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「……おい、どうした?」
「…………」
「聞いてンのか」
──駄目だ、出てくるな。出てこないでくれ……
俺は目の前の男の呼びかけを無視して必死に感情を押し殺そうとする。
だってこの感情は存在してはいけない。本来なら生まれなかったはずなんだ。俺は男で、コイツも男。伝えたら気持ち悪がられて元々最悪だった関係が更に悪くなるのは目に見えてるし、コイツだってこんな無愛想で生意気な男の俺よりもエロ本に載ってるような女の方が好みだろう。
とっくに諦めたはずだった。それなのに、事ある毎に浅ましく浮き出てくるこの感情は、いつでも俺の邪魔をする。今だって、ようやく数週間ぶりに俺なりのやり方で接触できたというのに。この感情があるせいで、普段から滅多にしない会話も出来ない。嗚呼、鬱陶しい。
もう俺は諦めたんだ。俺の想いが届かずとも、不仲のままでいい、同じ空間にいられて、コイツの楽しそうな姿をできるだけ近い距離から見ていられるだけでいいんだ。例えその楽しそうな空間に俺がいなくとも。頭ではそう思っていても、俺の心の奥底から浮き出るこの気持ちは何よりも正直で。
こんな自分に嫌気がさす。諦めたと口では言うくせに、真の意味では諦めることが出来ていない。
早くこの邪魔なモノを殺さねば。
はやく
はやく、
早く!!
「……。」
「う、わっ、急に胸倉離すんじゃねェ危ねェだろクソが」
「──お前なんて、大嫌いだ……この野郎。」
「は??知ってるけど??」
「…………。」
「逃げやがった……なんなんだアイツ……」
「ッ……!!」
自室に入るや否や速攻ドアの鍵をかけ、その場に崩れ落ちた。
だって無理だった。どう足掻いても俺はこの感情を殺せない。
あんなことを言いたかったわけじゃない。嫌いなんかじゃない。
本当は、どうしようもなく、オマエの事が。
「好きだ、っ、好きなんだよ…………っ!!」
言った途端溢れ出てきた、目から滴り落ちるソレをどうすることも出来ず、ただ嗚咽した。