br.kn
左右なし
病気含みます
ハピエンではないです
※ご本人様方とは何の関係もありません
「…久しぶり」
br「うん。久しぶり」
3年ぶりに会った彼は、少し背が伸びていて大人っぽい雰囲気をもっていた。
ぶらぶらとある所を目指し夜の外を歩いていると、目的地に近づいたところで前に見覚えのある後ろ姿が見えて咄嗟にこえをかけた。
「何してたの?」
br「…んー、ちょっと散歩」
「…なんで?珍しいね」
br「…最近まで付き合ってた彼女がね、散歩好きだったから」
「そうなんだ」
…きっとそれは本当のことでもあるけれど嘘のことでもある。
彼は昔から嘘をつくのが上手い。
全て嘘ならきっとすぐわかるんだろうけれど、彼は本当のことも交えて嘘をつくから…
彼女は本当に居たんだろうけれど、きっと散歩が好きなわけではない。
…彼は昔から夜の外は苦手だと言っていたんだから。
ただ単に変わっただけなのかもしれない。その可能性もあるけれど、付き合いが長かった俺には分かる。
…彼はまだ、この暗い静かな夜の外が苦手。
br「…何で僕を振ったの…?」
小さく震えた声でそう呟く彼の目をじっと見てはいられなくて、目を逸らしながら口を開いた。
「…言ったでしょ。」
「もうbroooockを好きじゃなくなったからだよ」
br「…なんで嘘ばっかつくの…?」
「嘘なんて言ってないよ」
br「きんときの嘘なんて丸わかりだから。」
「…あの時何があったの…?」
…昔、彼と付き合っていたことがあった。
高校2年生の2学期から高校3年生の2学期。
ちょうど一年たった日に俺から彼を振った。
彼とは中学3年生の時に知り合い、そこからよく話すようになりいつの間にか彼に惹かれていた。
告白された時はもちろんすぐにおっけいした。
…本当に彼のことが大好きだったから。
彼のことが大好きだったからこそ、別れなければいけなかった。
…俺はある病気を患っていた。
高校3年生のちょうど彼と付き合って一年記念日の日。
学校で倒れてしまい、救急搬送された。
検査を受け不安の中待っていると、彼からLINEがきて少し安心したことを覚えている。
名前を呼ばれ、不安で震えた足でしっかりと地面を踏ん張り目の前にある部屋へと向かった。
部屋に入って言われた聞きなれない言葉。
俺は脳梗塞と診断された。
とはいっても軽いものというか、そこまでひどい状態ではなかったためすぐに完治することはできると言われた。
けれど、何かしらの後遺症が残る可能性が高いとも言われた。
例えば体の麻痺や感覚の障害、脳に障害が残ると…
脳の障害に記憶障害や社会的行動障害、失語症…様々なものがあった。
後遺症も軽いものではあるみたいだし、ならない可能性ももちろんあった。
でももし軽いものだったとしても、後遺症が残ってしまったら彼と今までのように過ごすことは困難になるだろう。
彼に辛い思いや不安な思いをさせたくない。
幸せに生きてほしい。そう思った。
だから病院を出た後すぐ彼に電話をして、思い出を…未練を断ち切るために告白してもらった大事な公園で待ち合わせをし、振った。
あれから3年が経ち、脳梗塞は完治したものの脳に少し後遺症が残った。
記憶障害。
これからのことが覚えづらいのかと思っていたけれど、そうではなかった。
いや、ほとんどがそうだったんだけれども、一部。昔の記憶が飛んだ。
ある人との記憶が断片的なものになっていたりなど様々だったけれど、彼のことだけは全て忘れることはなかった。
「…何もないって…」
br「あれから転校もして連絡も取ってくれなくなって…」
「…ごめんね。」
br「…久しぶりに会えたのがこんな場所なんて…」
「…ね…」
この場所は有名な自殺スポット。
長い長い階段を登り、ある横道を通ればここへ来れる。
この少し下は観光地ともなっている。綺麗な景色が広がっており夜景を見にここへ来る人もたくさんいる。
でもそれは夜の8時から10時までの話。
10時以降からここは立ち入り禁止となる。
そのため、自殺志願者の人達は10時以降に姿を現し横道を通り観光地の少し上のところから飛び降りる。
「…broooockは死んじゃダメだよ…」
彼に聞こえるかも分からないくらい小さく呟いた後、彼に近づき手を掴んだ。
目の前にある綺麗な景色を見ようともせず、振り返らずに来た道へと進み続けた。
彼は何も言わず、手の繋ぎ方を恋人繋ぎへと変えぎゅっと握りついてきてくれた。
その間、俺たちは何も話さなかった。
階段の下についた後、俺は彼の手を離し自分の家の方へ向かった。
彼は俺のその姿を見て、急いで紙に連絡先を書き俺の手に握らせた。
br「…まってるから…」
そういって反対の方にゆっくりと歩いていく後ろ姿を眺めた後、俺も歩き出した。
うちへ帰り、ずっと触っていなかったスマホを棚の奥の方から取り出し充電器をさしぼーっとそれを見つめていた。
高校生の頃に使っていたスマホ。
彼との思い出が沢山詰まっているこのスマホを捨てることはできず、ずっとしまっていた。
しばらく待っていると、暗くて静かな部屋に小さな音と明かりがついた。
パスコードは覚えている。彼との記念日。
スマホを開いて真っ先に押したのはアルバム。
4年前の写真は懐かしいものばかりで、そういえばこんなこともあったなとだんだん口角があがり、沢山の思い出が次々と蘇ってきた。
未練をなくそうと決めたけれど、写真と彼とのトークだけは消せなかった。
彼からもらった大切なものは全て捨てた。
目に見える限りは全て。
けれど、スマホだけはどうしても手放すことができずにずっと持っていた。
目から涙が出ていることも気にせず一年分の思い出をゆっくりと遡り、気づけば外が少し明るくなってきていた。
窓から見えるオレンジ色のあかりをじっと見つめながら、もう一度彼に会いたい。彼と話したい。
迷惑ばかりかけてしまうけれどそれでも…
そう強く、強く強く願いながら重たい瞼をおとした。
…紙を途中で落としたことなんか気づきもせずに。
活休されてしまいましたが、私がお話を書きたいと思う限り辞めるつもりはありません。
ですので、私の作品を読み続けてくださる方はこれからもよろしくお願いします🤝🏻🩷
最後まで見て下さりありがとうございました🙇🏻♀️
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