどうしたんや、とトントンが尋ねれば、彼らは揃いに揃ってこう口にした。
羨ましい、と。
決まりが悪そうに目を逸らしたシャオロンは、ぶつぶつと愚痴を言い始める。
「だってゾム、俺らとおっても頼ってくれへん」
・・・あぁ、なんだそんなことかよ。
思わず頬が緩みそうになるのを堪え、ふっと息を吐き出せば、2人は顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
「何鼻でわろとんねん!俺らガチやぞ!!」
「せやで!?ってかなんでゾムは外の人となら安心していられんや意味わからん!!」
「自分で考えてみぃよ」
「あっ待てトントン、分かっとんのか!」
「そろぼち夕飯やな〜(棒)」
「おいまちやがれぃ!お前がメインディッシュじゃぁあ!!」
がたっ、ばたん、どかん。
その日は珍しく内ゲバに参加するトントンが見られ、一般兵が大いにビビったそう。
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翌日。昨日よりも太陽が顔を出し、心地よい朝。
「じゃーねゾムさん!また遊ぼーねー!!」
「ほんまありがとうございます、また会ったらご馳走しますんで」
「今度ハ運営国ニモ来テネ」
「おん、らっだぁさんにも宜しく言っといてください」
二人に見送られながら汽車に乗り、窓からもう一度手を振って、向かうは自分の国である。
一日も経ってないけど、見慣れた景色へと移ろっていくのがやはり懐かしい。
うぅん、これは重症やなぁ。
脳裏に焼き付いたみんなの色を思い出して、やっぱりあそこが一番、と思いに耽った。
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基地に着いてみれば、玄関で大先生とイフリートが待ち構えていた。
あれなんか俺やらかしたっけ。
少し怖くてゆっくりと近づけば、「おかえりゾムさん」とだけ言って、そのまま総統室へと向かうように言われた。
にっこり、とまるで効果音が着きそうなほどに人当たりの良さそうな彼に「うわ流石クズ」とか思いながら、いつもなら騒がしいシッマとシャオロンの声が聞こえないことに疑問を持った。
いつもなら絶対しないノックをして、扉をゆっくり開ける。てかまず扉から入らん。
「失礼しまぁす・・・」
顔だけ覗かせるようにして向こうを伺うと、グルッペンと目が合った。
そのまま固まってしまったグルッペンとトントン。えっやばい、まじでなんかやらかしてた?
刹那。
「ぐっ、ふひひひひwwwな、なんやゾムwww」
「ビビッとんのwww失礼します、やってw」
「いやー録画するべきやったwww」
急にゲラゲラ笑い始めた二人に最初は驚き、そしてふつふつと怒りが湧いてくる。
喉掻っ切ったろか、と睨めば、グルッペンはにやける口元を抑えるようにして話し始めた。
「おかえり、ゾム。ちゃんと外出届を出して偉いな」
「ん、せやろ?前の正座三時間は流石に死を感じたからな」
急に褒め始めたグルッペンに違和感を感じつつ一応ドヤっておくと、今度はトントンにどつかれた。
「おい甘やかすなグルさん。ゾム、あんた行き先書かないで行ったやろ」
「・・・え?そんな欄あった?」
「お前の目は節穴か」
うせやん。
・・・いや、うせやん!これはやっべぇ、また大粛清だ。
「すみませんでしたぁ!以後気をつけます!」
こういう時は、すぐ謝る。少しの反省も添えて。そう教えてくれたのは粛清常連の大先生。
「まあ、前回の約束は守ったからな。これは次から気をつければええねん。
で、ゾム。今めちゃめちゃ不機嫌な犬どもがいるんだが、相手せえへんか?」
「・・・・・ん?」
犬ども、狂犬。それ即ち、内ゲバの相手ということか。
ガシッと肩を掴まれ後ろを向けば、まさにシッマとシャオロンがいた。
「よおゾム。帰ってくんの遅かったなぁ」
「俺のナイフ新調してん。味見してくれへん?」
ニタリ、と悪い顔で煽ってくる二人。
「覚悟はできとんのよな?」
「「わんっ!」」
二人まとめてぶっ潰してやるわ。
その日は久々に書記長公認の内ゲバで、一般兵の間で書記長の機嫌がいいと噂された。
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からり、と音を立てて転げ落ちたナイフを横目で確認し、ふぅと息を吐き出した。
「Q.E.D、しょーめーしゅーりょー!楽しかったわぁ!」
「あ゙ーくそ!負けた!でも楽しかった!」
「じゃあ負けたお前ら、罰ゲームな」
「うぇ!?やだだるいきいてないってぇ・・・」
地面に伏す黄色と水色。うん、いい気分。
「命令は、これから買い物に付き合うこと!」
「「・・・え?」」
「ん?もっとやなやつがいい?」
「い、いや・・・」
「じゃあはよ準備してきてや!」
驚いた顔でこちらを見る二人が面白くてもっと遊びたくなるのを我慢して、部屋に送り出す。
ぱちりと瞬きをした彼らは互いに見合って、それから笑って走って行った。
あは、こう見るとほんま犬やなぁ。
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ゾムに送り出されて部屋で準備をしながら、彼の言動に思いを馳せる。
彼は、ゾムは俺らのこと、どう思ってんねやろ。
仲間?友達?家族?
わからん。でも大切に思ってるのは分かる。
さっきのあれって、甘えてるんやない?
でもいざとなったら助けてくれるし、優しい一面もあって、ムカつく所もある。
なんだ、俺らの方がゾムのことわかってんじゃん。知ってんじゃん。そりゃそうだろうけど。
仲がいいといえど他国の人達だし。
鏡に映ったきゅう、と上がった口角はあんまり認めたくなくて、ニットを深く被って部屋を出た。
[newpage]
人の手綱を握るのってこんなに簡単やっけ?純粋すぎて逆に怖い。信頼してくれている、と思えば嬉しいけど。
そう思いながら俺を挟む二人を見る。
ここ数日よりずっとテンション高い二人は、「俺と居たい」って顔に書いてあるようなもん。
二人が、俺が他国の人と仲良くしてるのに嫉妬してるのは元々知ってたけど。
でも今回はすこぶる機嫌が悪くて。俺があかがみん国で髪を切ってもらって、しかも寝ちゃったって話した時のオーラは凄かった。
だからさ、握るなら今だ、って思ったんよね。
頼られたいし、たまには甘えたい。優しくしてもらって、恩返しがしたい。
誰でもあるような感情に不安を覚えるのはよくあることだった。
頼られて失敗したらどうする?
甘えて突き放されたらどうする?
その優しさが偽物だったらどうする?
優しくしても褒めてくれなかったらどうする?
溢れる疑心暗鬼に自分が嫌になって、永遠に自分を大切にしてくれる人の側に居たくなった。
口に出さずちょっとした行動に垣間見える俺への愛は、二人から一番感じやすい。
皆んなもきっと俺のことを大事に思ってくれていると思うけど、そんな確証はないから。
いつでも守るし、面白くて、それで優しい。そんな人物でいるから。
だから、ずっと、ずーっと俺の側に居てね、狂犬たち。
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