轟音とともに砂煙が巻き上がる。激闘の陰で、花咲萌のウサギ型ロボットは、異形の”ライオン”と対峙していた。
そのライオンは人を模しているようでいて、獣でもある。黄金の鬣を持ち、爛々と輝く赤い瞳。圧倒的な体格と、凶暴な気配。
萌は、ハンマーを構えていた。だが――
ズバァッッ!!
次の瞬間、血しぶきが舞った。
「――がっ……!!」
萌が宙を舞い、地面に叩きつけられる。カーディガンは裂け、血に染まる。ヘアピンも吹き飛び、白髪が荒々しく広がった。
だが、萌は笑っていた。
「……まだ……終わってないよぉ……」
ライオンは無言のまま、ゆっくりと彼女に近づく。
萌は震える腕でハンマーを支えながら、立ち上がろうとする。だが、体は言うことを聞かない。視界がぼやける。呼吸は浅い。
「……父さん……」 かすれた声で、萌はつぶやいた。
その瞬間、ライオンの爪が閃いた。
「やめろぉぉぉッ!!!」
――間一髪、黒い影が割り込む。吉田の傘がライオンの爪を受け止め、金属音が響く。
「よくやった、萌。あとは俺に任せろ。」 吉田の声は静かだったが、怒りが滲んでいた。
萌は、かすかに笑った。
「……吉田…………」
そして、彼女の意識は闇に沈んだ。
「……てめぇは絶対に許さねぇ。」 吉田はライオンを睨みつける。
「――行くぞ。」
戦場は、再び火を噴いた。